王家の暗部
王とシェイドラ公爵の登場で、騎士達が敬礼をする。
「楽にしてくれ。状況はどうだ?」
王の問いに答えたのは、ギルモンドである。
ギルモンドとグイントは、男達が連行された時からここに来ていた。
軍本部の地下にある拷問所である。
「やはり精神コントロールを受けているようです。情報を得る事は、難しいようです」
「こちらは、アリア・ハインツシュレフ男爵令嬢を襲おうとした男達です。
教会でユーラニア夫人と接触後、令嬢を襲おうとして、アイリス・ランボルグに止められています。目撃者の証言では、『手を潰してしまえ』と話をしていたようです。
そしてこちらは、レッグオン伯爵家に火を点けようとした男達です。こちもユーラニア伯爵夫人と接触しており、騎士が尾行していて犯行を留めることができました」
ギルモンドが反対側に転がっている男達を指さす。
腕も足もあらぬ方向に曲がっており、息をしているかも怪しい状態である。厳しい拷問にも情報を漏らさなかったのは、精神関与されているからだろう。
「アリア・ハインツシュレフ男爵令嬢、ベルビディ・レッグオン伯爵令嬢、共に今回の学院の音楽祭の優勝候補と言われている令嬢です」
邪魔だから排除する。暴力という短絡な手段で目的を果たそうとするのが邪教、社会のルールが通用しない。
「社会を混乱させることを躊躇しない、というのは脅威の存在だ。よくぞ未然に防いでくれた」
生け贄を捧げる教義は、信徒が少数であっても断罪せねばならない。
王は騎士達を労うと、シェイドラ公爵と護衛に守られて、拷問室を出ていく。
それを見送って、ギルモンドは椅子に座る。
「ギルモンド」
グイントがギルモンドの後に立つ。
王とシェイドラ公爵、ギルモンドとグイント。親子2代にわたり、王家とシェイドラ公爵家に絆ができている。
騎士達から報告を受けながら、新しい指示を出す。
軍を使って、邪教の包囲網が作られている。
音楽祭まで、残り数日。
シェルとランボルグ侯爵家が何をするつもりかは知らないが、王家は邪教の存在を隠し通して抹消せねばならない。
王は、邪教と北方諸国との関係を調べているのだろう。
願いを叶える、そのためには生け贄を捧げることも厭わない人間は少なくないだろう。
だからこそ、邪教は闇に葬らねばならない。
関係した人間は、処断する。
ユーラニア伯爵と夫人のおぞましい野望で殺されたロクサーヌとシェル。
シェルは生き返ったが、ロクサーヌ夫人は戻ってこない。
王は、聖獣の加護のあるユーラニア伯爵家を守りたかった。
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