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第1話 「始まり」

 ふと気がつくと、儚く輝く夕日が目をうった。

 着陸するアナウンスが流れ、周りの乗客の多くは俄かに活気づき、それとは対照的に僕は焦燥感を漂わせていた。

 2018年7月11日、僕は前職を辞め人生初の沖縄に上陸した。

 大阪の関西空港から飛び立つ前の6月末、僕は2年半同棲していたあやこに別れを告げた。

 同僚だった彼女は、物凄く気が強い女性で、仕事に飽きてきた僕が本業である営業活動を蔑ろにして、独自に進めていた企画に狂ったように取り組む僕の姿を見て、激しく叱責をした。

 僕はそれが我慢ならず、いよいよマネーの虎にも出ていた名物社長に直談判して企画をプレゼンしたが、信頼関係がまだまだ構築されていなかったので一蹴される羽目となった。僕は何とか食い下がったがそれでも企画書にすら目を通さなかったので、その場で辞意を表明した。そして彼は、「俺の会社で培った人脈を使うことは許さないからな」という捨て台詞を吐き、その場は終わった。当然の結果と言えば当然だった。

 僕が仕事に対して、そのような態度になった背景には、スタンフォード大学でスティーブジョブズが行ったスピーチの「朝鏡の前で自分の姿を見て、自分が本当にやりたいことをやれているかを問い、もしその問いにNoが連続すれば、君が動く時がきているのだ」という言葉に感銘し、日々それを実践した結果Noが続いたことによる。それからというもの、僕は人格が変わったように独自の企画に打ち込み関係会社の方々にもアプローチしていた矢先だった。

 僕は、6月末に仕事を辞めた。良くしていただいた上司から下まで送ってもらい、その直後、ハンガリー系アメリカ人の友人のローランドと何故か一緒に初富士山を登頂。見ることが幸運な開山日の7月1日の晴れ渡る朝日を見ながら、新しい第一歩を踏み出そうと決意したものの、その後体調を崩してしまい4日間は寝たきりになった。

 僕は、あやこに嫌気がさしていた。仕事のストレスを押し付けてくるばかりか、人間否定までしてくるくせに、別れるというと泣き出す始末。会社の同僚の話も当時は聞きたくなかったこともあり、クリエイターとして非常に尊敬していたものの、彼女に別れを告げることとなった。社長も言葉も一因としてはあったが、大学時代に研究していた憲法9条の成り立ちに沖縄が深く関係していることが頭に残っていて、今まで行ったことのない沖縄に直感的に行ってみようと思った。

 7月7日、彼女に「来週から沖縄に行くことにした」という言葉だけを伝え、部屋の荷物を回収し大阪の実家に帰った。そして、2018年7月11日僕は真夏の沖縄に降り立った。

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