佐藤ジョシの日記帳㉗2020年14月32日
2020年、14月32日。
午後3時。
会社を退勤した佐藤ジョシは、通勤電車から降りて、足腰を伸ばした。電車の中に人が混んでいないが、むしろラッシュアワーを避けたため、かなりゆるい雰囲気だった。
そのためか、電車から降りた佐藤ジョシが足腰を伸ばした後、今でも眠そうな半開きの目であくびをしていた。
「はぁー」
やっと退勤の時間か……なぜか普段より疲れている気がする。ちゃんと休憩してなかったからかな?
「ふんーんん――ふん!」佐藤ジョシはもう一度足腰を伸ばしてから、心に決めた。
こういう時は――
駅 → 公園 (場面転換)
「テニスじゃ!」――佐藤ジョシは装備を揃えて、公園のど真ん中に立っている。
一人の人影も見えない公園にて、当然彼女は誰にも注目されておらず、テニスじゃ!と言っても、ただひたすら静寂の雰囲気が漂っている。
そして、この静寂な雰囲気を壊したかったかのように、佐藤ジョシはずっと「ふん、ふんふん♪ふんふん♪」と、大きめな声で鼻歌を歌っている。
悠々とテニスコートへ歩いている佐藤ジョシは、途中で足を止めた。
その理由は――パン、ド!
聞き覚えのある音。サーブの練習の音。
この音を聞いて、佐藤ジョシはすぐ疑問に思う。
あれ?彼は昨日で帰ったはずじゃ……佐藤ジョシは疑問に思いながら、とことことテニスコートに辿り着く。
パン、ド!
鮮明な音がその人の存在感を引き立ていて、彼女が思った通りの人物――高木灯台――がフェンスドアの向こうにいた。
特に見入っているわけではないが、佐藤ジョシはしばらくそのまま、高木灯台を見つめていた。
~佐藤ジョシの視点~
あれ?なんで高木君はまだいるの?帰るんじゃなかったっけ……私はしばらく高木君の練習を見続けて、一方、向こうは練習に夢中しすぎだからだろう。こちらに気づく気配を感じない。
彼の様子は、あるいはその目線や雰囲気が、ずっと見えない何かがと戦っているみたい。
普通に考えたら、これは俗に言う、イメトレのやつだろう。
ただし、彼の様子とその雰囲気、自分を追い詰めるようにも見える。
私は、このような子を少し前に見たことがある。
……翔太くんと同じだ。
だから正直、心配する気持ちもちゃんとある。ただ……知り合いでもない他人の心配なんて、かえって余計なお世話だってありえる。
だから、私はこの問題を、彼が親しいと思われる人間に任せたい。彼がいいと思う人間に言わせて、そして、何も悪くならないように願う。
パン、ド!
この練習の音とともに、さっき考えたことを全部吹き飛ばした。
そして、ふと思いついた。
そっか……考えてもしょうがない!直接聞いてみよう!
私はこのままフェンスドアを開けて、テニスコートに入った。
~第三者視点~
最初、佐藤ジョシはびっくりさせようと思って、フェンスドアを開けてから、コソ泥みたいに姿勢を低くした。
彼女はコソコソと高木灯台のところに近づこうと思っていたのだが、彼の動きを観察しながら、途中でコソコソするのをやめた。
彼女が気づかれたわけではない。むしろその逆で、高木灯台は練習に夢中しすぎて、普通に歩いても気づかれそうにないから、途中で普通に歩いていた。
そして、佐藤ジョシはすでに高木灯台の3メートルまで近づいて、まだ気づいていない。
視野の問題もあるが、それほど練習しているという証拠。
自分のことがまだ気づかれていないということがわかって、どう驚かせようと思ったのだが……
彼女は気づかれていない時点で、何をやってもありじゃないのかと。考えた末、普通に話しかけたという結論が出た。
「よっ!」
「……うん?おう、君か。おはようございます。」結局何も驚かず、ただ普通に挨拶を返した高木灯台である。
~佐藤ジョシの視点~
あれ?全然驚いてない……
なんで?
「……なんでしょんぼりしてんの?」
「うーん……いや……あ!」というか、おはようございます……いいこと思いついた!
「?」
「じゃあ、こんにちは。」私はもう一度挨拶した。
「……?」今彼の顔、まるで頭上にはてなのマークが出てきそう。
「“じゃあ”ってなに?」と高木君が言った。
私はその質問を無視して、「じゃあ、こんばんはって言って」と返した。
「あれ?俺の話聞いてる?」
お!いい反応しているんじゃん!
「聞いてるから聞いてるよ!ほら!早く、こんばんはって言って!」
「え……じゃ、こん、ばんは……?」
私は元気に「おはようございま――って、何乗りツッコミさせてんのよ!これじゃ、挨拶で一日経ったじゃん!」と、この爆発的な面白い話を披露した。
ちなみに、おはようございます → こんにちは → こんばんは → おはようございます とのことです。
つまり、時間の循環にかけて、挨拶する時間も一瞬で過ぎてしまうという二重の掛け合い。
どうよ!
この、爆発的なギャグ!
~第三者視点~
「……」
しかし、たったのは、たったの無言である。
あれ……滑っちゃった?
まるで滑り台みたいに下げた雰囲気、二人はこの下げてからの雰囲気を、棚上げにした。
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~佐藤ジョシの日記帳~
2020年、14月32日。
きょうのれんしゅうは、きびしかった。




