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約束の時間の15分前、ふと道路を見ると、
馬2頭立ての豪華な馬車が止まっていた。
まさかと思い、慌てて道路に出る。
するとウィル様が私に気づいて、
出てきてくれた。
「おはようございます。
早く来てしまったんです、まだ時間はあります、
女性は準備に時間がかかるでしょう?
ゆっくりしてもらっていいのですよ」
「いえ、もう準備は終わっています、
ウィルさ・・ウィルさえよろしければ、出かけましょう」
「分かりました」
そう言って、馬車から花束を取り出す。
「この国で一番美しい貴方を独り占めできる、
幸運に感謝します、これをどうぞ」
満面の笑顔で言われ、思わず花束を受け取る。
花は真っ赤な薔薇、50本はあるだろうか、
うっわ~キッザ~と思わず思うが、
嬉しくない訳がない。
「ありがとうございます、えっとこのお花、
部屋で水に差してあげていいですか?」
持って行く必要はないし、すぐに枯れてしまっては
申し訳ないと提案する。
ウィル様は少し驚いた顔をした後、
いいですよと言ってくれた。
しばらく花を楽しんで、ドライフラワーにして、
ポプリにしようかしら・・・
そんな事を考えながら、部屋に戻り、
適当な花瓶は見当たらなかったので、
とりあえず洗面台に栓をして水を溜め、
そこに薔薇を置く。
洗面台に咲き誇る薔薇に満足しながら、
ウィル様の待つ馬車に向かった。