全ては祭りの後で
カランコロンと下駄の音が私の一歩後ろをついて歩いていた。
私は振り返る事も出来ない軟弱者で、その人の手を取る事もできなかった。人混みに押されて数センチあと数センチで肩と肩が触れ合うほどに近くに彼女がいたのに私は彼女を人混みに飲まれないように手繰り寄せる事も出来なかった。
そんな、夏祭りから何年経ったか。それから何度も繰り返された同じ夏に同じ祭り、だけど隣には君がいない。
そんな後の祭り。
あの日、人混みの中花火が打ち上がって気を取られていなければ彼女と離れ離れになることは無かったのだろうか。
あの大きな音が今年も私の胸に強く響いた。
あの祭りの後、人がいなくなった境内で再会できた時、彼女は言った。
「もう、祭り終わっちゃったね。ねぇ、君はこの祭りを一生思い出しては恋い焦がれて苦しめばいい、バカ」
そのまま彼女は私の返答を待たずに走り去った。私は彼女の一縷の涙を見逃しはしなかった。
全ては後の祭りだった。