母との再会
「そうか、アイリスはシェイドラ公爵邸で治療をうけているのだな」
ランボルグ侯爵は、応接室でギルモンド王太子を迎えた。
ギルモンドの隣にはシェルが座っている。
アイリスとシェルから話を聞いているものの、現実に二人が寄り添う姿を見るのは初めてのマルクである。
領地から荷物を運んで主治医が到着しているが、シェイドラ公爵が選んだ医師ならば優秀であろう。
「アイリスは動かさない方がよかろう。シェイドラ公爵家でお世話になるので、着替えなどを届けさせよう」
マルクは執事に、数人の使用人で準備するように指示をだす。
「エシェル、殿下にもお見せして大丈夫かい?」
マルクは、シェルに確認を取ってから、ギルモンドと向き合う。
「殿下、本日、ロクサーヌ夫人の遺体が領地より届きました」
思いもしなかった言葉に、シェルをみても落ち着いている。
「ご案内します」
マルクがギルモンドを案内した部屋には、ルミナスとダミーがいた。
「姉上」
シェルをみつけて駆け寄ってくるダミーに、シェルの心が温かくなる。
ルミナスは、ギルモンドの存在に礼を取ろうとするけれど、ギルモンドが手でそれを制する。
部屋の真ん中に置かれて棺は、蓋が空けられていて、花で飾られている。
ギルモンドは覗き込んで、記憶が蘇る。儀式であったロクサーヌは、たしかこんな顔だった。
昔のままのロクサーヌが、そこに横たわってきた。
「ギルモンド殿下、私の母のロクサーヌです。母は、9年前の姿のままなんてす。朽ちることなく、今にも動きそうなほどです」
それは、もう人間とは言えない。シェルは、その血を引くのだ。
ギルモンドは棺の横に立ち、胸に片手を当てた。
「お久しぶりです。ギルモンド・ブルーゲルスです。お守りすることができず、申し訳ありませんでした。
このような時にですが、ご報告させていただきます。僕とご令嬢エシェルは、交際をさせていただいてます。これから・・」
ギルモンドの言葉は、シェルがギルモンドの口を手で押さえたせいで途切れてしまう。
「ちょっと、何を言うのよ!」
真っ赤になったシェルが可愛くって、ギルモンドは口をふさがれたままでいるが、シェルはルミナスとダミーに見られているので、慌ててその手を放す。
「何って、こんな機会はめったにないから報告を。ああ、そうだった、ランボルグ侯爵夫妻にも報告せねばならないね」
平然とギルモンドが言うから、シェルは恥ずかしさが増す。
王太子というのは、恥ずかしさとか無縁なのかもしれない、とさえ思った。
それでも、親に報告してくれるのは、それだけ真剣に想ってくれているからだ、と少しだけ嬉しく思う。
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