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君と誓いの月夜  作者: violet
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フェイラー先生の遺物

今回から、エシェル・ランボルグをシェル、エシェル・ユーラニアをエシェルと表記して区別します。

少し、わかりやすくなるかと思います。

教員がくるとシェルの机も用意された。

ギルモンドから話がいっているらしい。王族の特権を使ったのか、生徒会長としての仕事なのかは分からないが対応が早い。

痛いような視線を感じて振り向けば、誰もいない。シェルはクラスの中でそういう視線を何度も感じていた。


「視線?」

「そう、まるで何人もに見られているような感じがあるの」

今日のランチは、ギルモンド、シェル、アイリス、グイントの4人である。

シェルはアイリスに言ったはずなのに、返事しているのはギルモンドだ。


「あの紙を届けた騎士が戻って来た。

司教からは、解明できるかわからないが少なくとも数日はかかると伝言があった。

それからグイントの推察どおり、呪符なのは間違いないらしい。

あの呪符の目的はなんだろう?」

ギルモンドはアイリスのサンドイッチを気に入ったらしく、次々と手に取る。


「俺が思うには・・」

グイントがいったん区切ったのは、ギルモンドが全部食べる前に、自分のサンドイッチを確保する為らしい。

「ギルモンド、リースのサンドイッチを取りすぎです。それは俺のです」

真剣な話をしているのに、優先順位が間違っている。

それを見ていると、不気味な視線で苛立ったシェルの気持ちが落ち着いてくる。


「それで、俺が思うに、あそこで呪符を用意できる人間はエシェル・ユーラニア嬢でしょう」

それは誰もが思っている事だ。

「その視線がエシェル・ユーラニア嬢のものではなかったら、クラスメイトのものでしょう。

学院に入学する前からエシェル・ユーラニア嬢と知り合いだった者がいるとして、呪符と関係があるのかもしれません。あるいは、邪教と・・」

グイントはサンドウィッチを頬張り、お茶のカップに手を添える。

「この部屋は実に面白い部屋です」

話が変わったことに、ギルモンドとアイリスが重要なことがあると察する。


「フェイラー先生が優秀だということは、ここにある資料が物語っている。この部屋には、信じられないほど重要な物が無造作に転がっているんだ。

昨日、整理しているときに見つけた」

グイントは机の上に、古びた箱を丁寧に置いてそっと蓋を開けた。

「これも他の遺物と同じように(ほこり)にまみれていた。偶然見つけて、最初は何かわからなかったが、邪教の石板だと思う」

グイントが箱から取り出したのは、数枚の石板だ。

フェイラー先生がどこかの遺跡か廃教会で見つけたのだろう。


石板には古代語で文章が掘られており、色彩は落ちているが挿絵も健在だった。

「ひっ」

シェルが石板を見て言葉を飲み込んだ。


それは、生け贄の儀式を描いた絵だ。


「生け贄は10才までの子供が望ましい」

横から聞こえた声に、シェルは振り返った。アイリスが石板を読んでいた。

古代語は多くの貴族子女が教養として、学院に入学するまでに身に付けている。

グイントは昨日読んで、重要性に気がついたのだろう。


邪教など古い時代のものと忘れしまっている人々にはただの遺物だが、邪教が活動していると知ったギルモンドとグイントには貴重な資料である。

ギルモンドは夢中になって石板を読んでいる。

「邪教は願いを叶えるために生け贄を捧げる儀式をおこなう。呪符は相手に持たせることで、呪いを発動する」

儀式の方法まで書かれているこの石板は、邪教のバイブルなのかもしれない。

「これは、フェイラー先生に許可を取って教会で保管すべきだろう。王には僕から話すよ。

グイント、よく見つけたな」

呪符がシェルの机にあったということは、シェルを呪うために置かれたということだ。

ギルモンドにとってエシェル・ユーラニアは、ユーラニア伯爵と夫人の娘、偽物のエシェルという認識だったが、憎むべき相手となった。


エシェル・ユーラニアが王都のユーラニア伯爵邸に入ったのは3歳の時、自分がエシェルとかローザとか分からないうちにエシェルと呼ばれて育ったのなら、自分がエシェルでないとか、その為にロクサーヌとエシェルが殺されたとか知らないのだろう。

伯爵と夫人に復讐するのにはエシェル・ユーラニアも含まれる。

呪符がエシェル・ユーラニアのしたことなら、何の抵抗もなく復讐できる。

シェルは楽しくなってほくそ笑んだ。


読んでいただき、ありがとうございました。

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