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片想い日記(仮)  作者: 勇者マン
1/6

リレー


世間には片思いの期間が楽しいと語る人がいますが、果たして本当にそうなのでしょうか?


実らない片思いって本当に楽しいですか?




「ねぇ、」



チャイムと共に足はやに教室を去る君を僕は必死で追いかける。



僕の教室から階段を上がって1番奥が君の教室で、他クラスの僕が君と話せるのはこの1分間。



「待ってよ」



必死に追いかける僕の声は届かない。いや、きっと届いてる。届いた上で返事をする必要が無いと判断されている。



こんな片思いが半年と少し続いてる。



相手にされない苛立ちも、階段を上る君の綺麗な横顔を見るとなんだか許してしまう。




階段と階段の水平になっているところで、僕はやっと君と肩を並べた。ここで昨日から考えていた渾身の質問を投げかける。



「体育祭なにでるの?」



どうせ玉入れだ。運動嫌いで、面倒くさがりで、友達も居ない、無愛想で顔面だけがいい君は、究極の個人戦でありサボってもバレない玉入れを選ぶと大体予想がつく。




『知らない』




胸を刺すような冷たい返事、だけど僕は知ってる。

君は冷たい上に日本語が下手なこと。だからこんなに顔がいいのに友達がいない、そして全くモテない。


この知らないは、知らないんじゃなくて、まだ決めてないってことだって。





「いつ決めるの?」


『総合の時間』


「総合の時間がいつなのって話じゃん」


『知らない』


「リレー出なよ」




なんで僕はこう、思ってもないことを口走るのだろう。

リレーに出て欲しいなんて微塵も思ってなかったし、君はどうせ玉入れだろうって分かっているのに。


僕が後悔の念に苛まれていると、階段を登りきったところで君が急に立ち止まった。そして今日初めて僕の方を向いた。



体調が悪そうに見えるほど白い肌と、くっきりとした幅の広い二重に、発色の良い唇。この顔が僕は好きだ。




『キャラじゃない』



1ミリも表情を変えずに、私の目を見てはっきりと言い放った君がおかしくて、僕は笑ってしまった。


キャラなんか気にするタイプじゃないように見えて、実は自分の根暗で陰のキャラを保守しようと必死の君はやっぱり可愛くって愛おしい。


僕があまりに笑うから、君は恥ずかしそうに頬を赤らめて早歩きで教室に向かってしまう。


先を歩く君を追いながら「リレー出てよ!」と、茶化してみる。





『やだ』



「お願い!」



『なんでそこまで』



「だって、絶対格好良いよ」



『馬鹿にすんな』



「してるわけないじゃん」



こんな言い合いが、君と僕のいつもの会話。

僕にとっては楽しくて大切なかけがえのない時間で、君にとっては面倒で他人に見られたくない時間。



君は自分の教室に着いたら僕に申し訳なさそうな顔をして、ペコっと会釈をして自分の席へと向かう。


僕はキャラじゃないなぁ、ってまたおかしくて笑った


君に聞こえるように「バイバイ!」と手を振る














「あのボクっ娘また来てるよ」

「いやっそろそろストーカー」

「ねぇ聞こえるって」

「いや聞こえるように言ってるんでしょ」

「松田くんほんとに可哀想」








帰り際、君のクラスの女の子たちの陰口と笑い声が聞こえて僕は崖の底まで落とされた気持ちになった、








僕は僕なのに、どうして、女なんだろう。





















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