執着
「地上でも、本当は年齢は関係ないんだよ。何歳であろうと、その肉体に宿る魂が、その人自身なんだからね。その人が何を考えているか、それがその人の本来の姿さ。魂の姿だよ。
こっちの霊界に還ってきたら、肉体は脱ぎ捨ててくるから、魂だけが生活しているのさ。
だから、肉体の姿に執われていた人は、何を表現していいか分からなくなるのさ。
三途の川では、そのさわりだけ教わるのさ。」
桜は、おばあちゃんと一緒に三途の川にもっと近寄ってみた。
よくよく眺めてみると、川は、透明で川底が透けて見える。
その透けた川底には、色々なものが沈んでいる。
お金、カード、洋服、名刺、資格証明書、表彰状、トロフィーなど、そのほかありとあらゆる物質が沈んでいる。
さらに驚いたことは、沈んでいる物質を掴もうと、溺れながらも川底に潜っている人がいた。
「あの人たちは...??」
桜は、唖然とした。
「地上の物質に執着しているのさ。こっちの世界に還ってきたら、使わないものばかりの物質に執着して、手放せないのさ。
手放せないのは、物質ばかりぢゃないよ。
肩書きや、地位とか、人それぞれだね。
多分、それを手放したら自分という存在が、消えてしまうんぢゃないかと勘違いしてるんだ。」




