58話 リンクス王子様は...
恐怖の夜が過ぎ、朝が来ました。
シャベールお兄様はいつもは寝起きも良く、早起きをしていますが、まだ寝ています。
やはり疲れているのですね····。
私はシャベールお兄様をまじまじと見ました。
綺麗な顔····それに精悍さがでました。
こんなに綺麗でカッコいいのに、私には残念な人にしか見えないのは何故でしょう?
等と考えていると、ピィーちゃんが
「クルルルー」
早く起きろと催促しにきました。
「ピィー、私たちの邪魔をするな。」
あら、シャベールお兄様は起きていたようですわ。
「おはよう、フレア」
シャベールお兄様は笑顔で挨拶をしてくれましたので、私も笑顔で
「おはようございます。シャベールお兄様。」
と返しました。
それからシャベールお兄様には、早く起きましょうと促しましたが、まだ起きたくないと子供みたいに駄々をこねたので、嫌いになります!と言うとしぶしぶと起きてくれました。
そして
「フレア!朝風呂しよう!」
とか言ってきたので、私は無視してトイレに行きました。
あまり期待はしてなかったのでしょう。シャベールお兄様はしつこく誘ってこず、
「部屋に戻って着替えて、食卓に行くよ。」
と一言声をかけて、私の部屋から出ていきました。
ホッとしました。
シャベールお兄様の妹愛は凄いですわ····。
とても嬉しいですが、ちょっと行き過ぎてる気がします。
私も着替えを済まし、食卓へ向かいました。
お父様が居ませんでした。
どうやら帰れなかったようです。シャベールお兄様のせいかしら?
アンナ御姉様は、ランベルト様が帰国してからずっとあちらで住んでいます。
赤ちゃんのこともあり、ランベルト様がそれを望んだとの事でした。まだ正式に結婚は出来ませんが、既に側妃として扱われているようです。
寂しいですが、嬉しいことですもの!
ですから食卓にはお母様、ノーレン御姉様、リリアン御姉様が座っていました。
ノーレン御姉様はつわりはあまりなく、少食にはなりましたが普通に食事が出来ていました。
そこへシャベールお兄様が登場しました。
「おはよう。」
「あらシャベールお兄様は帰ってらしのたのね。」
ノーレン御姉様はリリアン御姉様に聞いていたのか、さほど驚く様子もなくシャベールお兄様に話かけてました。
「ああ。昨日帰ってきたよ。」
「シャベールお兄様!昨日の夜の態度はあれ何ですの!?」
リリアン御姉様は昨日のシャベールお兄様の態度が気に入らなかったようです。
朝食は三人で口論しながら進みました。
食事してすぐに、シャベールお兄様は王城に向かわれました。
私も気合い入れてリンクス王子様に会いに行くことにしましょう!
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王城に着き、リンクス王子様に取り次ぎをお願いし、待っている最中にアンナ御姉様がやってきました。
アンナ御姉様はとても元気そうで、とても幸せそうでした。
「アンナ御姉様、お身体はどうですか?」
「ありがとう!つわりがなくなったら凄く楽になって、食べる食べる!このままだと太っちゃうわ!」
確かに、つわりの時はほとんど食べれなかったのでかなり痩せましたが、今はほんの少しふっくらして元に戻ってきてる気がしますわ。
昨日はランベルト様も部屋に戻られなかったようでした。
多分徹夜で会議をしてたとアンナ御姉様は言っています。
大変ですわね·····。
リンクス王子様の方も用事があり、しばらく時間があるので帰ろうかと思いましたが、アンナ御姉様が「リンクス殿下がくるまでお話したい!」と言ったので、そうすることにしました。
いっぱいお話しました。やはりアンナ御姉様は家にはもう戻らないとのことでした。ただもう少しお腹の赤ちゃんが安定したから、荷物の整理に何日間か帰ってくると言ったので楽しみです。
お昼もアンナ御姉様に誘われて一緒に食事をしました。
リンクス王子様が部屋にやってきたのは、私が王城に着いてから六時間は経過した後でした。
「フレアすまない!」
リンクス王子様は焦ったように入ってきました。
少し青い顔色をされています。大丈夫でしょうか····。
「いえ、お忙しいのに申し訳ございません。」
リンクス王子様は首を左右に振り
「いや、そんなことないよ。」
こちらへやってきました。
「フレア、私はこれで。リンクス殿下も失礼します。」
アンナ御姉様は軽くお辞儀をして出ていこうとしました。
「アンナお義姉さん、段差には気をつけてくださいね。」
リンクス王子様は優しい一言をアンナ御姉様に声をかけてました。
アンナ御姉様は、はにかむように微笑んで
「ありがとうございます。」
とお礼を言い部屋から出て行きました。
リンクス王子様はアンナ御姉様のことを
「お義姉さん」
と呼んでいました。不思議な感じがします。
リンクス王子様は椅子に座り
「フレアの僕に用事とは?」
と切り出してきたので
「返事をしにきました。」
と私の一言でリンクス王子様は真剣な顔つきになりました。
「私はローラン様と婚約を正式にしようと思います。」
リンクス王子様はガックリと肩を落とし
「···そうか····。」
「リンクス王子様にも正直惹かれました。小さい時から私のことを思ってきてくれたなんて本当に嬉しかったですわ。しかも妻は私一人でよいとも。きっとリンクス王子様は浮気や女遊びなんてしないだろうなとは思いました。きっと私の理想を実現してくれるのはリンクス王子様だと思っています。ですが、私の気持ちがローラン様がいいと言っているのです。浮気をするかもしれません。ですがローラン様が好きなのです····申し訳ございません。」
私は頭を下げました。
リンクス王子様、少し考えて
「残念だよ····本当に好きだったよ。後悔しても知らないよ···と言いたいけどこちらも状況が変わったんだ。」
え?
「先ほどの会議で、カンチス王国を治めることになった。」
「ええー!!それは本当ですの?本来なら····」
ランベルト様の役目になるのでは····?
「ランベルト兄上は義姉さんのこともあるのと、ムーフォンス兄上のこともあるからこの国に止まりたいと言ってきたんだ。ムーフォンス兄上をあちらへやる訳には行かないし、何より向こうの姫を一人正妃として迎えなければならなくなったんだ。」
まあ····
「その時点で、フレアを正妃に出来なくなった。だけど、それでも僕のそばいて支えて欲しいと言うつもりだった。形は側室でも愛してるのは君だけと言うつもりだった。でもはっきり振られたたから気持ちを切り換えないとね。」
「リンクス王子様····。」
「凄く不安だけど、良い国王に成れるように頑張るよ。」
「応援してますわ!」
リンクス王子様なら、頭の回転もいいですし、国民のことを考えて行動できる方だと思いますし、統率力もあると思います。きっと良い国王様と成られるでしょう!
リンクス王子様はいたずらっ子な顔して
「遊びにきてね。」
と言ってきました。
私は笑顔で「はい」と答えました。
「出発は追悼式が終わって1ヶ月後の予定日なんだ。補佐にサンブリエ大公爵とシャベール殿がギオレット殿のどちらが一緒に来てくれることになっている。」
シャベールお兄様かギオレットお兄様のどちらかが遠くへ行ってしまうのね····。
「今のところギオレット殿が有力だ。シャベール殿はアンドリエ家の跡取りだからね。ただ、ギオレット殿は婚約者がいるからどうするかで今も議論している。」
「······。」
「フレアありがとう。少し疲れたからこれで部屋に帰っていいかな?」
リンクス王子様は青い顔色で言ってきたので、了承を言い私も屋敷へと戻って行きました。
その夜は、お父様もシャベールお兄様が揃って帰ってきました。
お父様は疲労感が漂ってました。
そして食事中に、ギオレットお兄様がリンクス王子様の補佐として行くことが決定しました。
家族が離ればなれになると思うと泣けてきました。
追悼式にはギオレットお兄様も参加するので、もう少しで帰国します。
今はハヤバトを使い決定事項の報告をしたそうです。
ギオレットお兄様、頭抱えてるだろうな····。
私もリンクス王子様のことは、はっきり断りましたと報告しました。
お父様は
「そうか。」
の一言だけでした。シャベールお兄様は
「それでいい!」
と喜んでおられました。
ノーレン御姉様とリリアン御姉様は「勿体ない」と言っておられましたが、私は後悔はしておりません。
リンクス王子様には幸せと、お国の再建や統治が順調にいきますようにと、遠くこの国から応援しておりますわ。
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国全体で追悼式を行い(おこな)ました。
その日は沢山の人の涙で溢れかえっていました。
幸い私の周りには戦死した人は居ませんでしたが、戦死した家族のことを思うとやりきれません。
戦争は悲しみしか生まないもの。後世の為に絶対に戦争はしてならないと教育していかないといけないと実感しました。
追悼式から二週間くらいで、リンクス王子様、サンブリエ大公爵様、ギオレットお兄様が旅立って行きました。
ギオレットお兄様の婚約者であるスミレ様も、付いて行くことになりました。
ギオレットお兄様は結婚まではスミレ様の為に遠距離恋愛をするつもりでしたが、
「私は婚約者です!ギオレット様に付いていきます!」
と断言をし、さっさと荷物の整理をしたとのことでした。
ギオレットお兄様は泣いて喜んでいました。
一層のこと結婚すれば良いのにと言ったのですが
「兄上よりも先に結婚は出来ない」
と言い張り、結婚せずにスミレ様を連れていくことになりました。まあ、事実婚ってやつですわね。
シャベールお兄様の結婚を待ってると、スミレ様はお婆さんになってしまうのでは?と不安は隠せません。
ともあれ、私の周りは大きく変化をしていきました。
お読みくださりありがとうございます。




