アジレランド王国
今日は更新が、遅くなって申し訳ありませんでした。
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国境の砦には通達が届いていたようで、アジレランド王国一行とシェル、アイリスは馬車の中で少し待機しただけで通過することが出来た。
砦内部を、アジレランド王国側に見せない配慮があったのかもしれない。
アジレランド国内に入ると先頭がアジレランドの馬車に変わり、ブルーゲルス王国の騎士達に緊張が高まった。
国境近くの街でアジレランドの出迎えの小隊があった。小隊はアジレランドの精鋭とわかる気迫があり、正装で出迎えることでブルーゲルス王国に敬意を払う意志表示を見せていた。
ハサンはここで無紋の馬車から王家の紋章の入った馬車に乗り換え、王太子の一行であると表示する。
ハサンは隊長にギルモンドを紹介すると、すぐに王都に向かって出発した。シェルの乗る馬車の警備が厳重にされたのは、ハサンの指示だろう。
ハサンにとって、シェルはギルモンド以上に重要人物になっていた。
シェルとアイリスは、馬車の窓から見る異国の風景に魅入っていた。アジレランドに入ってから野営をすることはなく、貴族の館に泊まって王都に向かった。
アジレランドの王都は活気にあふれ多くの人でにぎわい、道から見える脇道には露店が並んでいるのが見えた。
フランク王子の引き取りということもあり、今回はブルーゲルス王国としての公式な訪問ではないので、街の人々には、この物々しい馬車の一行が誰なのかは知らされていない。
ただ、ハサンが王家の紋章の入った馬車に乗っているので、王太子が視察か外遊から戻ったのだろう、と推測していた。
それは、また戦争が始まるのかもしれない、という考えと直結していたので、馬車が通り過ぎるのを遠巻きに見ていた。
王宮に着くと、すぐにアジレランド国王との謁見が始まった。
ギルモンドがシェルをエスコートして前に進むと、後ろにはグイントと同行の司祭、騎士達と侍女のアイリスが続く。
「この度は、お心づかいに感謝し、友国の証としていくばくかの品をお納めいただきたい」
ギルモンドがフランクの情報の礼を、言葉を隠して伝える。
王の横に立つハサンが王に耳打ちすると、王は鷹揚に頷いた。
「長旅に疲れたであろう。今夜はゆっくりと休まれるがいい」
公式な訪問ではないため、王の横に王妃の姿はなく重臣が控えるだけだ。
だが、アジレランド王国が急激に領土を広げて大国になったのは、この王が侵略戦争を繰り返してきた結果だ。
フランク王子のことが戦争の火種になってないのは、アジレランド王国が聖水の必要性が大きいからだ。
まずは、国内の危険分子の排除が優先なのだろう。
明日、フランク達が潜伏している地域に案内すると言って、短い会見は終わった。
フランクは捕らえられているのではなく、街で監視されているらしい。
アジレランド側はハサンの報告を主とした会議に入る為に、夕食会はなく、部屋に食事を運ばれると知らせを受けている。
シェルとアイリスが同室であり、そこにはギルモンドとグイントの食事も運ばれている。
「フランク王子とエシェル・ユーラニアは、ブルーゲルスの諜報員として入国した、と罪を作ることも出来たが、アジレランド王国はそれをせず、聖水の取引材料にした。
我が国に侵攻して聖水を奪い取るより、戦争回避を選んだということです」
食事をしながら、グイントが説明をする。
「街道沿いの街の様子を見ても、活気にあふれ、多民族が流入している。戦争で得た地域の統治の安定は重要事項ですからね。
王都に貧困層の民族の流入もあるのでしょう。敗戦地域からの流入は危険因子が多く、今は、我が国との戦争は避けたいということでしょうか」
この王宮にも、邪教で精神操作された人間が入り込んでいるかもしれない。グイントの言う危険因子の中にはそういうことも含まれている、とシェルもアイリスも気がついていた。