第一章5 『転移者と魔獣の関係』
「魔獣を討伐したら、元の世界に戻れるよ」
俺は、ややこしい説明を省きたかったので
シンプルに答えた。
「僕は、魔獣の討伐をさせられるためにこの世界に召喚されたってことですか?」
少し強気にケイは聞いてくる。
被害者ヅラしたような発言が俺の癇に障る
「ケイが、この世界にきた理由は知らねえよ。
でもな、魔獣はお前が作り出したようなもんなんだよ。」
エレナはもう少し言い方があるんじゃないかと言った顔で俺を睨む。
案内人として、転移者には魔獣退治をする責任感を持たせなくてはいけない。
「ラグナさん、それはどういう意味ですか?」
「転移者が元いた世界で耐えられない、恐怖やストレスを感じた時こっちの世界に
無意識で逃避してくるんだ。その時現れるんだよ。お前の恐怖心やストレスを形に
した魔獣がな。」
説明した時、ケイは何も言えなくなった。
自分に責任があることを知ったからだろう。
でも、もう少し知ってもらう必要がある。
「通常この世界では、人が死ぬことがない。魔物に喰われようが人に殺されようが
馬車にはねられようが次の日には何もなかったかのように生き返る。」
ケイは少し安心したような顔になる。
「だがな、魔獣に殺された人間だけは別だ。もう二度と生き返らない。
魔獣を放置していると、この世界は滅ぶだろう。」
ケイはとんでもないことをしてしまったかのような顔をする
自責の念に駆られているのだろう。
あともう少し責めておくか、と思い口を開こうとした時
エレナに水をかけられる。
「っ!つめてぇえ!」
「そんな意地悪言わなくてもいいでしょう!魔獣を呼びたくてきたわけじゃないんだし
この世界が滅ばなくてもいいように、あんたが手伝うんでしょう!」
エレナは正義感の強い女の子なのだった。
ウォレスにはちょっと大事な話があると言って、外に出てもらっている。
ケイの方を見ると、今にも泣き出しそうな顔をしていた
「ああ、悪かったな。来ちまったもんも魔獣が作られてしまったものも
仕方ない。だから、魔獣を倒すために精一杯頑張ってくれ。」
ケイは黙って頷いた。
ケイが怖いものを片っぱしから質問をしていった。
とりあえずいじめの内容で、殴られることには過度の恐怖心があることはわかった。
十中八九今回の魔獣は暴れ回るタイプだろう。
そんなことを考えているうちに店に一人の女性が入ってくる。
ノキだった。
「おやおや、知らない人がいるねぇ。君が転移者なのかな??」
ノキはぐいぐいケイに質問していく。
ケイは人見知りなのか、恐る恐る頷く
ノキは満足気に頷く
「私は情報屋のノキ、何か知りたい情報があれば何でも聞いてくれ。
金さえ貰えれば、大抵のことは話すよ。」
そう言ったあと、ソファに座っていた俺の隣に座る
「頼まれていた情報なんだけど。とりあえず発見した。」
エレナはノキの分のお茶を運ぶ。
ノキはそれを口にして、あちちとベロを出す。
それを見たエレナはニヤリと口角を上げる。
エレナは正義感の強い女の子だ。
・・・・・ノキを除く
ノキは持っていた紙を俺に見せる。
それは魔獣の絵を描いたものだった。
「亀?」
そう亀の見た目をしていた、甲羅がありのしのし歩くような
「そう亀だ。ただ、馬鹿でかい。歩いてるだけでこの街を更地にできるだろう」
亀のデカさを聞いた。
全長100mは超えるという。
ただ動きは遅く、この街に到着するのに一ヶ月ほどの猶予はあるようだ。
「こんなのどうやって倒せっていうんだ・・・」
ケイは絶望したような顔をする。
「君は勇者なんだから、簡単に絶望したらダメじゃないか」
ノキはケイに言う。
「勇者・・・?」
ケイは不思議そうにこちらを見る。
ノキは言っていないの?という顔で俺を見る。
仕方ないから説明する。
「転移者は世間で、魔獣を討伐するためにきた勇者だと思われている。」
「どうして」
「魔獣を作ったのが、転移者だとみんながしっていたらどうなると思う?」
いくらわざとじゃないと言っても、普通はそれで納得しないだろう。
それでケイは納得したのか口を閉じる。
魔獣が転移者が作り出したと知っているのは、案内人の俺とパートナーのエレナ
情報屋のノキ、あとは魔獣討伐のため日々訓練している”騎士団”の上層部
あとは魔獣教という怪しい宗教団体がどこまで知っているかわからないがその辺りだろう。
「魔獣教に動きは?」
俺はノキに尋ねる。
「特に動きはないかな。魔獣教の全てを知っているわけではないから裏でどういう動きをしているのかわからないけど」
ノキは知っている情報をくれる。
今回お金を俺にあまり請求せずに色々と情報をくれるのは
転移者が現れた案内人は無料で色々と買えるからだ。
買った店は魔獣討伐後、国からお金をもらえると言った流れになる。
「よし、とりあえず。魔獣討伐のため騎士団に挨拶向かうか」