第一章2 『執事見習いの依頼者』
一人の男がきた。
その男は、格好はぼろぼろでところどこと服に血はついている。
でも、その男自身は怪我をしていない。
返り血という訳でもないのだろう。
「助けてください。」
その男は振り絞るように声を出した。
「何から助けるの?俺たち運び屋なんだけど・・・」
ただの運び屋に助けれる物でもないだろう。
「衛兵の人に頼ろうにも見張られていて、いけないんです。
運び屋なんですよね?私を運んでください。」
依頼人は必死に伝えようとして少し早口に話す
要は逃げるのを手伝えということなんだろう。
「その格好を見た限りじゃ、何回か死んでるよね?」
この世界の住人は、死んでも次の日には生き返るのだ。
服装は殺された時のものなのか、血がついている。
着替える余裕もなかったのだろう。
「殺される程のことをしたのかは知らないけど、そんな危険な仕事を
請け負う訳にはいかない。それにお金もないだろう?」
俺はこの店を持つものとして、従業員を危険に合わせるわけにはいかない。
エレナしかいないが・・・・
何より、死なないこの世界で殺されるというのはそれほど恨まれているのか
相手は狂った殺人鬼なのか危険なことには変わりない。
「お金なら、いつか絶対払います。今は監禁され働くこともできませんでしたが
もう後もないんです。」
いつかは信用できない。仕方ないから追い出そうと立ち上がった時
エレナが口を挟む
「わかったわ!あなたを助けてみせます。
ラグナいいわよね??私が受けるといってるのだから」
俺はため息をつく。
この仕事はエレナで成り立っているのだ。
立場的には俺の方が上なはずだが、エレナには逆らえない。
「ありがとうございます。ありがとうございます。」
依頼者は感謝の言葉を何回か言った
依頼者には運び屋として受注する時に必要な書類を書いてもらった
名前:ウォレス
年齢:24
仕事:執事見習い
スキル:ミニマム
運ぶもの:ウォレス
運び先:遠い場所
「ウォレスはなんで、そういうことになったんだ?」
なぜ何度も殺されるような拷問まがいのことをされるようになったのか尋ねる。
「騙されたんです。私は盗みに加担させられ、その罪の全てを被されました。」
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ウォレスの能力は物を小さくする能力を持っている。
その能力が便利だと言われ、屋敷で執事として働くことになったのだ。
いつものように執事服に着替え、掃除をしていると
先輩執事に物を小さくし、運び出し掃除をすれば効率良くできるのではないかと提案される
もっともだと思ったウォレスは全ての物を小さくした後部屋から運び出し、掃除をしていた。
執事長がウォレスの元に来た時にものがなくなり、驚いていたが掃除のためだと説明し
信じてもらえなかったので、運び出したものを元に戻そうとした時
小さくしたものが全てなくなっていた。
執事長はウォレスが盗んだと雇い主に告げ口をして、
雇い主は盗んだものの場所を吐かせようと、拷問を繰り返した。
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一通り、説明を受け俺が最初に思ったことは
「え?もの小さくできんの?」
そういうと、ウォレスはテーブルを手のひらサイズまで小さくしてみせた
「一応もう少し小さくできるのですが、小さくしすぎると見失うのでこれぐらいで」
そう言い元に戻した
運び屋にとっては便利なことこの上ない能力だった。
「お前を運んでも、お金が戻ってくる保証はない。」
俺がそういうとエレナは口を挟もうとするが、遮る
「だから、ここで働いてくれ。そう約束してくれるなら助けてやろう」
エレナは納得していた。
「いいんですか・・・?私にとっては働き口も見つかりこれ以上のことはありません」
ウォレスは今にも泣き出しそうだったが、ギリギリで堪えていた。
あまり男として人前で泣きたくないものなんだろう
「では、契約成立だ。しばらくここに隠れてろ。その間に俺とエレナでなんとかする。」