邪教という悪役のエシェル・ユーラニア
シェルとアイリスをランボルグ侯爵邸に送ると、ギルモンドとグイントは王宮に戻って報告をするのだが、グイントがアイリスの侍女姿を褒めちぎり、離れようとしなかった。
結局、アイリスに罵られて追い出された。
ギルモンドとグイントは、儀式の部屋と確定できるものを見つける事はできなかったが、事前の情報が正確であったため、隠し扉をいくつか発見することができた。
その中には、屋敷の外に繋がっている通路もあるはずだから、それの確認も必要だ。
それは生け贄を、屋敷に運び入れる為の通路なのだろう。
使用人の手助けがあったので、屋敷の中を動くのは思っていたよりは容易だった。だが、軍を投入して大規模な捜索をするには、リスクが高いだろう。
王宮に戻ると、王が結果を待っていた。
王だけではなく、教会の枢機卿も一緒である。連行した学院の生徒の報告もあるのだろう。
ギルモンドがグイントを連れて部屋に入ると、応接室ではなく執務室の方に通される。それが、事の重要性と機密性を表していた。
「ただいま戻りました」
ギルモンドが挨拶をすると、枢機卿が席を立ち挨拶をする。
「殿下、お久しぶりでございます。此度の事、教会も危機感を持って全面的に協力させていただく所存でございます」
前王は教会を軽視していたが、現王は違う。
教会も王家も、ロクサーヌ・ユーラニア、エシェル・ユーラニアは聖獣の庇護を受けていて守らねばならない存在なのだ。
二人の捜索に、王家と教会は協力関係にあった。
ギルモンドも度々枢機卿に会っている。
グイントがユーラニア伯爵邸の図面を広げると、そこには印が付けられていた。
「ここが隠し扉の場所になります。他にもある可能性があります。それと不可解に増築場所が数か所」
王と枢機卿が図面を覗き込み、ギルモンドの説明に聞きいる。
ランボルグ侯爵から提出された、使用人からの情報と古い地図。それらを照らし合わせて、4人の会議が進む。
シェルに暴行を働こうとした学生は、聖水をかけると意識を失い、未だに目覚めないようだ。
それは、聖水に反応したということで、ギルモンドが考えていた通りのことが起こっている。
今まで、エシェル・ユーラニアは貴族令嬢らしく従順で大人しいイメージだったが、考えを改めねばならない。
エシェル・ユーラニアは危険人物で、体の接触は絶対に避けねばならない。
それも学院で見つけた遺物の石板に書かれていた。
体の接触が多いほど、儀式の効果が強く現れる。
クラスメイトならば、偶然体が触れ合うこともあるだろう。
その程度の接触で、男子学生がシェルを襲うほど操れるとは、どれほどの生け贄を捧げたのだろうか。虫酸が走る。
ギルモンドほどではないが、グイントも王太子の側近として、エシェル・ユーラニアと接点があったし、シェルに出会うまではエシェルが哀れとさえ思っていたのだ。
「ギルモンドがエシェル嬢を避けていたのは、結果的に正しかったのですね」
ギルモンドはエシェルの名を語る女を嫌っていただけだである。
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