表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と誓いの月夜  作者: violet
23/98

初めての対面

鏡の前で何度も制服姿を映す。

「やっぱり、こちらのリボンの方がいいかしら?」

鏡に映るエシェルの髪にリボンをあてているのはルミナスである。金、銀、赤、青、緑、とりどりのリボンがルミナスの手に握られていて、エシェルの髪に飾るつもりでいるのだ。

エシェルを着飾るのは、ルミナスの楽しみだから、領地でも着せ替え人形となっていた。


やっと決まったのは、ペールブルーのレースのリボン。

その様子をソファーに座って、マルクとアイリスが眺めている。

「ここが領地のような気になりますね。いつもの光景だ」

口元に手をあてながら、アイリスが幸せそうに言う。

「だな、ここが王都のランボルグ侯爵邸とは思えんな」

マルクも同意だ。

だが、足元に座るダミーだけは機嫌が悪い。

ダミーは連れて行ってもらえずに、侍女とお留守番だからである。


「さぁ、時間だ。入学式に遅れては大変だからな」

マルクが立ちあがる。

今日は、エシェルの貴族学院の入学式である。

エシェルを隠す必要がなくなるので、これからは生活の基盤が王都になる。

マルクとルミナスは精力的に社交に出て、情報収集に力を入れる予定だ。


侍女に抱かれて手を振るダミーと別れ、4人は馬車に乗る。

今年の首位は、エシェルである。

そして、どういう伝手を使ったのか、マルクは2位がエシェル・ユーラニアであることを調べていた。

「エシェル、これから毎日会うことになる。大丈夫か?」

マルクは誰がと言わないが、皆が分かっている。自分の名前を(かた)る人間と同じ学校に通うのだ。

年も同じだから、当然同じ学年で入学式に来る。

昨年のアイリスの入学式は、アイリスは一人で登校したが、エシェルの入学式は両親も参列である。


「はい、大丈夫です。私は、エシェル・ランボルグですから」

エシェルの肩を、隣に座るアイリスが抱き寄せる。

「いつも側にいるからね」


入学式に出席する生徒と保護者で馬車寄せは混雑している。そんな中でも王家と高位貴族の馬車寄せは別の場所にあって、ランボルグ侯爵家は高位貴族の馬車停めに向かう。

そこには、伯爵家でありながら高位貴族の馬車停めにいる馬車があった。王太子の婚約者であるエシェル・ユーラニア伯爵令嬢が乗る馬車である。王太子の婚約者ということで、王族扱いに準じているのである。


後から来たランボルグ侯爵家の馬車に、先に降りていた令嬢が振り返った。

ブルーネットの髪のエシェル・ユーラニア伯爵令嬢である。両親が一緒のようだ。


窓から覗いて、ビクンとしたのはアイリス。

「大丈夫です、心配しないで」

エシェルが笑顔を見せる。

馬車が停まると、マルクとアイリスが先に居り、ルミナスとエシェルをエスコートする。


二人のエシェルの視線が交差するが、無視するようにアイリスにエスコートされてエシェルは歩き出す。


「待ちなさい」

王妃に可愛がられ、王太子の婚約者であるエシェル・ユーラニアは、同年代の令嬢の中では礼を尽くされる側だった。それなのに、無視されたので腹立たしい。

「私を王太子の婚約者と知っていて、素通りするつもり?」

15歳にしては、貫禄というものさえあるエシェル・ユーラニアを肯定するようにレオルドとロクサーヌが後ろに立つが、レオルドはマルクの顔を知っている。

自分の娘は王太子の婚約者で未来の王妃だという自負があるが、侯爵相手では分が悪い。


エシェルを庇うようにアイリスが前に出れば、エシェルはアイリスの影に隠れるようになる。

「王太子の婚約者が、こんな愚か者だとは」

バカにするようにアイリスが言ったのが、さらにエシェル・ユーラニアの(かん)(さわ)る。


「失礼ですわ!」

エシェル・ユーラニアが声を荒げたことで、人が集まって来る。そうなると、レオルドも娘の腕を持って場を去ろうとした時、ロクサーヌが(つぶ)いた。

「あら、あの子、銀髪」

レオルドは思わずエシェルを見るが、アイリスの後ろで顔まではわからない。

たとえ見えても、8年も前に殺した娘の顔など憶えていないだろうし、成長して変わっている。変わらないのは銀の髪だけだ。


「失礼なのは、王太子の婚約者を(かさ)に礼儀をわきまえない令嬢ではないか」

それまで様子を見ていたマルクが吐き捨てるように言うと、レオルドも黙っていない。

「侯爵家といえど、娘は王妃になる身だということを考慮して発言していただきたい」


「何事だ」

野次馬を掻き分けて来たのは、ギルモンドとグイントだ。生徒会会長と副会長として来たのだろう。


「ギルモンド様! ひどいんです!」

ギルモンドの姿を見つけて、エシェル・ユーラニアが抱きついて身を摺り寄せた。



読んでいただき、ありがとうございます。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ