三人の2020年14月43日ー③
“「――高木君を勝つためだからさ!」”
“「……あ?」”
~高木灯台の視点~
このおばさん……一体何を企んでいるだろう。
一対二って、テニスではこういう形式の試合がない……いや、そもそも、どんなスポーツでも同じのはず。
よほどの実力差がなければ、人数不利になるのは、必ず人が多いほうが勝つ。戦術、戦略……また、立ち位置的の立ち回り。
一対二というのはそれほどのこと。
この一週間、そこそこ長く付き合っていたから、何となくわかる。
あの小賢しい笑顔……大体良からぬことを考えている表情だ。
大人らしくないいたずらやオヤジギャグ……正直、同クラスのクラスメイトたちかって思った。そのセンスはほぼ小学生と同レベルだった。
でも……変な大人だからだろう。不思議と、嫌いにはならない。
時々気遣いをしてくれて、たまに真面目なことも言う。
変な大人だけど、面白い大人だ。あと……いい大人だ。だから、俺は――
「……わかったよ。でも、こういう形式の試合がないから、まずルールを決めなきゃ。」――この要求を受け取った。
「おお!」おばさんが嬉しそうにペチと合掌した。
「これはつまり、試合のこと、受け取るということだね!」
「まあね。」
普通なら、断るだろう。
意味がないし、練習に何のためにもならない……けど、何を企んでいるのか少し気になる。
それに――
「主に君たちに二人がかかってきて、勝てると思われるのは少し腹が立つからな。」そう。腹が立つ。
俺はちゃんと自分の意地がある。自分が積み重ねてきた実力に多少の自信もある。だから、二人の初心者相手になめられたくない。
「お、おお……言うね。さすが“プライド君”。プライド高め!」
……この点で言えば、このおばさんにつけられたあだ名はあながち間違ってはいないな。
「……まあ。」
俺は何も言わないつもりだけど、代わりに真津姉が文句を言ってくれたようだ。
「あ、そういえば!ジョシちゃん!あだ名の件!」
……あだ名の件?
「え……?あ!」おばさんは一瞬真津姉が何を言っているのかわからないようだが、次の瞬間で思い出したかのように、俺に向かって頭を下げた。
「ごめんなさい。」
「え、なに?」
「変なあだ名をつけちゃって……」おばさん……いや。佐藤おばさんは深々と頭を下げてこう言った。
「あー……」彼女がこうしている間、俺は少し真津姉のほうに目を向いた。
真津姉はまるで佐藤おばさんの親でもあるかのように申し訳ない表情で俺を見た。
真津姉か……
「あーいいよ別に。元々気にしてないし、俺もたまにおばさんと呼ぶし――」
「いいや!それとこれは違う!」
「お、おお……」
「高木君は私のことをおばさんと呼び続けて!これは……心構えの問題です!」
「こころがまえ……?」ちょっと難しい言葉だな……
俺があまり意味がわからないと察していたようで、佐藤おばさんは簡単に説明してくれた。
「私はね……若くない時に自分が若くないと、素直に受け入れるような女性になりたいの。」
「……はぁ。」やはり何を言っているのかあまりわからない。
「要は……素直になりたいということ?」
「いいえ!違う!」
「じゃあ……」
「他人に対しての期待値を下げるということ。」
???
「だって、さらに年を取って、逆に若い感じに呼ばれたら、そのほうが嬉しくなるじゃん!」
「……そう?」俺は疑問に思いながら、真津姉のほうに見た。真津姉はただ苦笑いの表情で返した。
「ジョシちゃんはたまにこういう飛躍的な思考があるから……」
「いやいやいや真津芽ちゃん。これは絶対私だけじゃないって!」
「でも、現に困惑しているのは二人だよ。」
「くうぅ……多数派の奴らめ!少数の声を尊重しろ!」
「もーう、話がそれたよ!」
「はい、ごめんなさい。」
たまにこう思うが、この二人、仲が良いな……
羨ましい。
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これは三人が決めた、一対二の試合ルール:
1.試合は4ゲームマッチ(4-4タイブレーク)、試合は一セットだけする。
2.ハンデとして、ベースラインは高木灯台のほうがシングルスの方式で、佐藤ジョシと高木真津芽二人の方がダブルスの形式で試合する。
3.全力を尽くす。
今日は、悲しいです。
いい結果にならなかったです。
でもまあ......これで終わりじゃありません。
だから、頑張ります。
それに、頑張って進むしかありません。
自分のできることを考えなければなりません。
更新も、頑張ります。




