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ぐーたらメイドと無能なお姫様〜無自覚スキンシップで女の子陥落大作戦〜  作者: りんご飴ツイン


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第九十四話 よし、やっちゃおう その四

 

 主城内の通路を歩いていた第一王女クリスタル=アリシア=ヴァーミリオンの前にふらっと顔を出すは青のネグリジェ姿のミリファであった。生地が薄いからか、ほんのり赤く染まった肌が見え隠れしており、とろんと蕩けた目元には言い知れぬ色気が滲んでいる。


 美貌を司るクリスタルでさえも心拍数が上昇するくらいに。他者を惹きつけ、誘惑する美しさ……とはまた違う。美貌を司るクリスタルだからこそ、目の前のそれが外見や中身が醸し出す魅力以外の『何か』があると読み取れたのだろう。


 その上で。

 第一王女は口元を綻ばせる。


「くふふ☆ 聞いてはいたけど、予想以上よねぇ。こんなの見せられたら、やる気が出るってものだよねぇ」


「あークリスタル様だぁ。キスしよーよキスう」


 第一王女クリスタルと第七王女が側仕えミリファ。他者の心に干渉し、振り回す両雄がついに激突する。



 ーーー☆ーーー



「『風の書』第九章第二節──風神ノ鉄槌、()()()


 ゴッゾォン!! と上空より小高い丘を丸々呑み込むほどの規模の漆黒の風槍が六発同時に具現化、真っ直ぐにエリスたちに襲いかかる。


 魔女モルガン=フォトンフィールドとの戦闘でさえも『同時に』六発もの第九章魔法が襲いかかるようなことはなかった。総合力は別として、単純な魔法力でいえばかの魔女が振るっていた力よりも上と考えられる。


 女王シンヴィア=リギスス=アンリファーン。

 魔法の才示す『褐色』を纏う、リギスス国が誇る女王が弱敵なわけがない。そんな怪物を相手に魔力を使わない、なんて縛りプレイで勝てるわけがないのだ。


「『水の書』第九章第十節──水泡爆滅ってね!」


 魔法陣展開、ぷくぷくぷくっ!! と金髪バニーガールの周囲にその身を覆い隠すほどの漆黒の泡が出現する。


 ばっ! と金髪バニーガールが上空の漆黒の風槍を指し示すと共に泡が触手のように唸り、射出される。六にわかれた泡の触手はみるみるうちに体積を増大させ、激突の時には丘を呑み込むほどの風槍を超える規模と変貌していた。



 ババババババババゴォンッッッ!!!! と爆音が連続する。まるで一つの泡の起爆に誘発されるように、次の泡が爆発。連鎖する爆発が天を覆い尽くす。



「へぇ。『特筆戦力』に指定されていないはずでしょーが……リギスス国の調査網に引っかかることがなかった強者、ね。貴女、名前は?」


「マキュア。ただの通りすがりの冒険者だよねっ」


「ふ、ふふっ。今日は運がいいでしょーよ。こんなにも優れた手駒を複数入手できるでしょーから」


「ん? 此方は頭脳プレイなんてさっぱりだから、遠回しな言い回しなんかは理解できないけど──」


 なんともなしに、それこそ適当な調子で。

 首さえ傾げて、マキュアは言う。



「戦力差が絶望的なのが理解できてないわけないし、助っ人やってくるとか? だから未だに逃げずに呑気に余裕ぶっている的な???」



 ぴくり、と女王シンヴィアの眉が動く。

 その間にも金髪バニーガールは続ける。


()()()()()()()()()()()()()()()、そんなのも理解できていないわけないしね」


「少々驕りが過ぎるようでしょーよ。我がスキルにて幸福に隷属させる前に身の程ってものを思い知らせてやるでしょーよ!!」


 ブォン! と四重の魔法陣が七つ発生する。

 それは、すなわち、


「『極の書』第九章第八節──白閃、()()()


 カッッッ!!!! と七の純白の閃光が顕現する。先と同じ第九章魔法、しかし先の比にあらず。


 単なる属性の一つである風と、四大属性を掛け合わせることで紡がれる『新たな領域の構築』を可能とする純白とでは次元が違う。


 それが一気に七つも、である。

 魔女モルガン=フォトンフィールドが具現化した純白がどれだけの力を発揮していたかを思えば、その驚異のほども分かるだろう。


 だから。

 だから。

 だから。


「『魂魄技術(ソウルアーツ)』──」


 エリスの口より紡がれしは魂を消耗する秘奥。

 これ以上魔力を使えば、魂が砕け散る──はずなのだが、エリスの顔に悲壮感はなかった。


「スキルで『復元』ってね」


 パァ、とエリスの全身を淡い光が包み込んだ瞬間であった。ゴッオオ!! と噴き出すは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であった。


 炎と風。

 その極致。


「──『全力全開(フルバースト)』」



 音も光も消えた。

 炎や風という形すら溶けた、純粋なエネルギー波が七つの純白の光をかき消した結果であった。



 ゴギッと首を鳴らし、炎と風を操るエリスの表情に苦悶の色はない。七つの純白を吹き飛ばす、という破格の力を出力したというのにだ。


 ブァ、と新たに淡い光がエリスを包む。

 その隣でマキュアがぴこぴことウサミミを揺らしながら、


「スキル『魔力治癒』。魔力を元の値に戻すスキルだね。つまり魔力を全回復させるものってことだね」


 魔力の回復。

 言い換えれば、それは源たる魂の回復とも言える。


 ということは、だ。

 これまで魂が全損しないよう加減しながら消費していた時と違い、()()()()()()()()()()()()()()()()()()こともできるということだ。


 これまでは百から十を消費することで魂の崩壊を防いでいたが、これからは百から九十九を消費することもできるのだ。


 それだけ出力できる力も増大する。

 ゆえに『全力全開(フルバースト)』。生存本能が壊れたエリスだからこそできる、魔力の多量消費による量の暴力であった。


「ふ、ふふ。なるほど、想像以上の素質があったようでしょーね。だけど、それでも届かなかったでしょーよ。我が純白を打ち消すのが関の山だったならば、勝敗は分からないでしょーよ」


「……はぁ」


 対してエリスは呆れたようにため息をつくだけだった。ブォン! と新たに四重の魔法陣が七つ展開されたのを見ても、侮蔑が消えることはなかった。


「『極の書』第九章第九節──純白奏法、()()()


 何かが放たれたのだろう。

 その前に魔法陣の出力口を覆うように漆黒の泡が展開、破裂したからそれが何であるかは分からなかったが。


 そう、視認するまでもなく、粉砕されたのだ。

 炎や風ではなく、泡で。つまりは水系統魔法でだ。


 であるならば、エリスではない。『炎上暴風のエリス』に水の力は備わっていないのだから。


 つまり。

 つまり。

 つまり。


「駄目だね、やっぱり小難しいのはわっかんないねっ。力の差が理解できないわけないし、最悪理解できていなかったとしてもさっき教えてやったしね」


「な、なん、何が……」


()()()()()()()()()()()()()()()、そう言ったよね?」


 エリスの炎風と女王シンヴィアの純白は互角の力を発揮していた。ゆえに、可能なのだ。エリスにできるならば、マキュアにもできる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()マキュアであれば、女王シンヴィアの純白を相殺できないわけがない。


 エリスとマキュア。

 女王シンヴィアと同格の力を持つ者が二人。

 単純に考えて二倍の戦力差があるということだ。


「テメェの敗因は一つ」


 魂の崩壊という枷から解き放たれた炎風の怪物は言う。淡々と、突きつけるように。


「ミリファに手を出したことよ」


「……ッッッ!!」


 純白は放たれたが、どうしようもなかった。

 女王シンヴィアの必殺はマキュアの水泡が相殺、ひらけた空間に突っ込んだエリスが無防備の女王へと拳を叩き込み、その意識を刈り取った。



 ーーー☆ーーー



 女王のスキルは幸福感を与える『だけ』である。心情の改変みたいに『形を変える』ものであれば、術者を倒したり、術者自身に解除させることで『元の形に戻す』こともできただろう。


 が、今回は違う。

 与えた幸福感に執着し、その消失に怯え、依存する……とするなら、幸福感を奪っただけで状況は改善しない。『元の形に戻した』としても、依存性の高い幸福感にミリファが執着してしまうのだから。つまりは幸福感に囚われた時点で手遅れなのだ。


 ミリファに手を出した女王シンヴィアは倒すことができた。だからといってミリファを救えるとは限らない。

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