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remember me

作者: ひろゆき

 remember me

 忘れてなんかいない。

 だから、信じて待っているんだ。

 あの子は覚えているだろうか。あの約束を。


 remember me


 懐かしい曲の歌詞が心に染まる。

 その言葉はどこか責められているみたいで苦しい。

 忘れてなんかいない。


 いつも乗っていた電車が到着する。

 駅の入口。改札口のそばの壁に凭れて夜空を見上げた。

 あの頃、学校の帰りに夜空の下で笑いながら歩いたのが懐かしい。

 今は違う夜空でしかないのに。

 

 remember me


 覚えていないよな。

 同じ夜空を見上げていた頃に交わした約束。


 大人になったら一緒に行こう。


 道を違えてしまえば、意味を持たないなんて分かっている。

 でも、忘れることはなかった。

 未練がましいと痛感しながらも。


 電車が駅を出ていく。

 下車した客が改札口から出てくる。

 そこに学生のカップルが腕を組みながら歩く後ろ姿が見えた。

 まだ恋人と呼ばれていた自分たちの懐かしい姿が霞んでしまう。


 冬の冷たい風が頬を撫で、空しさを強める。

 会いたい。


 身勝手だと分かっていても、想いが約束を鮮明にさせる。


 連絡をするのは簡単。

 でも、恥ずかしさと情けなさが邪魔をする。

 月を眺めてしまう。淡い光が自分を照らすだけ。

 吐息をこぼせば白く宙に留まる。

 分かっている。

 自分がどうすればいいのか。


 あのとき、消せなかった番号。心のどこかにずっと刻まれていて消すことができない。

 スマホを手に取る。

 どう思われてもいい。

 拒絶されても、罵倒されても……

 忘れてなんかいない。

 だから……


 remember me


                          了

 この物語は、前回の「REMEMBER ME」の対となる話にしてみました。前回、「待っている側」であったので、その相手としての立場にしてみました。

 場所は同じ駅。でもホームと外との違いですれ違ってしまう……

 今ならば、スマホで簡単に連絡ができますが、意地が邪魔をしてそれができない。今回、最後に連絡しようとするのですが……

 この二人のもどかしさが少しでも伝われば嬉しいです。

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