第一章10 『魔獣の確認1』
次の日
嫌がるウォレスもつれ、
騎士団の魔獣討伐隊について行く。
運び屋は魔獣のほとぼりが冷めるまで休業することにした。
いつも使ってる人力車に3人は狭かったので
物を運ぶ仕事を請け負った時に使っている大きな荷台をエレナが引っ張る。
「どうして、自分まで・・・」
ウォレスはぼやいている。
「ウォレスが巨大亀を小さくできれば、問題は解決できるかもしれないし、置いていくと言う手はない」
ウォレスは肩を落とした。
今知っている、亀の情報は大きく
防御力に特化していると言うことしか知らない。
もしそれだけなら、亀を単純に小さくできれば脅威は去ると言うことだ。
「スキルって僕も使える可能性はないの?」
ケイは俺に聞いてくる。
「どうだろうな。転移者がスキルを使ったと言った話は聞いたことがないが」
ちょっとケイはがっかりしたような表情を作る。
俺もちゃんとしたスキル欲しかったから、気持ちは
少しわかる。
「でも、聞いたことがないだけで。いた可能性もあるぞ。もしあったらかっこいい能力だといいな」
ケイの表情は少し明るくなる。
身体能力とか、俺にも欲しかった。
それがあればエレナにばかり、しんどい思いをさせなくても済むのに。
そうこうしているうちに、魔獣に近づいてきたのか
一定間隔で地響きがする。
亀が歩いてる音だろう。
「どれくらい近ければ、小さくできる?」
ウォレスに向かって聞く。
「視界に入れば、基本的に小さくできます。」
それはいいことを聞いた。
魔獣のサイズは大きく、ある程度離れていても視界に入るからだ。
「もうそろそろ魔獣が姿を表す。遅れをとったものは見捨てるぞ」
ガノフは騎士団一同に声をかける。
騎士団達は、雄叫びを出す。
うるさいやつらだ。
「ウォレス、お前も準備しろ」
そういった時に魔獣が姿を現す。
純粋にサイズが大きいだけで、脅威となることがわかる。歩くだけで地震が起きたかのように揺れる。
これじゃあ近づくだけでも命懸けだ。
視界に入ったにも関わらず、魔獣はサイズが変わらない。
「ウォレス?」
「ダメです。いくら小さくしようと思っても変わりません。」
これがこの魔獣の能力か?
物理攻撃だけではなくスキルも無効化する。
「どうやってこんな化け物倒すんだ・・・」
ケイは絶望している。
本当にこいつは勇者としては向いていないんだろうな
「まあ、びびんなよ。勇者なんだからさ」
このまま帰ってもいいが、もう一つ確かめたい。
甲羅以外の部分を攻撃したらちゃんとダメージが入るのかを
「エレナ止まれ。」
動き回りながら、うまく距離を保っていたエレナに止まってもらう。
後ろからエレナに抱きつく。
「え、ちょっ」
「ウォレス、俺だけを小さくしろ」
エレナは驚いたが、それを無視してウォレスに指示を出す。
体が小さくなっていき、手のひらサイズになった。
俺はエレナの肩にのる。
「ウォレスとケイは戻っていろ。戻り方はわかるな?」
体が小さくなったためか、聴こえていない。
エレナの耳に向かって話伝えてもらう。
エレナはくすぐったそうにしたが我慢して、2人に伝える
エレナには亀に向かって走ってもらった。
後ろの方で爆発した音がしたが、あの2人だろう。
騎士団も次々に自殺していく。
これが魔獣討伐における安全な帰還だ。
殺される前に自分で死に戻る。
「エレナ、悪いがもう少し付き合ってくれ」
ここらから謝罪した。
「耳元であんまり話さないで!!」
エレナはくすぐったがりなようだ。




