シェルの挑発
クラスメイトが教員室に知らせに走ったので、すぐに大勢が知ることになった。
授業中に生徒二人が女生徒を襲ったことは、学院中に衝撃を与えた。
シェルはクラスメイトに助けられて立ち上がると、まずエシェル・ユーラニアを見る。
エシェルは笑っていた。
周りのクラスメイトは、つかまった男子生徒に気を取られて、エシェルの異様な様子に気がついていない。
犯人は彼女に違いない。
だが、実行犯は男子生徒二人。エシェルが罰せられることはない。
「シェル、大丈夫か?」
授業中であるだろうアイリスが来て、シェルにケガがないか確認する。
「大丈夫よ」
シェルが言うも、アイリスの心配がなくなることはない。
「不気味だね。異様だ」
授業中に襲ってくるなど、まともな判断力があれば出来るはずがない。
1年生の授業は中止となり、シェルはアイリスに付き添われて帰宅することになった。
「シェル、大丈夫か?」
遅れてやってきたギルモンドとグイントがアイリスと同じ言葉を言いながら、エシェルの前を通り過ぎると、笑っていたエシェルの顔が泣きそうな表情になる。
「襲われたショックが大きいので連れ帰ります」
アイリスがそういうのも無理ないような現状なのだ。
人が襲われるのを初めて見た生徒が大半なのである。倒れた机や椅子、立ち尽くしたクラスメイト。
ギルモンドとグイントもエシェルの視線を感じていたが無視をする。
このような惨状でも、婚約者のエシェル・ユーラニアに声もかけずにエシェル・ランボルグの心配をする王太子を皆に見せつける。
生徒会として、襲った男子生徒の尋問に立ち会うことになったギルモンドとグイントは教室を出て行くと、残った生徒達も帰り始める。
シェルはアイリスと教室を出る時に、笑顔を作ってエシェルを見た。
カッと怒りをあらわにしたエシェルだが、すぐに無表情になる。
「すぐにまた仕掛けてくるかもな」
アイリスはエシェルの様子に、悪い予感を感じる。
婚約者の王太子に無視され、同じ名前の他の女に執心なのを見せつけられるエシェルを哀れむ気持ちがなくはないが、エシェルは復讐する一人である。
ましてや、攻撃してくるなら手加減などしない。
これが邪教の力によるものなら、私を襲った男子生徒も被害者なのだとシェルは考える。
そして、被害者は増え続ける。
シェルはアイリスを見ると、アイリスも同じ事を考えていると分かる。
これは、始まり。
でも、この邪教の証拠を手に入れれば、シェルが本物のユーラニア伯爵令嬢であると証明出来るかもしれない。
男子生徒の尋問に立ち会うギルモンドは、グイントに聖水の用意と教会に連絡するように言う。
呪符には効力があったのだ。
彼らに呪術がかけられていたら、有効かもしれない。
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