佐藤ジョシの日記帳⑭2020年14月13日ー⑤
私の勝算……
「ねえ、それどういう――」
「40-0!」翔太くんは大声で点数を呼んだ後、ボールを拾いに行った。
「ねえってば!」
「……」無言を貫く。
だんだんわかってきたよ。
この反応、答えたくないという意味だな!
うーん、しょうがない。自分で考えてみるか。
でも、自分で考えると言っても、全然心当たりがないんだけど……さっきみたいに動けばいいのかな?
私は考えながら、翔太くんと同じように何個のボールを集めて、二個くらいポケットの中にしまっておく。
そして、私はボールをしまった後、元の場所から右のエリアに移動した。
対角線。これは翔太くんと対角線にある位置。私は翔太くんの方向へ注目すると、彼はすでに準備できたっぽくて、相反するエリアに待っていた。
私が位置についた途端、翔太くんはサーブする前のルーティンに入った。
恐らく今話しかけても、何も答えてくれないだろう。そのルーティンに入ると、集中力が半端ないから。
ド、ド、ド。ボールを下に突いた音。
うーん……この状態を“試合モード”と名付けようか!
スッ。
「あ」
余計なことを考えたせいで、翔太くんはもうトスしちゃった。
今回全然観察する余裕がない!考える余裕もない。
これはもーう、推測で当たるしかない!
ええい!ままよ!
「右!」
ドン!
……左だった。
あれーおかしいな。
こっちがかなり中央ラインの左のところに寄ると、翔太くんは大体右のほうへサーブするのに、たまに違うんだよなー
(図1)立ってる位置はココ
(図2)大抵の場合はこう。
(図3)だがたまにはこう。
0-2.
結局、このゲームも負けちゃった。
「……ゲーム。僕の2-0(ツーラブ)」
お!またこの点数になった!なら、あの爆発的なギャグの出番だな!
「あらーそれ告白?私への告白?」
「……そのダジャレはもうやめてって、2-0になると、すぐそう言う。」
「あはは!ごめんごめん!初めての反応が面白くて、つい!」
「ついって……嫌われるよ?」
「あー!嫌ならもう言わないよ!」
「ずっとそう言ってたんだけど……」
「ごめんって。」
「はぁ……いいよ。それで、休憩し終わったら、試合再開しよう。」
「はーい!」
結局、休憩し終わっても、私のサービス局・第三ゲーム目はあっさりと負けてしまった。
点数状況は、すぐ0-3になった。
~90秒の休憩時間~
第三ゲーム終了すると、間に90秒の休憩時間が挟む。
私はこの休憩時間に、答えてくれないだろうと思うが、それでも試しに翔太くんに気になることを聞いてみた。
「ねえ。第二ゲーム目の時、翔太くんは勝算のことについて、なんか言ってたよね?」
「確かに言ってたけど……」翔太くんは水を飲み始めて、話が途絶えた。
「じゃあ、それはどういう意味?」
「フ……ごめん。言わないよ。」
「やっぱりか。」
「うん。だって、元々自分で考えてっていう意味で言ってたから。」
真面目だなー
「それに、こうすれば試合に対しての意識も変わると思うし……」
でも、これがいい!
「じゃあ、せめて、ヒントください!」土下座でもしようと思ったんだけど、さすがにそれは引くと思うから、お辞儀に変わった。
「えー……」
あ、これでも引くの?私はこっそり顔を見上げると、彼は引くというより、面倒くさい感情のほうが強かった。
引いてないなら、私は再び顔を俯いて、このままお辞儀をし続けた。
「僕、言語化するのがあんまり得意ではないから……」
「大丈夫!大事なのは何が重要!動きで示せばいいし!」
「……じゃあ。」鈴木翔太は少し考えて、私に大事な動きを見せてくれた。
だが……
鈴木翔太はフォームを構えて、次は右後ろにターンする。足と腕も連帯感のあるように後ろに伸ばし、ラケットを綺麗な弧に描いた――普通のフォアハンド。
もちろん綺麗な動きだ。だけど、この動きが大事だって言ったら……はっ!もしかして、やはり私に基礎の部分が足りないとか――
「別のことを考えないで。ちゃんとこの動きをやれば、勝算はある。」
「え?基礎とか、そういう意味ではなく――」
「それを言うなら、佐藤姉ちゃんは全部ダメだから。」
「ぐ……」わ、わかってるけど……ちょっと心が痛むな。
「で、でも!勝てるから!このルールなら。」
「そっかー勝てるのか。」
「じゃあ、そろそろ――」
「ええーでも♡もう少しヒントをくれても――」「佐藤姉ちゃん!」
「はい!」思わず気をつけ!みたいな感じで立っていた。
「……あまり調子に乗りすぎると、怒るよ?」全然顔をこっちに向いてないのに、あの氷点下に冷え切った声が、全てを示した。
「はい!すみません!」
やっちゃった(´・ω・)
~90秒の休憩時間終わり~
コートチェンジ。
私たちはお互い対面の位置について、第四ゲーム目が始まる。
「……そうだ。佐藤姉ちゃん。」彼は向こうから大声で話しかけた。
「どうした?」
「一つ、佐藤姉ちゃんはやる気アップのことを言ってあげる!」
「え?!何々?!何がくれるの?!」もしかして、“何でもしてくれる”という――
「あははぁ、(何もあげないけど)……
この試合、残りの3ゲーム数にあなたが一回も勝たないと、終了するよ?」
「え?」……この試合、3セットじゃなかったっけ?じゃあ、3セットをしないと――この時、私はやっと今まで気付かなった一つの盲点に気付いた。
「ああ――!」
「3セット試合の意味は、2本先取。佐藤姉ちゃんはこのまま勝たないと、本当に終わるよ?」
「うぐ……」やっちゃった――!!!
……なんーちゃって、へへ。
なんーのための“クソガキルール”を使っているんだ!このまま駄々をこねて、続け――
「あと、時間ももうすぐ夕方だから、これは本当に最後の1試合だからね?」
――いつの間に太陽が……
いや、わかってた。午前10時くらいでやって、毎回休憩時間も含めて1時間に換算すれば、ほぼ6時間間近、今はもう午後4時……なんなら休憩の時、携帯を見てたし!
つまり――
「つまり、佐藤姉ちゃん。残りの3ゲーム数に一回でも勝たないと、今日の試合、僕の全勝だよ。」
鈴木翔太のこの話、ある意味、佐藤ジョシのやる気を出してきた。ただしやる気が出したとその同時に――
……クー!どうすれば勝つのよ!
パン!
ドン!
0-4
「はぁ!」
「やぁ!」
0-5
――試合の進展も早くなってきた。
試合2セット目・ゲーム:0-5
ゲーム数は、第6ゲーム目。
この日は次回で終わりまーす!




