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セブンス・オーダー  作者: 羅兎
第1話 英雄の帰還
7/13

第1話 5


 

 いきなり目の前に現れた少年はアイレインと名乗った。

 いつも見るあの夢に出てくるあの少年と同じ名前をもち、あの少年が成長した姿といわれれば、ああそうだろうと納得してしまうほど似ている。


 「アイレイン……さん?はなんで私のことを知ってるんですか?」


 「……なんでって…。ほんとに覚えてないんだね…」


 アイレインは苦笑いを浮かべると少し寂しそうな表情になる。


 「…仕方ないか…あれだけ侵食されて五体無事なだけ…」

 「?」


 アイレインは小声でなにかブツブツ1人で呟くと、再度ため息をついて目を閉じると、次に目を開けた時には、先ほどまで優しい瞳が嘘のように冷徹なものに変わっていた。


 「ごめんよ。アリス…。取り敢えず、こいつらを片付けてから話をしよう」


 そういうとアイレインは、右手に握っていた刀を閃かせる。


 『ウガァ!?』


 その先には、さっきまでアイレインの登場でこちらの様子を伺っていた機械獣の姿があった。

 機械獣は正確にコアのある胸を断ち切られ、それでは足りないと綺麗に真っ二つになっていた。


 「おい!大丈夫か!?」


 機械獣が倒れたすぐあとに機士剣を装備した生徒達が現れる。

 どうやら、シェルターの周囲を守っていた生徒のようでほとんどが上級生の校章をつけた制服を着ていた。


 「ん?君は誰だ?」


 その中の女性隊員がアイレインの存在を認め、問いかける。

 女性にしては低く、しかし綺麗なハスキーボイスだった。


 「…ただの一般人です」


 「ただの…はないだろう?それは機士剣か?」


 女性隊員の問いかけにアイレインは、表情の浮かんでいない顔を背けると「そうです」と呟いた。


 「やはりそうか。しかし機士だというには見ない顔だな…その機士剣も見たことがないぞ?いったいどこから来た?それにさっきこっちに機械獣がいった気がするのだが」


 「さぁ?通り過ぎたんじゃないですかね?」


 訝しむ女性隊員にアイレインはあくまでとぼけたように一般人を装う。


 「ほう…ではそこに倒れているのはなんだというんだ?君が倒したのではないか?」


 「まさか!機械獣を1人で倒せるわけがないじゃないですか」


 女性隊員の詰問に呆れたような色を見せて答えるアイレイン。

 しかし、アリスにはなぜこの少年が白を切ろうとするのかわからない。

 実際に会話のついでのように真っ二つにされた機械獣を眼の前で見ているのだから、それは正しい疑問といえた。

 あまりにも話が通じないアイレインに女性隊員は半ば呆れたようにため息を一つつくと、次はアリスの傍らに跪くと、優しく問う。


 「君はみたはずだね?」


 「え?いえ……私は……」


 急に話を振られたアリスはついアイレインの方をみる。

 なぜ隠すのかわからないが、少年は頑なに認めようとしない。

 そんな中でアリスが認めてもいいものか…。

 その視線を感じたのかアイレインは今日何度目かのため息をつくと少し優しい雰囲気に戻って、アリスにも聞こえるか聞こえないかという小さな声で呟く。


 「……全く嘘をつけないのは変わってないんだな……」


 「え?今なんて?」


 それが聞き取れなくてアリスが問い返すが、すでに冷たい雰囲気に戻っていた。


 「君は、シェルターに避難してください。そこの機士の人達も僕に構っている暇があるなら、彼女を安全な場所に避難させたらどうですか?」


 「む?んんー。確かにそうだが、君は避難しないのか?機士剣を持ってはいるが”ただの一般人”なんだろう?」


 「ええ、”ただの一般人”ですが僕は結構です。一人でどうにかできますから」


 「一人で?おい!どういうーーーーー!?」


 女性隊員が再度詰問しようとした瞬間、アイレインの姿がかき消える。

 アリスには確かに消えたように見えたが女性隊員はさすが機士というべきかアイレインの姿を追うことができていたらしく、口を半開きにして上を向いていた。

 その視線の先を目で追うとそこには、3階建てのアパートの屋上に立つあの少年の姿があった。


 「ーーーなんて静かな瞬脚だ……」


 呆然と消えゆくアイレインの後ろ姿に女性隊員は、ポツリと呟いた。




=======================================


 

 『いいのかい?主』


 「ああ、やっとこの世界に戻って来れたんだ。別に急ぐ話じゃないだろう?」


 『んんー、そうだけど、彼女の話をたくさん聞かされてたボクとしてはー、なーんか釈然としないなー』


 騒然とした下界を見下ろすアイレインは、さながら神といったように冷静に戦場を見つめていた。

 その中で、アイレインは、アイレインにだけ聞こえる神の声に答える。

 陽気な雰囲気を帯びた若い声。

 それが”今の”アイレインの神だった。


 「今はそんなことよりも……。マルス。あとどのくらい持つ?」


 『そうだなー。次元を超えるときにかなりの機力を使ったから、現状ではあと5分ってところかな??」


 「5分もあればお釣りがくる。敵の位置は把握してるからあとは機械獣と戦ってる機士達を引き離せば大丈夫だ」


 『へぇー。まあ言うだけのことはするからボクは君のそういうとこ好きだけどねー。でもみんなボクと同じような感性とは限らないよ?』


 呆れたようなマルスのセリフにアイレインは内心で「お前がいうか」と毒づき、聞こえなかったフリを決め込むことにする。


 「近くに他の機神はいるか?」


 『んんー無視かーさすがボクの主だね。まあいんだけどねー』


 「………………」


 『わかったよ!もうー冗談が通じないんだから…。えーと近くにいて交信可能なのは1柱だけだね。銘は”ヘファイストス”」


 ヘファイストスの名を聞き、アイレインは懐かしい銘にフッと笑う。


 「すぐに繋いでくれ。そいつは僕の元仲間の機神なんだ」


 「そうなんだー。わかったすぐに繋ぐよ」


 そうマルスがいうと脳内にザザっという雑音が一瞬聞こえて、驚いた声が聞こえる。

 それは、とても聞き覚えがある。しかし、どこか月日を感じさせるように低く腹に響く声だった。


 『……?誰だ!?』


 「僕だよ。バッカス、力を貸してほしい」


 『!?まさかお前……!?」


 「僕が片付ける。全員機械獣から離れるように言ってくれ。すぐにな」


 未だに、動揺が抜けきらないバッカスの気配を感じながらアイレインは有無を言わさず要求を突きつけた。


 


 





 

 

 

 




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