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階段
急いで階段を駆け上がると、運動不足に比例して心臓が跳ね上がった。
凄い速さで鼓動を刻む心臓に合わせて、身体も熱を持っていく。
深く息を吸い、膝に手をあてて俯いて呼吸を整える。
少し落ち着いてきて、ふと、まだまだ長い道のりを見つめた。
屈んでいるからか、いつもより低い視点の階段。
それは見慣れている筈なのに、新鮮に感じた。
真っ直ぐ私の目を射抜く、四角に切り取られた光は眩しい。
でも、なんとなく、励まされたような・・気がした。
包み込むような、優しい光。
少し冷めた身体に、ふっと息を吐き出す。
手を膝から離し、身体を真っ直ぐにして、階段を見つめる。
それは。いつもの風景。
しかし、今までとは、違って見えた。
――よし、行こう
私は微笑み、少しだけ愛着の湧いた階段を踏みしめて、再び上を目指して駆け上がり始めた。