佐藤ジョシの日記帳⑬2020年14月13日ー④
試合2セット目。ゲーム数0-1。
そして、ゲームポイントの状況は0-15。完全にボロ負けの負け。
ちなみに、テニスではポイントの0(ゼロ)は“ラブ”と呼ぶらしい。理由は……
「行くよ!」翔太くんは言った後、ボールを下にラケットで何回か突いた後、こちらに視線を向けた。
あー今はそれを考える場合じゃないな。
「はいよ!」さあ、来い――と、私はまだ返事が完全に返してないけど、翔太くんは先に動き始めた。
彼は上にトスして――
パン!
「ひぃ!」――やっぱり早いよ!
一応試しに振ってはみたものの、見事にスカッと空ぶってしまった。
いや、そもそもタイミングが何秒遅れたし……
0-30
「30-0。」
うぅ……翔太くんの意地悪!
普通、ここまでやったら、同情とか面倒くさがりとかで手加減するだろう!なのに、この無慈悲な点数状況!
「ひどい!」
「……」何も喋らない。真面目な顔で見てる。
もしかしてこの子……人間の感情がないのか?!実は試合のことになると、人が変わる的な――いや、ないな。
今までそんなこともなかったのに、今になってこういう属性が増えたら、おばさんはびっくりするよ。
でも、真面目な顔をして……何を考えているだろう?
そして、私は余計なことを考えている間、翔太くんはもう準備できたっぽい。
ああーこうなったらもうアレだ!
……なりふり構わずやるしかない!
さあ、今度こそ本当に来い!
私の覚悟を汲み取ってくれたのか、今回翔太くんは私を見て、言葉を発せずにボールを下に突いた。
今日一日中試合してきたから、何となくわかる。
その動きはサーブ前のルーティンみたいなもの。つまり、彼は言葉をかけずにサーブするつもりだ。
やだー♡これじゃあまるで心が通じ合っているじゃなーい~!
痛い冗談はさておき、私は疑問に思いつつ、翔太くんの動きを観察していた。
さっき何も言わなかったからだろうか、今、少しヒリヒリとした試合の雰囲気を感じた。
そして、動きもよく見えた。
彼はボールを下に突いた後、何を確認してるみたいに――あるいは場所のチェックかもしれない――私の方に視線を投げてくる。その後、大体2~3秒の時間を置き、次にボールを上にトスした。
最後はラケットをトロフィーのように持って、途中まで下がっているボールを――
パン――!
あ……なぜだろう。しっかり一連の動きを見たからかな?
なんか今回……サーブへの反応が、少し余裕ある?
私は、試しにラケットを振ってみた――
パコッ
――が……全然打ち返せなかった。
ボールが真上に何尺も飛んでいて、全然前に飛ぶ様子がない。
はは!おかしいな。ラケットを前に振っているのに、この飛び方はないだろう~!
ド。ボールが自陣のエリアに落ちて、後ろのフェンスに向かって、ブーォンとぶつかった。
これで、0-40か……
そろそろボールがなくなったから、ボールを拾いに行こうと思ったら、一つ気付いた。
ダ、ダ、ダ。自分の足音だけ聞こえる。
……あれ?私ポイントの計算が間違っちゃったのかな?もう4回負けたんだ――と、と思うと
「それだよ!佐藤姉ちゃん!」翔太くんは大声で叫び出す。
「……はい?」
「佐藤姉ちゃんの勝算はそれだよ!」
?
??
どういうこと???




