第一章1 『案内人と幼馴染』
仕事がだるい。
もう少し寝よう・・・
「ラグナ!早く起きなさい!!」
そう言って布団をめくりあげ、俺をベッドから落としたのはお母さん・・・
ではなくて、幼馴染のエレナだった。
エレナは金色のショートヘアをした少し気の強い女の子だ。
「んー・・・」
意地でも寝たい。冷たい床を感じながら寝ようとすると
「こんなことなら、あんたのところで働くなんて言わなければよかった・・・」
エレナはため息まじりにそう言った。
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俺、ラグナは案内人として生まれた。
この世界には魔法や特別なスキルを持っている人が多くいるが
案内人として生まれたという俺には特別なスキルはない。
普通にどこにでもある学校に行き、一般教養を学んでいた。
18歳になり、学校を卒業した俺は働き始めて一ヶ月が経った。
案内人の家系として、異世界から転移者が現れた時は補助金としてお金がでたり
買い物するのに、無料でものが買えたりするのだが頻繁に転移者が現れるわけではない。
頻繁に現れるともちろん、この世界が本当に潰れかねないのだが・・・
学生の時はよかった。
働かなくても親がいない俺でも施設で食っていけたからだ。
卒業前になって、働くことを考えた時どこかの店で働かせてもらえても
いざ転移者が来たとき迷惑がかかるのだ。
これは自分の店を構えるしかないと・・・・
案内人の時でも、役に立ちそうな仕事がいいと思い
運び屋という仕事を選んだ。
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気がついたら、自分のソファで寝ていた。
店といっても、建物の一室を借りていて
店の前に運び屋としての看板を置いているだけだ
「おはよう。エレナ」
とりあえず、向かいのソファに座りながらサンドイッチを食べるエレナに挨拶する。
「おはよう・・・じゃない。毎朝あんたを運んでる分のお金が欲しいわ!」
悪態をつきながらも毎日僕を運んでくれることに感謝をしている
「ありがとう。エレナがいないと俺生きていけないんだ」
そういうと、少し照れ臭そうにしてサンドイッチを食べる
「君がいなかったら、ものも運べないしね。」
俺が人より非力なこともあるのだが、エレナが持って生まれた能力として
”身体強化”のスキルがあるのだ。これにより人が運べないようなものも運べて
この仕事に需要が出てくるのだ。
「ふん。そのサンドイッチ食べてもいいよ」
テーブルを見ると俺の分のサンドイッチをお皿に分けられていた。
いつも、俺の分まで用意してもらえているがエレナから言われるまで
手をつけないようにしている。
「本当にいつも感謝しているよ。」
俺は再度感謝を告げた。
サンドイッチを食べている時
扉が開く音が聞こえる。依頼人が入ってくる音だ。