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作者: ハト

 ある晴れた休日のことである、二人組の男女が私の家に尋ねてきた。

「はじめまして、私はエリック。こちらはシェーン。私たちは『アスピンから子供達を守る会』略してSCFAの会員なのです」

「これはわざわざありがとうございます。それでSCFAが私になんのご用でしょうか?」

「いまSCFAでは親御さん達に、アスピンの危険性をご説明を行っているんですよ。お子さんは、アスピンをお持ちで?」

「ええ、まあ持っていると思いますよ。でもそれは他のとこでも一緒でしょう?」

「ああ、なんてことだ!貴方はお子さんを愛していないのですか!アスピンを子供に持たせることがどれほど危険なことか!」

そういってエリックと名乗った男は、持っていた鞄から資料を取り出して私に渡した。

「残念なことですが、多くの人は貴方と同じようにアスピンの危険性を認識していません。これを見ていただければ分かりますが、未成年の犯罪者のほぼ全員が逮捕時にアスピンを所持しており、また未成年による犯罪の六割強がアスピンをその発生原因としていることが最近の調査で分かってきました。またアスピンはその種類によっては薬物と交換でき、恐ろしいことに学校で問題を起こした少年少女の内その九割が幼少時からアスピンを常時所持しているのです。また残念なことですが、アスピンを得るために街娼のまね事をする少女すらいるのです」

そこで今まで黙っていた女性が、突然ワッと泣き出した。

「すいません、彼女は昔アスピンを得るために売春を行っていたのです。その結果彼女はエイズになってしまったのです」

そこで、エリックはいったん言葉を切り、続けた。

「私の家でもアスピンによって悲劇がありました。アスピンを求めて家に忍び込んだ強盗に、妻と子どもを殺されたのです。犯人は駆けつけた警察によって射殺されましたが、彼は十三歳のアスピンに飢えた若者だったのです」

「なるほど、アスピンはそれほどに悲劇を呼ぶモノなのですね。しかし、ではなぜ国はアスピンを禁止しないのですか?」

「それは、アスピンを流通させることが国の利益となっているからなのです。事実、国は一般市民がアスピンを製造することを禁じて、国内でのアスピンの流通量を管理しているのです。アスピンを国に禁止させることは出来ません、なのでアスピンの危険性を子どもに伝え、子供達がアスピンの必要のない世界を築いてくれることが私たちの夢なのです」

私はエリックの言葉に深く感銘を受け、子どもからアスピンを取り上げることを約束した。それを聞いてSCFAの二人組は満足そうな顔で帰って行った。



 家の中にはいると、私は即座に行動をとった。双子の息子の部屋に行き、彼らの懐から強制的にアスピンを取り上げた。他にも隠しているのではないかと思い、戸棚の奥を探ってみると果たしてそこに、ガラス瓶いっぱいのアスピンがあった。私がそれに手をかけると彼らは奪い返そうとしてきた、暴力を持って。やはりSCFAの言うことは正しいのだ、アスピンは子どもを暴力的に変えてしまうのだ、なんと恐ろしい!

 私は、息子達を殴りつけると鋭くしかった。そして彼らにアスピンの危険性を説こうとしたが、その時ちょうど呼び鈴が鳴った。今日は妻が出かけているのでピザを注文したしたことを思い出した私は、ひとまずその応対をすることにした。

「毎度ありがとうございます。合計で二百四十アスピンになります」


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