引導
泣いて泣いて気持ちが落ち着いてきた。
桜は、おばあちゃんの顔を見上げた。
「おばあちゃん、私のことを、見ていてくれてたの??」
「そうよ。あの世に還ったら、あの世の生活が始まるのだけれど、還ってすぐはやっぱり地上のことが気になってね。
桜達のことを、見ていたのよ。
でも、あんまりこの世に執着するのもよくないみたいで、ここ最近はあの世での生活、勉強に集中していたのよ。」
「あの世の生活?勉強?」
桜のイメージでは、あの世というのは、お花畑の中に幸せそうに暮らしている人たちのイメージだった。
「ふふ。そうよね、お花畑はあるわよ。この世のものとは全然違うの、一年中咲いているし、一年という単位はこの世だけの尺度だけれどね。お花の妖精がお花を一生懸命咲かせていて、お喋りできるんだよ。」
「お花の妖精?本当にいるの?」
「ああ、いるとも。霊界は広〜い世界なんだよ。なんだっているんだよ。」
桜は、おばあちゃんの話を聞きながら、だんだん悲しい気持ちが薄れてきた。
そして、霊界を見てみたいというワクワクする気持ちが出てきた。
「おばあちゃん、私、行ってみたい。私もおばあちゃんと一緒に連れてって。」
おばあちゃんは、桜を見て微笑んだ。
「桜の元々生活していた世界さ。
この世に生きている人も、みんな、同じさ。私たちは、霊界で生活していたんだよ。
さぁ、一緒に元いた世界に還ろう。
きっと懐かしい筈だよ。」
おばあちゃんは、桜の手をひいて、目を瞑った。
何かを念じているらしい、程なくして、大きな光があらわれた。
その光は大きく大きくなり、桜とおばあちゃんを包み込んだ。
光の中に包み込まれた桜は、眩しい光でしばらく目が開けられなかった。
あたたかい心地の良い時間だった。
「桜、目を開けてごらん。」
おばあちゃんの声がする。
桜は、声の通り、目を開けてみた。




