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佐藤ジョシの日記帳⑳2020年14月27日~2020年14月28日

 2020年、14月27日、夜。


「ふあああぁ……」私はあくびをして、足腰を伸ばす。


 はあぁー寝ちゃった。○o。.(-ω-)(寝起き状態)


 ふぅ……(目を閉じたまま、身体だけ起こす)


 うーん……(再び身体が横になって、眠りにつく)


 ……(佐藤ジョシの二度寝)



 ……



 ふあー!


 よく寝てた!


 廃人モードになると、よく寝ちゃうわー


 でも、これはつまり普段疲れていて、心に溜まっていたストレスがいっぱーいという証拠やな!


 まだ心の充電が満タンじゃないけど……――と、私がこう思っている時、うっすらとスマホの画面を見た。


 そして、気付いてしまった。



 うっ……なんか、嫌なものを見てたような――最初はあくまで一瞥の感じで見てたけど、今ちゃんとスマホの方向に向かうと、完全に見えた。



 スマホの画面が光っている。



 そして、私のスマホが設定上で、画面が光り出した時、だいたい電話がきたという状況だった。


 つまり――



 頼む!頼む!頼む!



 ――私は予想した通知に当たらないように強く祈りながら、スマホの着信履歴を探し出して、アレを見た。



 嘘……当たった。



 “上司 〇〇さん 3時間前”


 “不在着信 三件”



 えええぇー!


 うちの会社って、あんまりそういうのがないと思うんだけどー!


 一瞬世界が崩れていたような感覚だった。



 しかし、悪い感じがしても、文句を思っても、身体が勝手に着信を返事する私……


 もしかしたら、私は立派な社畜なのかもしれない。



 ……(しばらくして)



 ウェーンー!


 上司に連絡したら、明日臨時残業の出勤をしなければならない!



 残業代は出すけど……出すけども……!


 明日の休みが――うぇーん!




「あ、もーう……だるぅー」私はもう一度ベッドに寝込む。


 心の充電はまだ満たしていないのに、この件ですぐ消耗されちゃった。



 残業という制度を発明したやつはもーう……アレよ!豆腐の角にぶつけ!



 ふん!ふん!私は頭を枕にぶっこんで、足もパタパタとベッドに蹴っている。



 ……


 この日、佐藤ジョシの日記はたった一句の「今日は休み!」という話を消して、「今日は臨時残業の通知を知らされた」ということに書き替えた。


 後ろに大きな文字で「本当……最悪の日!!!」と書かれていた。



 2020年、14月28日


 今日は、休みの二日目――だった日。


 今日臨時残業に出なければいけないから、一日中の休みがなくなっちゃった。


 正直、他に色々文句が言いたいけれど、ずっと日記に書き込みすぎると、後々振り返ったら辛いとも思う。


 だから、今日は他のことで発散し――


 ……(佐藤ジョシ)


 発・散……して……いた――うん?


 私は日記に“発散していた”という言葉を書いて、なんか違和感を感じていた。


 まるで何かを忘れていたような感じだった。


 私は“発散”という言葉に見つめて、何とか連想ゲームのように思い出そうとしたが、思い出せなかった。



 あ!そうだ……前の日、前の日……



 私は日記のページをめくり、気になったことを見つけた。



 “2020年、14月18日、(前略) 筋肉痛の解消……などなどなど (後略)”


 解消……――私はこの言葉を見て、この日の内容を見て、忘れちゃったことを思い出した。


 全てを……思い出した!!!!



「ああああ―――!真津芽ちゃん!!!!」カラオケの約束――!!


 私は慌てて日記を書いている鉛筆を机に置いて、真津芽ちゃんの電話番号に繋がった。


 プツ、と繋がった瞬間、


 私はすぐさま「すみません!!!」と謝った。



 ……(日記に戻り)



 この日、私は前日の思い込みのピンチと違って、別の意味で悪いことをしちゃった感がすごかった。



 ****


 ~別視点~



 “「すみません、すみません、すみません!!本っっ当にすみません!!真津芽ちゃん!」”


 あたしは画面越しに向こうの声を聞いて、苦笑いをした。


 ……全然、変わってないなー


「いや、いいのよ。事情を説明してくれたからもう大丈夫。責めてないよ。」


 “「本っっ当にごめん!」”


「だからいいって。仕方ないことだしょう?」あ……


 “「……“だしょう”?」“


「噛んじゃっただけ……!」うう……恥ずかしい。


 “「はは!だと思った!」”


「じゃあ揚げ足取んないでよ。」


 “「えへへー」”照れ笑いの声。この癖も相変わらずだな……


 本当、何も変わってない。


「えへへって……」



 (2秒置き)



「でも……良かった。」


 “「うん?」”


「何かの事故じゃなくて。」


 “「え?あ!もしかして、私のこと心配している?」”


「そりゃあそうでしょう!友だちなんだから!」


 “「今回噛んでなかったか……」”


「……ジョシちゃん?」さすがにちょっと腹が立った。


 ”「ご……ごめん。」”


「もーう、あたしが真面目に言ってるのよ?」


 ”「うん。はい。」”彼女は素直に返事する。


「もしジョシちゃん何があったら、あたしはきっと……」


 あとの言葉は言わなかったが、彼女はわかっていると思う。


 でも――


 ”「……」”


 ――ちょっと反応が欲しい。



 ああ……ちょっと顔が熱い。



 …… 



 そして、沈黙が続いている。


 「……何か言ってよ。」


 ”「……」”


 あ、これ……


 ”「……」”



 昔なら、この沈黙は反省しているだろうと思っちゃうけど……長い付き合っていた今のあたしにはわかる。


 ”「……」”この沈黙はたぶん反省しているわけじゃない。



 これ、恐らく――


 “「……うぅうーーーーんもーう!何その可愛い考え方!真津芽ちゃん好き好き!だーい好き!」”



 ――やはり”暴走”しちゃいましたか。



 「いや、いま真剣な話を――」あたしは一応反論を試したものの――


 “「大好きぃーー!」”――意味がなかった。


 「ぅ……」


 ”「好き好き好き!私の大だいだい一番の推し!」”何なのよ……それ。


 「……」


 ”「好き!」”気まずいと嬉しい気持ち。


 今、とても複雑な気持ちだった。


 「……わかったわよ。」さっき言いたかったことも大好きという言葉に占領され、吹っ飛ばされそうだ。



 昔から、ジョシちゃんはこういう場合、すぐ”暴走状態”になっちゃう。


 癖なのか、それとも照れ隠しの一種の行動なのかわからないが……とにかく、こちらが真摯な感情で対面したら、彼女は必ず三倍以上の真摯な感情で返してくる。


 とてもぶっ飛んでいて、どんな感情にも誠実な対応をする人。


 

 ああ、顔が熱い……



 ”「私の推し!」”


「いや、そういう使え方が変って……」


 “「いいもん~!君だけ分かってくれればいいもん~!」”


「もーう……適当なんだから!」


 ”「ふふ♪」”


 「笑うんじゃないよ……」


 ”「でも、楽しいもんー」”


 「もーう……」


 ”「ふふふ♪」”


 全然笑う場合じゃないのに、でもなぜか、


 ”「ふふふふ♪」”彼女の笑い声が心にくすぐられているような感じで、


 「……プ」あたしも何となく自分の口角がつい吊り上げていると感じられ、


 ”「ふふふふ♪」”「はははは♪」笑いたくなってきた。


 あたしたちは、一緒に笑っていた。



 ……(もうしばらく雑談して)



 「ねえ、ジョシちゃん……」


 ”「うん?」”


 「前日、あなたが電話をかけてくれた時、あたし……本当にうれしかった。」


 ”「……そう?」”


 「うん。だってあの日、あたしはちょっと……悪いことにあっちゃって……」


 ”「……そうか。だからちょっと、元気がなかったんだ。」”


 「……うん。」だから、ありがとう……と、あたしは言いたいところだったが、ジョシちゃんが先に言った。


 ”「じゃあ、ありがどう!」”


 「……うん?それは……こっちのセリフだと思うけど。」


 ”「ううん!あの電話が助けになったんだね。」”


 「うん?うん。」


 ”「つまり、私がいいことをしたって、あなたが教えてくれた。そして、いいことを教えてもらった身として、私はありがとうって言いたいの!」”


 うん?うん……うーん?


 「……ちょっと、何言っているのかよくわからない。」わかるような、わからないような……少し話が見えない。


 でも、彼女の次の話でよくわかった。


 ”「だって、こういうのって、友だちでもなければ、大切な人でもなければ、あまり言いたくないよね?さらに言えば、人の好意を当たり前のように受けている人もいるし……

 でも、真津芽ちゃんはそうしなかった。ちゃんと私に教えてくれた。だから、教えてくれたことに、ありがとう、って。」”


 ……本当、なにも変わってないな。そういうところ。


 「……こちらこそ、ありがとう。」



 ……


 ”「いやあーでも良かったー!」”


 「うん?」


 ”「実はあの日、ちょっと迷惑じゃないかって思ったんだけどなー、でも迷惑でなければ良かった!むしろ結果がよくて、全然良し!」”


 ……こういう余計な一言で雰囲気を壊す力もそのまんまだったな。


 「……は、は、は。」


 ”「え何々?何笑ってるの?」”


 これは乾いた笑いなんだけど。



 ……(もうしばらくして)



「とにかく、ジョシちゃんが来られない理由はもうわかったから、大丈夫だよ。」


 “――”(何が言っている表現)


「うん……うん……」


 “――”


「大丈夫!あたしはヒトカラいける派だから!」


 “――”


「うん……うん……じゃあ、今来る?」


 “――”


「ほら、流石に疲れているだろう?」


 “――”


「うん。しっかり休憩して。約束は来週に延期。」


 “――”


「うん。じゃあ、また来週。」


 そして、電話が切れて、スマホの画面に会話時間が映された。


 30:48


 30分も話しちゃった……


 前日もこんな感じだったなー


 あたしは少し暗闇の室内に座って、カラオケボックスのモニターを見つめている。


 結局、ジョシちゃんに会えなかった。


 ちょっと感慨深い気持ち。


 また、懐かしむ気持ち。


 でも、会いたい気持ち。


 また来週――あたしはテニスのラケットバッグを触って、微笑む。


 前日にテニスをやってると聞いて、持って来ちゃったけど……使わなかったな。

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