表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と誓いの月夜  作者: violet
61/98

シェルの怒り

シェルは怒りに燃えていた。

「貧民街の住人は殺されてもいい、というの!?

邪教の信徒を捕縛するのが遅れる間に、生け贄にされる人間が増えるのよ!

一網打尽!?

そんな手配している間に、信徒が増えればドンドン後延ばしになっちゃうっての!」

ガッチャンっ!

大きな音を立てて椅子が倒れる。シェルが机を叩いた振動で椅子が倒れたのだ。


「シェル!」

声を荒げたのはアイリスで、ギルモンドとグイントは目を見開いて見ている。

フェイラー先生の準備室でランチをしながら、ギルモンドが邪教への対応を伝えたら、シェルが怒りだして、淑女としてありえない行動をしたのだ。

「シェル、ここは借りている部屋で、遺物や貴重な資料がたくさんある。

ここで乱暴な行動をするのは許されない」

アイリスの言葉に、さらにギルモンドとグイントが息を飲む。貴重な品々があると注意しても、シェルが令嬢らしくするようには注意しないからだ。

アイリスは二人を見て、溜息をついた。

「僕もシェルと同意見だ」


アイリスは立ちあがり、シェルと部屋を出て行こうとするのを、グイントが腕を掴む。

「どこに行く!?」

焦っているグイントの声は荒れている。


悠長(ゆうちょう)なことをしていられない。ユーラニア伯爵を追い詰めに行くわ」

答えたのはシェルである。だが、そのシェルの前にギルモンドが立ちはだかる。

「まだ、午後の授業がある」

ギルモンドからは怒りではなく冷静さを感じて、アイリスとシェルも一息をつく。

「生徒会の主催ではないが、もうすぐ音楽祭がある。エシェル・ユーラニアはピアノが得意だ。音楽祭に出場して家族が見に来るだろう。学生の家族が多数来場する。

その場を報復の場としてはどうだろうか?」

レオルド・ユーラニアには、密かに聖水を含ませた水を飲取させている。意識が長期にわたって夫人の支配下であっても、多少の自我の解放ができているだろう。


「そうね、私を取り戻すためには、大勢の目撃者が必要だわ。 伯爵は投資の損失で、焦って逼迫(ひっぱく)しているはず」

シェルは、ユーラニア伯爵を追い詰める計画を前倒しにするシュミレーションを考える。

その姿にギルモンドは見惚れる。

行方不明の9年間、いろんなシェルを想像していた。だが、実際のシェルはそれより何倍も輝いていて(まぶ)しい。


「確かに、殿下のいうとおりだ。邪教の生け贄という言葉に過敏に反応してしまった」

アイリスも落ち着いて返事する。

「邪教の方は、陛下やシェイドラ公爵にお任せします。元々、それは考慮になかったことだから。

せっかくのお膳立てだから、僕らは音楽祭をつかわせてもらううよ。

必ず、ユーラニア伯爵を出席させてよね。

じゃ、午後の授業に出席する、シェルを送ってくるよ」


「二人じゃ危険だから、送って行くよ」

グイントが二人を追いかけるように、ギルモンドを部屋に残して出て行く。

部屋の外では、アイリスがグイントを邪険にあしらっている声が聞こえた。


「僕は父上に報告して、邪教弾圧の準備にはいるか。

その前に母上を、どうするのかな」

父上は、という言葉はギルモンドからはでてこない。もう結果が想定できているからだ。

ギルモンドが呼ぶと、影の護衛が現われる。

「王宮に戻る」

その言葉に影が動いた。


読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ