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54話 出発

 

 その日の夜は、お父様もお兄様達も帰ってきませんでした。


 次の日には魔法新聞で大々的に

「カンチス王国が攻めてきた!」

 と書かれてありました。


 学校に行ったら、案の定大騒ぎになっていました。


「フレア様!聞かれました!?」


 ゴシップ好きのキャロルがすかさず私の所にやってきました。


「新聞に書いてあった通りのことしか知らないわ。」


「そうですの···フレア様なら何か情報もってるかと思いましたのに。」


 キャロルはがっかりしてます。

 でもまだ私も詳しいことは知らないですわ。


「ですが、我が国、オーディフェンス王国は私の父、ダン・フィン・アンドリエもいるし、お兄様方もいらっしゃいますから無敵ですわ!」


 私がそういうと、いつの間にか周りのクラスメイトに囲まれていて、皆安心したように頷いていました。


 戦争の関係なのか、その日の授業は午前中で終わりました。



 その日の夕方に出陣する人材が発表されました。

 今は家族全員、応接室に集合しています。


 基本的に貴族の跡継ぎは前戦には行かないことになっています。


 まずはお父様はこの国の宰相であるのと、最後の砦として国に残ることになりました。


 ノーレン御姉様の婚約者のカイル様は跡継ぎの為、この国に残ることが決定したとのことです。

 ノーレン御姉様はほっとした顔をされてました。


 ランベルト様は前戦に行くことになりました。彼は第二王子、仕方ないことでしょう。アンナ御姉様は涙を浮かべています。

 リンクス様はまだ幼いので出陣は出来ないそうです。


 バーバス様は跡取りで、ムーフォンス様の側近の為居残り組に決定したそうです。リリアン御姉様は嬉しそうにしています。


 そしてギオレットお兄様は出陣に決定していましたが、


「私が行く。」

「兄上!何を言ってるんですか!?兄上はアンドリエ家の跡取りです!私が行きます!」


「ギオレット、お前には婚約者がいるだろう。その点、私には幸い婚約者は居ない。万が一のことがあっても、跡はお前が継げばいい。悲しむ人は少ない方がいい。それに私は強い。死ぬつもりないよ。負けないさ。」


 シャベールお兄様はそう言って、お茶目にウインクをした。


 ····シャベールお兄様····


 ギオレットお兄様は少し涙を浮かべて


「兄上、すみません····。」


 と頭を下げました。それをシャベールお兄様は優しく頭をポンポンとしていました。


 そして····ローラン様も跡取りであるのに出陣が決まったそうです····。


 もともと辺境でカンチス王国の兵士とはやり合っていたのもあるのと、アンドリエ家以外で次に強いのはローラン様だからそう。戦争は長引くと大変になるのは、前回の大規模な戦争で身に染みて分かっているから····。

 ローラン様は2つ返事して出陣が決まったそうです。


 総監督はサンブリエ大公爵様と決まりました。


 サンブリエ大公爵様は西へ、シャベールお兄様は北、ローラン様は南、ランベルト様は東の大将として出陣するそうです。



 出陣は2日後と決定しました。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 大勢の人が王城の中にも外にもいっぱいで溢れかえっています。

 大勢の人達が見送りに来ているのです。泣きながらお別れを言っている人を多く見かけました。


 ローラン様の所には誰も見送りに来てませんでした。以前少しお聞きしたのですが、余り仲良くはないとおっしゃってました。

 だからアンドリエ家は家族皆仲良くしてるから羨ましいと言ってました。ローラン様はそんな家庭を作りたいと····。


 私は激励しようとローラン様を探していました。

 するとローラン様はシャベールお兄様と一緒におられました。

 ちょっとしたらシャベールお兄様は沢山の女性達に囲まれてしまいました。

 一人になったローラン様の所に行きました。


「ローラン様····。」


 私が話かけるとローラン様は笑顔で


「フレア、行ってくるよ。」


 その辺に行くみたいに言ってきました。

 私は思わず俯いてしまいました。


「フレア、よく顔を見せてよ。暫くの間、また会えないんだから。」


 私は恐る恐る顔を上げました。


「フレア、涙を浮かべて···笑って行ってらっしゃいって言って欲しいな。」


 ローラン様は指で私の涙をぬぐいました。

 私は涙を浮かべていたなんて····通りで視界がボヤけていると思いましたわ。


 ローラン様が私の顎を持ち上げ、顔を近づけてきました。

 私は目を閉じてキスを受けました。


 ローラン様は私を抱きしめて


「必ず勝って生きて帰ってくるよ。無事に帰ってきたら最後のプロポーズをするつもりだ。」


 最後のプロポーズ·····


「しつこいって言われるだろうけど、それで最後にするから···よく考えて答えを出して欲しい。どんな結果でも覚悟は出来てるから。」


 ローラン様·····。


 ローラン様は私の抱擁を解き、もう一度キスをしてきた。

 その時に


「兄の前で堂々とキスとはやるな。ローラン。」


 シャベールお兄様がニヤリとして立っていました。

 あれ?先ほどの女性の軍団はどこへ?


「当たり前だろ?フレアと私とのことなんだからお前には関係ないさ。最後かもしれないしな····。」


 最後·····私はその言葉に胸を絞めつけられました。


 シャベールお兄様はため息をつき、私の方を振り向いた。


「フレア、私も無事に帰ってきたらご褒美が欲しいな。」


 にっこり微笑んで催促してきました。


「ご褒美ですか?」


「うん。無事に帰ってきたら二人きりで、お風呂を一週間に二回は入るってご褒美が欲しい。」


「「えっ!?」」


 シャベールお兄様ったら!!


「シャベール!お前何言ってるんだ!妹と入っても楽しくないだろ!」


 ローラン様はすかさず突っ込みをいれてます。


「いいや。楽しくて仕方がない。兄妹仲良くするって話なんだからお前は入るなよ。」


 ローラン様は呆れた顔をしてます。

 当たり前ですわね·····。


「シャベールお兄様、他のならどうですか?お菓子なら毎日作りますわ!」


 お風呂なんて嫌ですわ!妥協案を言ってましたが、やっぱり却下されました。


「そんなのローランとかのついでになるだけだ。私はフレアと入りたいんだ。兄妹全員とか、三姉妹一緒とかも却下だぞ。」


「兄妹全員って····。」


 ローラン様はドン引きしてます····。


「フレアが約束してくれたら、物凄くやる気になるんだけどな·····。きっと死にかけても、生きて帰ったらご褒美が待ってると思うと、地獄に落ちようと這い上がって見せるよ···ふふふふ。」


 シャベールお兄様は不適な笑いをしてます。


 シャベールお兄様····少し怖いですわ。


 私は凄く考えて····物凄く考えて答えを出しました。


「わかりました。ですが週に一回ならいいです。それがダメならお約束はなしですわ!」


 私の言葉にシャベールお兄様は少し考えて


「わかった。それで手を打とう!」


 そう言って笑顔になり、スキップをする勢いで自分が率いる部隊の所へ向かいました。その時に笑顔でフェロモンを振り撒いていたので、数名の女性がフラフラとシャベールお兄様の跡をついていってます。


 ····ちょっと早まわったかしら····。


「兄上はヤバい道に行くんじゃないだろうな····。」


 いつの間にか後ろにギオレットお兄様がいました。

「本当にあの方、フレア愛ヤバいと思いますわ。」

 ノーレン御姉様の声も聞こえました。振り向いたら

 その後ろには三姉妹が揃っていました。


 いつの間に····。


「フレア、行ってくるよ。」


 ローラン様も自分の部隊へ向かおうとしていました。


「ローラン様!必ず帰って来てくださいませ!」


 ローラン様の手を握り言いました。


「もちろんさ。」


 ローラン様は軽く私のおでこにチューをして、軽く手を振って部隊へ向かいました。


 私はローラン様が見えなくなるまで、ずっと見てました。


 ふと、思いだし


「アンナ御姉様、ランベルト様の所へは行かれないと!」


 アンナ御姉様は首を横に降り


「大丈夫よ。今朝、ちゃんとお別れを言ってきたわ。」


 アンナ御姉様は、ランベルト様の出陣が決まった日から、ずっとランベルト様の所で寝泊まりしてました。


 よく見るとアンナ御姉様の瞳は真っ赤でした。


「私はランベルト様が帰ってくると信じてるから。」


 アンナ御姉様は手を震わせて、自分に言い聞かせるように言ってきました。



 パッパカパーン


 ラッパの音が鳴り響きました。


 出発の時間のようです。



 まずはサンブリエ大公爵軍から出発です。


 大歓声が鳴り響きました。


 次にローラン様軍、シャベールお兄様軍と続き、最後がランベルト様軍でした。

 大歓声にランベルト様も手を振って民衆に答えます。


 それを見ていたアンナ御姉様が涙を流して見送ってます。



 私達は最後の一人が見えなくなるまで見送りました。


 どうか···どうか皆様が無事で帰れますように···。


お読みくださりありがとうございます。

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