この未知なる王国
桜は、急いでいた。
だから周りが見えていなかった。
川島桜は、今年の春に中学1年生になり、バレーボール部に入部した。
背が高かったので、学校で結構目立っていた。
バレーボール部とバスケットボール部と、2つの部活の先輩から熱心に誘われた。
桜は、小学生の時にバスケットボール部で走り続けていたので、中学ではバレーボールを選んだ。
バレー部には、週に2日朝練があり、バレー部の生徒は、学校の授業が始まる1時間半前には体育館に来ていた。
今日は朝練の日で、桜は新入部員だから、先輩よりも早く体育館に行って、準備をしていなければならない。
しかし寝坊をしてしまった。
自転車をすごいスピードで飛ばして学校へ向かっていた。
いつもは車通りの少ない道を通っているが、今日は近道を通るため、車が多い道に入った。
とにかく前しか見ていない。
トラックが走って来ているのも全く見ていなかった。
トラックの運転手も、夜中からずっと走り続けているので、ウトウトしていた。
事故に遭う時は、色んな要因が重なり合って、衝突する。
桜は、自転車ごと飛ばされた。
トラックの運転手も、桜も、何が起こったのか、分からなかった。
1つだけ分かったのは、桜は肉体から抜け出てしまったということだった。




