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クルイアイ  作者: くらうでぃーれん
2・無関心と殺意
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 当然というべきか、マナはユイと何度となく体を重ねている。

 そしてこちらも当然というべきか、きちんと避妊は行っている。ただその方法は一般的な、いわゆるゴムを使ったものではなく、経口避妊薬(ピル)を用いた方法を採用していた。


 なぜ、などと疑問を抱くのは無粋だろう。理由など1つしかない。ユイと直接混じり合いたいからに決まっている。そのためにはこれが一番いい方法だろうと思ったから使っている。どこまでも単純な理由だ。


 ちなみに、ピルは行為の後に飲むものではなく、行為の有無に関わらず毎日同じ時間に服用するのが基本的なピルの服用方法である。

 マナはそれを朝食後と決めており、いつも通りの時間に薬を飲んでいると、ユイがじっとその様子を見つめていた。


「どうしたの、ユイくん」


 ユイに見つめられるのは好きだ。同じくらい、見つめるのも好きだけれど。


「マナってさ、子供欲しいとは思わないの?」

「いらないよ」


 考えるまでもなく、即答した。


「私が好きなのはユイくんだもん。子供が出来たってそれのことを好きになんてなれるわけないし、ユイくんとの時間が無くなっちゃうって思ったら絶対にイヤ。だからいらない」


 マナは笑顔で、いつも通りユイ以外の全てを否定する。


「私が欲しいのはユイくんだけで、それ以外は何もいらないよ」

「そっか」


 ユイもそれに対して何を言うでもなく、胸に飛び込んでいったマナを静かに受け入れてくれた。


「ユイくん」

「ん?」

「呼んだだけ。ユイくんの名前呼ぶとね、幸せな気持ちになれるの」


 同じくらい、名前を呼ばれると幸せになれるけれど。


「ユイくん、ユイくん」


 名前を呼びながら、何度もキスをする。唇だけじゃない。顔や体にも、肌という肌に唇と舌を這わせる。


「ユイくん、ユイくん、ユイくん、ユイくん、ユイくん、ユイくん、ユイくん、ユイくん」


 何度も、何度も何度も、何度も何度も何度も何度も何度も、最愛の人を呼び続ける。呼び続け、味わい続ける。ユイは何も言わず、されるがままマナを受け入れ続ける。


 やがてユイはマナの動きを止めるようにぐいと引きよせ、抱き締めた。マナは抗うことなく、その腕の中に収まる。


「ユイくん以外、みんないなくなっちゃえばいいのに」


 ユイの温かさを感じながら、ユイへの愛しさを膨らませながら、マナは夢見心地で呟いた。

 誰もいなくなれば、誰とも関わる必要はなく、誰にも邪魔されることなく、一日中、一年中、一生、ユイと一緒に居られるから。


 それはなんて素敵なことだろう。ユイだけを見つめて、ユイだけに触れて、ユイだけを愛しながらずっとずっと、2人きり。考えただけで胸が熱くなって、幸せな気持ちになった。


 そしてユイはマナを抱えながらぼんやりと呟くように、だけど確実にマナの耳に届かせるような声音でぽつりと、そう言った。


「そうだな。みんな、いなくなればいいのに」


 珍しく、ユイがはっきりとした同意を示した。いつもは漠然と、さして感情を込めることなく相槌を打つ程度なのに。

 ほんの一瞬だけマナは驚いた顔を浮かべて、しかしすぐに恍惚とした笑顔を浮かべる。ぎゅうとより強くユイに抱きついて、体全部で喜びを表現した。


「うん、うんっ! やっぱりユイくんもそう思ってるよね。私は知ってるよ、ユイくんも、私以外いらないって思ってるもんね」

「うん、そうだな」


 今度はいつも通りの、適当にも聞こえる曖昧な返事。だけどマナは全く気に留めない。

 ユイが言葉少ななのは、それ以上話す必要がないから。たったのひと言でも、ユイが伝えたいことはマナには全て伝わる。本当は何も言わなくたって全て分かってしまうけれど、マナはユイの声が聞きたいから、ユイはそれをちゃんと分かってくれているから、少しだけでも言葉にしてくれる。

 だからマナには、ユイの気持ちが十分に伝わっていた。


 ユイのことが愛しくて、愛しくて、愛しくて、愛しくて、愛しくて、仕方がない。

 ユイが望むことは、何でも叶えてあげたい。

 ユイが望む世界なら、それはマナが望む世界でもあるから、何をしてでもその世界を作り上げたい。その世界に浸りたい。


 だからマナは、ユイの為にその一歩目を踏み出そうと思った。それが今まさにマナが準備を進めていること。

 マナはぎゅっとユイに抱きついたまま、その温かさに浸った。ユイの胸に額を押しつけて、体全部でユイを感じる。


 ――だから、


 その時ユイがうっすらと笑みを浮かべていたことを、マナは見ることができなかった。


 ××× ×××

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