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クルイアイ  作者: くらうでぃーれん
2・無関心と殺意
28/37


 ついカッとなって、あの女を殺しそうになってしまった。

 せっかく色々準備して、ユイの為にあの男を殺してあげようと思っているのに、危うく自分の手で計画を頓挫させてしまうところだった。


 だけど、あの女も悪い。いや、あの女が全部悪い。

 だって言うに事欠いて、ユイがマナのことを嫌っているなんて言い出したのだ。最低だ。言っていい冗談と悪い冗談がある。


 ユイは自分のことをいつでも必要としてくれているし、愛してくれている。これは疑いようのない事実だ。それを否定するなんて、あり得ない。そんなことを言うヤツは、死んでしまえばいいんだ。

 もっとも、冗談だろうが本気だろうが否定しようが肯定しようが、ユイとマナの関係に口出しすること全てが許せないのだけれど。さらに言うなら口出ししなくても、ユイ以外は全部死んでしまえばいいのだけれど。


 マナは部屋の中で1人、ユイとおそろいのマグカップを揺らしながら、バイトに行っているユイの帰りを待っていた。ちなみに、ユイが居ない間マナはユイのコップを使っている。


 今日はユイのバイト先には行っていない。調べものもあったし、あまり気も乗らなかったから。

 ユイには会いたい。だけどあそこに行くと、ユイ以外のたくさんの人間とも会わなければならない。なによりあそこには、あの女もいるはずだ。今は出来るだけ会うことを避けないと、顔を見たらまた殺してしまいたくなるかもしれない。


 そう考えると、再び怒りと共に殺意が湧いてくる。どうしてあんな女のために、ユイに会うことを控えなければならないのか。やはりあんな奴、殺してしまいたい。殺してやりたい。殺したい。殺したい。殺したい。


 殺したい。


 最近あの男を殺すことばかりを考えているせいか、そう考えることに以前に増して躊躇いが無くなってきている。別に悪いことだとは思わないが、しかし今は良くない。まずは自分の怒りではなく、ユイを優先してあげたいのだから。


 ユイに会いたい欲求が募るほど、あの女に対する苛立ちも募ってゆく。感情を抑えきれず、ローテーブルに拳を叩きつけた。マグカップが落ちそうになり、床に避難させてから額をテーブルに叩きつける。


 ユイと違って、マナは感情を抑制するのは得意ではない。逆にいつも溢れさせがちで、それが原因でユイを困らせる時があることだって分かっている。

 けどそれはいつだって、2人の世界に踏み込んで来ようとするヤツらが悪い。ユイだってそれを分かっているから、呆れはしても怒りはしないんだ。


 考えれば考えるほどにイライラする。自分はただユイと一緒にいたいだけなのに、余計な邪魔が入ってばかりで2人の世界に浸ることを許さない。今の怒りの対象はとにかくあの女だ。腹が立つ。殺したい。殺したい!


 ――だけど、今はダメだ。


 どうにか暴走する感情を抑えつけようと、ベッドに寝転がって枕に顔をうずめた。息を吸い込むと、ユイの匂いが鼻腔いっぱいに広がった。


 それだけでマナの中の怒りは鎮まり、代わりにユイへの想いで満たされる。

 やはり、自分の全てはユイで構成されているのだろうと思う。だからこうしてユイの一部を感じるだけで、気持ちが静まってゆく。


 ユイはマナだけのもので、マナはユイだけのものだから、マナの全てはユイの為にあるものでなければならない。

 そう考えるとマナの思考はさらに落ち着きを取り戻す。


 そうだ、やっぱりまずは、ユイの為に殺してあげなくちゃいけない。


 そうと決まれば、今日のところはいつも通りユイを迎える準備をしよう。帰ったらすぐ飲めるようコーヒーを淹れておこうかと思ったが、最近は帰りが少し遅れることもあるので淹れ時が計りづらい。仕方ないから帰ってからでいいかなと、ぎゅっと枕を抱いて天井を見上げた。


 少しずつ、少しずつ、準備は整い始めていた。

 必要なものは揃ったし、必要な情報も手に入れた。ユイが居ない時はインターネットで調べたり図書館に通ったりして、人体の構造などについても把握した。どこにどの器官があって、どこを壊してやれば致命的な傷になるかも、おおよそ理解したつもりだ。


 だから後、重要なのはタイミング。それだけが合えば、マナのやるべきことは終わる。

 別に今は、それほどワクワクはしていなかった。もちろんユイの笑顔が見られるかもしれないというのは楽しみだけれど、それほど特別なことをするのだという意識はないから。


 いつもより、少し変わったことをするだけ。だからマナには恐怖も高揚感も無い。全くと言っていいほど、気を張っていなかった。


 そして――


 ××× ×××

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