表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と誓いの月夜  作者: violet
62/98

レオルド・ユーラニアの現状

ユーラニア伯爵は、投資の失敗で領地の一部を失い、健康に影響が出ていた。

夜会にも出席せずに、投資先を物色していた。なんとか挽回をしないと貴族としての矜持でさえ維持できなくなる。


コトッ。

馴染になった音で顔をあけると,、白いドレス姿のロクサーヌかいた。青白い顔は、生きていない事を連想させる。実際のロクサーヌの遺体は、9年経ってもさっきまで生きていたような肌色なのだが・・・


「恨んでいるのか、(みじ)めだな。あはっは」

それまで悲壮な表情で書類を見ていたレオルド・ユーラニアは、ロクサーヌを見下したように笑う。

「お前が大事にしていた領地も、こんなものさ。全部、私のものだ」


「惨めなのは、貴方の方よ」

それまで無口だったロクサーヌが、その夜はレオルドに応える。

「私と結婚した幸運を手放したのは貴方よ」

レオルドをあざ笑うかのように、ロクサーヌは口角をあげる。


「黙れ!」

ガチャン! レオルドが投げたインク壺は、ロクサーヌが消えたので壁に当たって割れた。


コンコン。

物音に驚いた使用人が、レオルドの私室に入って来て、壁のインク染みに目がいく。

「旦那様、いかがされましたか? すぐに掃除いたします」


「うるさい! 出て行け!」

レオルドが今度は使用人に怒鳴る。レオルドの注意が使用人にいっている間に、ロクサーヌに化けたシェルとアイリスが部屋の暗闇を伝って、部屋の外に出る。

二人が部屋の外に出たのを確認して、使用人は扉の戸を閉めた。この使用人はランボルグ侯爵家の間諜だ。

他にも王家からの間諜や、金で勧誘した協力者もいて、シェルとアイリスはかなり自由に動ける。


レオルドは机の上に散乱した書類に目をやると、投資の案件だけでなく、妻のドレスや宝飾品の請求書が目に入る。

聖水の入った飲料を飲んでいるおかげで、レオルドは徐々に妻の行動に反感を持つようになってきていた。

「浪費ばかりで、領地管理の一つも出来ない。昔のように贅沢できないと、何故分からないんだ」

平民の女は、何年経っても(いや)しいままか。

レオルドは、妻が領地管理を手伝っていれば、領地の災害はもっと早く手を打てた、そうすれば被害も少なかったと考える。

妻が貴族ならばちゃんと教育されていたはずだ、と怒りの矛先が妻に向かう。


『私と結婚した幸運を手放したのは貴方よ』

闇に消えたロクサーヌの言葉が(よみがえ)る。

そうだ、私に運があったからユーラニア伯爵になったはずなのに、どうしてこんなことになった。

金遣いのあらい妻と、婚約者の王太子に見向きもされない娘。

どうしてあんな者の為に、私が苦労しなければならないんだ。

とんだ貧乏神じゃないか。


そうなると、ロクサーヌが生きていれば領地に災害は起きなかったとさえ思ってくる。

ロクサーヌとシェルを殺したことで聖獣の加護がなくなったことなどレオルドは知らないが、生きていれば災害は起きなかった。


レオルドの中で葛藤(かっとう)が渦巻く。

いくら考えても、債務が消える訳ではない。ユーラニア伯爵家の潤沢だった資金は消えてしまったのだ。




読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ