フランクの価値と思惑
王と王太子は、フランクに説明するも、詳細は伝えなかった。
ユーラニア伯爵夫人と娘が、薬を使って他人を精神感応する疑惑があると、嘘と本当を交えて教えた。
夫人と娘には目を合わせない、もしものために聖水を常に携帯する。
フランクは王子として最高の教育を施してきたが、あまり身についていないし、楽観的に考える傾向がある。
過去には、短絡的な行動で問題を起こしている。
気に入らない使用人をクビにしようとしたり、気に入った使用人の実家を優遇して王から注意を受けた。
そして、兄の王太子と比べられると、対抗意識を持ちながらも、能力差を見せつけられて捻くれるということを繰り返している。
王子として信用されていない、というのが実情であるが、まだ15歳、これから成長するのを期待しているというところである。
なので、全てを話すほどの信用がないのだ。
フランクが出ていった執務室に残った王と王太子。
「王太子が15歳の頃は、地方に視察にまわり責務を果たしていた」
王は、諦めたように言うのを、ギルモンドも肯定も否定もせずに聞いている。
自室に戻ったフランクは、エシェル・ユーラニアとエシェル・ランボルグの事を考えていた。
エシェル・ランボルグは、エシェル・ユーラニアであった。それは、銀髪のエシェルは、兄の婚約者だと言う事だ。
何もかも、兄が手に入れる。
握りこぶしが震えて、フランクは息を吐く。どうして、いつもこうなんだ!?
精神感応の薬、そんなものがあるなら、僕でも・・・
偽物のエシェルは、それで周りに納得させているのなら・・・、ユーラニア伯爵夫人は、どうやってその薬を手に入れているのだろう?
その薬を手に入れたら、誰に使おうか?
フランクは楽しい想像をして、笑い声が漏れる。兄達には気づかれぬよう、偽物のエシェルに接触をしなければならない。
フランクは学院では、今までと何も変わらなかったが、エシェル・ユーラニアの行動を密かに見張っていた。
何か言いたそうにシェルを見る事が多いが、シェルはギルモンドで手いっぱいなので、無視を通していた。
「殿下」
フランクに声をかけて来たのは、エシェルである。
「先ほど、先生が言われていたグループですが、よろしければご一緒しませんか?」
エシェルの後ろには男子学生2名と女子学生2名が立っている。
「ああ、生物の実験のグループだよね、いいよ」
せっかくエシェルから近づいて来たのだ、フランクはそれを利用することにした。学院に入学するまで、エシェルに男性の友達がいたとは聞いたことがない。
きっと薬を使ったのだ、とフランクは思って観察することにしたのだ。
その様子を、シェルとサリタが見ていた。
サリタは、王太子に報告をする為である。
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