やっと町に到着しました。
それからお礼に洞窟で見つけたという水晶をくれるというけど、さすがに高価すぎて断った。
子供にたかる大人とか自分のメンタル的にもNGだった。
なので少しばかりご飯をご馳走になって洞窟を出ることにしました。
AI:「目的地周辺に到着しました。音声案内を終了します。」
カーナビのような案内を受けて見上げると、まるで中世のヨーロッパのような町がそこにあった。
建物はレンガ造りで宿屋もあるみたいだ。
町は木製の柵に囲まれてはいるもののセキュリティ的には心もとない感じだ。
柵が無いところが入り口らしく、門番みたいな人もいなくてすんなり町に入れた。
とりあえず宿を借りるにもお金は必要な訳で、仕方なく人づてに聞いた換金所に向かった。
換金所には受付がいくつもあり、町民専用の受付、VIP専用の受付、そしてその他の受付があった。
どうやら換金率はVIP、町民、その他の順で、用意されているカウンター席もその序列に従っているようだった。
つまりどういうことかと言うと自分が座る椅子はボロイということだ。
30分ほど待ってやっと自分の順番が来た。
とりあえず、鉱石や薬草あと調合した薬品を鑑定してもうらことにした。
40代近い偉そうな小太りの所員だったが、薬品を見た瞬間に目の色を変えていた。
所員:「この薬品はどこで手に入れました?」
偉く驚いた様子で訊いてくる。
エイタ:「自分で調合したものですけど...」
あっさりと答える。
役人:「ちょっとお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」
急に丁寧な口調で所長らしき人物の机に駆けつけている。
そしてすぐに異変を感じた所員たちが集まっている。
急ぎ歩きで所長らしき人物が駆けつけてくる。
所長:「この薬品の調合をされたのはあなたで間違いないですか?」
信じられない様子で訊いてくる。
エイタ:「そうですけど...」
またしてもあっさりと答えるけど、少し不安になってきた。
所長:「もしかして王級調合師の方でしょうか?」
エイタ:「違います、田舎でひっそり暮らしている調合師です。」
それからVIP用の個室に案内されて商談を進めたけど、現状この薬品の価値に見合う金貨を用意できないということで、足りない分は代わりにVIPを示す身分証の発行と最高級の宿の提供で落ち着いた。
ほんの数十メートル先の宿までなのに馬車まで用意してもらい移動し、そして宿についた。
宿の受付ではじめは身なりを見て怪訝な表情をされた。
けれど発行された身分証を確認すると急に緊張した様子で部屋まで案内してもらえた。
なんと数か月分の宿泊費はタダで利用できるらしい。
部屋でひと段落してシャワーを浴びた。
シャワーやトイレは魔法で動いているらしく快適な生活ができそうだ。
体力は限界まで上げているから睡眠は必要ないけどやることもないし、目をつぶってみた。
数時間ほど眠ろうと頑張っていたけど、眠れないから体力を下げてみようかなと思った瞬間、弾けるような金属音。
目を開けると黒いマントを着た怪し人物が枕元に立っている。
するとすぐに踵を返して窓から飛び出していく。
またこのパターン、分かりますまた刺されたんですね...
分かってますよ今日は二回目ですもの...
同時にドンドンと扉をたたく音、そして恐る恐る開けてみると受付の人だった。
受付:「お客様、大丈夫でしょうか?」
慌てた様子で訊ねてくる。
エイタ:「はい、別になんともないですけど...」
受付:「実は先ほど窓から怪しげな人物が侵入したのを目撃してすぐに駆け付けました。」
やっぱりVIPだけあってセキュリティは意外としっかりしているのかもしれない。
そして部屋の中を調べてもらう。
さすがにナイフで刺されたけど、はじき返しましたなんて言えないので、たまたま懐にいれていた鉱石がはじいたことにした。
ナイフにはこの町に潜んでいる柄の悪い集団のシンボルマークが刻まれており、突然やってきたVIPの客ということで金目当てであるという結論になった。
何度も頭を下げ、切腹でもしそうな勢いの受付さんを宥めつつ、命に別状はなかったんだし大丈夫と伝えてこの場は収めた。