表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と誓いの月夜  作者: violet
69/98

エシェルとフランク

学院の一角にエシェルは来ていた。ここは一人になりたい時に来る、校庭の片隅である。取り巻き達を置いて、一人で来たはずなのに、フランクが追ってきたようだ。

「なぜ、泣いているんだ?」

フランクはエシェルが木の陰で泣いているのを見て、驚いていた。


エシェルは何も言わずに顔を隠すように、下を向く。

「フランク殿下には、関係のないことです。どうか、ほっておいてください」


フランクはエシェルが持っているだろう薬を狙ってのことだったが、エシェルが泣いていて興が覚めた。

ドスン、とエシェルの足元に座り込んだフランクは、エシェルと目を合わせない。

「お前って、今まで兄上が無関心にしていても、平気なように見えてた」


泣いているのを見られたからか、エシェルが反論する。

「平気なはずない。すごく、辛いわ。でも、お父様もお母様も期待してるから、嫌だなんて言えない。

どうして、王太子殿下は私を邪険に扱うの? なら、どうして婚約を解消しないの?」

いつも、大人しく笑っているだけと思っていたエシェルが反論するから、フランクは驚きを隠せない。

だからといって、父から聞いた内容を話すほどの(おろか)か者ではない。


「そんなに、兄上がいいわけ?」

フランクは、エシェルがギルモンドを好いているから、あんな対応をされても我慢しているのだと思っている。


「素晴らしい王太子殿下だわ。私以外には!

声もかけてもらえない、他の令嬢への好意を隠さない人を、好きでいられる?

でも、私は王太子妃になるしかないの。その為に・・」

子供を(あや)めた、とは口に出せない。

いつか振り向いてくれる、と思っていたこともあった。振り向いてもらえないなら、振り向かせるしかない。

あんな冷たい人は嫌い、なのに好きだった思いが残っている。


「それが、お前の本音?」

優しい声が聞こえるから、エシャルはフランクを見る。

フランクはエシェルを見ないで、手元に視線をおいたまま照れくさそうにしている。


王太子の婚約者として、エシェルとフランクには交流があったが、それは表面的なものでしかなかった。

「王妃陛下のお茶会や、季節の行事でお会いしたたけど、フランク殿下がこんな人なんて知らなかったわ」

泣き止んだエシェルが、クスリと笑う。


「なんだ、笑えるじゃないか。いつも、笑顔の仮面つけて大人しくしてるから、暗い奴だと思ってた」

フランクは王族として教育を受けているが、泣いている女の子を放置することはできない。

以前から、兄が婚約者に対する態度に不快感を持っていたから、事情を聞いても同感することはなかった。

それが、父から言われた要注意人物だとしても、エシェルは王太子の婚約者として懸命に努力していたことを知っているのだ



フランクがエシェルと接触したことは、すぐにギルモンドに報告された。

フランクがシェルに興味を持っているのを苦慮していたが、エシェルに興味を持つのは、兄弟対決にちかい。

母親は処断の対象だが、弟王子もとなると、王家の心象は悪くなるに違いない、とギルモンドは思う。


読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ