表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と誓いの月夜  作者: violet
78/98

二人の尋問

マルクが騎士に案内されて尋問室に着いた時は、レオルドは全て証言した後だった。

「あいつに(だま)されたんだ・・」

椅子に座って背中を丸め、ブツブツ言っているのはレオルドである。

(むち)打たれた背中に血が(にじ)んでいるが、拷問という程の事はされていない。

あっけなく、全て白状したらしい。


根性のない男だ。

それが、マルクのレオルドに対する評価だ。

こんな男が、ユーラニア伯爵家に婿として入り込んでいたのか。

こんな男が、ロクサーヌとエシェルを殺したのか。

こんな男のせいで、9年間もシェルは苦しんだのか。


聖獣の加護のあるユーラニア伯爵家では、領地経営も投資も失敗することはない。それを自分の力と過信して、愛人を囲い、正妻が邪魔になって殺した。

愛人は自分に気持ちいい言葉を言うだろう、領地から出て来ない病弱な妻は面白くなかったろう。

だからこそ、マルクが仕掛けた罠の投資に、損失を取り戻せると簡単に乗ってきたのだろう。


マルクが横を見ると、ギルモンドも呆れている。

ギルモンドも9年間苦しんだのだ。こんな終わりになるとは、思ってもいなかった。

ギルモンドの側近のグイントがいないことから、グイントはユーラニア伯爵夫人の取り調べに行っているらしい。


「ランボルグ侯爵、他の部屋でグイントが尋問に付き添っている。そちらに行かないか?」

ギルモンドが立ちあがると、マルクも立ち上がる。ギルモンドは騎士達に目配せをして、後のことを任せる。


薄暗い軍部の廊下を、騎士に警護されてギルモンドとマルクが歩く。

女性騎士がいる部屋で、夫人の尋問が行われていた。

扉を少し開けて、密室にならないようにして尋問をするので、廊下に部屋の灯りがもれている。

扉に手をかける前に、扉が開かれた。

ギルモンドは当然のように、それを受け中に入る。グイントが椅子をひくと、ギルモンドが座る。

王太子の姿そのものである。その顔は冷徹で、感情を消した表情である。

きっと、ギルモンドはこの顔でエシェル・ユーラニアに接していたのだろう、とマルクに思わせた。


グイントは、ギルモンドとマルクに、夫人は黙秘を通して事情聴取は進んでいないと告げる。

夫人の様子は、冷静で貴婦人らしく姿勢を正していた。

元は平民だというが、レオルドよりずっと貴族らしい。

だが、長期戦になると、誰もが思っていた。

邪教の信徒である夫人からは、ロクサーヌとエシェル殺害以外にも、聞く必要がある。多少の拷問も必要になるだろうが、処刑は公開でなければならない。

シェルの名前を取り戻すために。


長い夜が、始まる。

他の信徒達への尋問も他の部屋で行われ、それぞれの情報がギルモンドの元に集まってくる。


読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ