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白昼夢
まるで夢をみていた。まるっきり、僕は夢に浸かっていた。
それほど心地のいいことはなくて、ゆらゆらちゃぷちゃぷと浸かって浸って僕の全てに夢が滲み、僕という存在が緩められていく。
どこかうつろではっきりとせず、判然としなくなる僕の意識。
「君は、それでいいの」
溶けかけた指でさし、問う。問われた少女は僕を見て、涙を頬の上にころころと滑らせながら笑った。
悲しそうに、ではない。
小さく口をすぼませる、少し横に開く、また少し上下が開く、真横に広がり、もう一度真横、最期にまた小さく口がすぼんだ。
何を言っているのかは、水中かのようにぼやぼやとしてわからない。
それでも、なんとなくわかった。
「本当に?」
首をかしげると、縦に頷き返された。彼女はこれでいいらしい。
あんなに泣いてはいるけれど、この結果に後悔はないようだ。
ぱたぱたと彼女の涙が足元を濡らしていくのをみて、まるで雨みたいだと思った。
もしかしたら雨は神様がないているのかもしれない。