第一章4 『転移者 クルミ・ケイ』
ウォレスを雇い数日が経った頃
案内人としての仕事が突然やってきた。
異世界からの転移者が現れたのだ。
街から出て、少ししたところに祠があり
そこに転移者が現れた時、祠が光の柱を出すにで街からでも転移者が現れたことがすぐにわかる。
祠の入り口は閉じており、中からは開かないようになっている。
ウォレスに店番を頼み、エレナには人力車と食料の用意をしてもらう。
ノキには前金を払い、転移者が現れた時に出現するという魔獣の情報と
転移者が現れることにより不穏な行動をしそうな奴らの情報を集めてもらうことにした。
エレナの足なら、人力車を引くと20分くらいで祠に着く
いろいろな準備に手間取って、転移者がきてから5時間ぐらいがたった。
祠に閉じ込められ、水や食料もなく出られる保証もないまま5時間が経てば
誰でも心が滅入るだろう。
早く出してやらないと。
「祠が中から開かないようにしたのは誰なんだろうね。」
エレナが走りながら俺に聞いてくる
「俺だな。」
エレナは驚いて何か言いたげだったので説明をする。
「嫌がらせをしたくて、閉じ込めているわけではないよ。
途中で魔物に襲われたり、迷子になられると困るだろう。」
そういうと、エレナは納得した。
魔物は魔物でいる。魔獣とは違いそんなに人間に害はない。
たとえ殺されても、次の日には生き返るからだ。
魔物も同じで、死んでも次の日には生き返るため
食料としても優秀だ。
もちろん俺が、魔物を狩ると生き返らないのでこの辺りの人間が食料問題に悩まされることになるだろう、
「祠についたよ」
エレナがそういった。
祠を急いで開け、転移者を確認する。
異世界の学生服を着ていた。以前きた転移者とは別のものだが似ている服なので
学生服でまちがいないだろう。
所々汚れている。祠で汚れたのかと考えたがそうでもない。
元の世界で喧嘩でもしていたのか?怪我をしている。
「大丈夫か?俺はラグナ。君みたいな異世界から来た転移者を案内する案内人だ。」
とりあえず自己紹介をして、エレナが用意した水を渡す。
余程のどが渇いていたのか少し匂いを嗅いで、一気に飲んだ
「ぼ、僕はクルミ・ケイです。僕はなんでここにいるんですか?」
少し吃りながら、自分の名前と聞きたいことを聞いてくる。
「ケイが何のために、異世界からここに来たのかは俺たちにもわからない。
でも帰る方法なら知っている。ここで話すのも何だからとりあえず街に戻るぞ。」
そう言って、ケイを連れ人力車に乗せる。
エレナは簡単に名乗って、人力車を引き始める。
女の子が人力車で走っているのに驚いたのか、少し困惑していた。
お腹が減っているだろうと思い、エレナが作ったサンドイッチを勧める。
ケイは遠慮がちに食べ始めた。
元いた世界について聞く。
ケイはやはり学生で、現在17歳だという。
ひどいいじめを受けていて、掃除用具入れのロッカーに閉じ込められており、
気がつくと祠にいたらしい。
エレナは正義感が強いので、その話が耳に入ったのか少し人力車を引く
力が強くなった気がした。
運び屋の店に到着し、ソファに座ってもらう。
「・・・どうしたら、元の世界に戻れるんですか。」