フランク王子の逃走
翌日は早朝から、司祭以外のアジレランド王国に来た全員が、フランク王子が滞在している宿に向かった。
アジレランド王国の騎士と兵士が隠れて監視しており、宿にいるのを確認済である。
アジレランド王国の騎士とハサン王太子執務室の主席執務官アルドラ・エグス・エルドラが、同行している。
「殿下は会議で時間を作れませんので、案内を申しつかりましたアルドラ・エグス・エルドラと申します」
ハサンがブルーゲルス王国にいる間、王太子執務室を預かっていた人物であり、ハサンが王となった時に片翼を担う人間でもある。
「これは美しいご令嬢だ。ブルーゲルス王国王太子殿下が羨ましい」
大袈裟にシェルとアイリスを誉めるのは、いかにも軽い男というイメージだ。
シェルとアイリスの手を取ろうとして、ギルモンドとグイントが間に立ちはだかる。
「若いですね。羨ましいかぎりです」
ハハハ、と笑ってアルドラは伸ばした手をひっこめた。
軽そうに見えても油断できない人物だと、ギルモンドとグイントは考えている。
侵略戦争を繰り返す国で、戦場を駆け巡る王太子の片腕が見掛けのままであるはずがない。
「ここがその宿です、彼らは2階の端の部屋にいます」
コレだけの人数でくれば、フランクも気がついたようで、窓際に張り付いて
様子を伺っている。
ブルーゲルス王国から逃げてきた、自分はともかく、エシェル・ユーラニアにはユーラニア伯爵家のっとり、邪教の信者という罪状がある。
「エシェル、こっちに来て」
この宿を常駐に選んだのは、逃走経路を確保できるからだ。
エシェルの手を取り、向かいの部屋に駆け込む。
その部屋はリネン室で、洗濯物を1階の洗濯場につながるダストシュートがある。大きなシーツが滑り落ちるソレは、人間も通れるほどの大きさがある。
フランクが躊躇いなく、その穴に身を投じると、エシェルも後に続く。
「エシェル、こっちだ」
自分に続いて落ちて来たエシェルを受けとめ、フランクは洗濯場の扉を開ける。
洗濯を干すのは、日の当たる裏庭である。
顔が隠れるくらいの高さまで洗濯物を持ち、アジレランドの兵士が隠れている前を通り過ぎる。
下働きの人間のようして、違和感を感じさせてはダメだ。
厩に繋がれている一頭の馬に飛び乗ると、一気に駆け出した。
それは、ギルモンド達が宿に押し入るのと同時だった。
先頭を走る騎士が叫ぶ。
「逃げられた!」
アブドラは、裏をかかれたことに、怒りを覚えていた。
隣国の甘ったれ王子だと、見下していた自分の計画が、ズサンだったと思い知った。
「おえ!」
アブドラが叫ぶと、騎士達が宿から飛び出し、フランク達の乗った馬の後を追う。
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