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最近の言葉責め風俗点

 男がこの店に来るのは初めてだった。


「当店は言葉責め専門店という性質上、お客様のデリケートな部分に触れてしまう可能性がございます」


 とある風俗街にたたずむ一件のお店。そこでは、コンプライアンスの順守が徹底されている。


「そういったトラブルを防ぐため、初めてのお客様にはNG項目のご確認をさせていただいております。お手数ですが、ご協力お願いいたします」


 その弊害として、実際にプレイが始まるまでの手順が長い。今回来た男も、やや面倒くさそうにしながらしぶしぶと承諾した。


「それでは早速、事前にいただいた問診票から、NGの確認をして参ります」


 鼻の穴を親指で抑えながら、受付嬢は言う。


「まず学歴とありますが、これは大学名が恥ずかしくて言えないということでしょうか? それとも大学進学できないことがコンプレックスということでしょうか?」


 問診票のNG項目は、ついつい曖昧にしてしまうことが多々あるらしい。故に、口頭での確認が必要不可欠だ。


「なるほど~高卒なんですねぇ。ちなみに、知能指数そのものを貶すのは問題ないでしょうか。低能とか、無教養とか」


 受付嬢の仕事は、コンプレックスを根底から見つけることである。トラブルが起きる可能性を徹底して潰すため、鋭い追及をしていく。


「……はい。わかりました。NG項目に追加しておきますね」


 こうして、トラブルの種が一つ取り除かれた。


「次に家庭について、とありますが、もう少し詳しくお聞かせいただけますか? 家族の話がしたくないのか、経済的な面を触れてほしくないのか、おそらくどちらかかと思うのですが」


 二つ目のNGについても、受付嬢は踏み込んだ質問をする。


「なるほど。その家族というのは家族全員でしょうか? それとも特定の誰か……」


 質問時のテクニックとして、選択肢を掲示するというものがあるらしい。


「ほう、弟さんが……。コンプレックスなのですね」


 これにより、男は特に悩むことなく回答し、サクサクと話が進む。


「ちなみにそれって先ほどの学歴と関係あったりしますか?」


 NG項目はそれぞれが独立しているとは限らない。これも事前に確認しておきたい箇所らしい。


「あぁ……やっぱりそうだと思いました。では、弟さん、兄弟の話以外は問題ないということでよろしいでしょうか」


 確認していくうちに、NG項目の中からNGでないものが出て来る時もある。


「あっ、親とも上手くいってないんですね。そちらもNG項目に追加しておきます」


 だが、今回はそうではなかったようだ。受付嬢は鼻を抑えて苦笑いをした。


「続いて政治思想とありますが……」


 受付嬢の口が止まった。


「こちらはスタッフのほうでも触れることはないので大丈夫です」


 たまに予想外の項目をNGに書く客がいる。そういう場合は、ニッコリと笑って対応するらしい。


「最後に、においとありますが、これは体臭全般……ということ良いでしょうか? それとも口とか腋とか、特定の部位の……」


 ついに最後のNG項目となった。早くプレイをしたいのか、男は少し貧乏ゆすりをしている。


「あ、全般ですか。分かりました」


 またも、受付嬢は鼻の穴を親指で抑えた。


「ちなみに、本日ってご来店前にちゃんとシャワー浴びましたか?」


 男が受付嬢を殴ったのは初めてである。





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