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その旅人、壊れ性能につき  作者: 猪口茂
第一章 フィルツ王国
19/22

19:そのステータス、下級兵士並みにつき

更新遅くなってごめんなさい


今月中にあと二、三話進めたいですね・・・

「私、もう驚きませんから」

「ーーーそうか」


心ここにあらずと言った生返事をする一誠に必死についていくアリス。

彼女は改めて目の前の少年を観察する。

身長もそこまで大きくはないし、筋肉がすごいわけでもない。

だけど、彼はその身に似合わぬ力を持っている。


この世界において、『ステータス』と言う概念は一般的なものだ。

例えばレベル、例えばHP、例えばSTR。

アリスで言えばレベルは12、HPは275、STRは15で、これはフィルツ王国の下級兵士のステータスと同等だ。

もちろん、STR--つまり力を表す数値は幾分下がっている。


では、この青年はどうなのか。

他人のレベルやステータスを聞くことはあまり褒められた行為ではない。

だが、命を預ける相手である以上、それを聞くことは必要な事ではないのだろうか。

そう思い、口を開くがーーその口から出た言葉は全く別のものだった。


「あ、あの勇者様ーーまだマーベルお姉さまは見つからないのですか?」

「ーーーあぁ」

「そうーーですか」


背後のアリスが俯いたのは確認するまでもなかった。

アリスもそうだが、一誠も未だに見つからないことに不安を感じていた。

何度もマップを確認しているが、それらしきマーカーは見つからない。

それにしても、と一誠は感じる。

あたり一面紅の世界で正気を保つのはかなり困難だ。

実際のところ、一誠はその高すぎるレベルのおかげで精神力が異常値にまで達しており、精神異常に陥ることはない。

だが、自分たちが必死になって探しているマーベルは一般人だ。

こんな世界に放っておかれれば者の数時間で発狂するだろう。



ーーーーー数時間、か。


一誠はマップに表示された時間を確認する。

フィルツ王国を出てから既に二時間以上経過している。

マーベルがこの森に入った時間は分からないが、マーベルがこの森に一人で、それも生身でいるのならタイムリミットは長く見積もってもーー



「ーーいや、そう言うわけでもないか」

「え?何か言いました?」


アリスが小走りで横に並んでくるが、一誠は全く反応しない。

マーベルは幽閉された(・・・・・)のだ。

決してこの森に逃げ込んだ(・・・・・)のではない。

この森はこの世界の住人、とりわけレベルの低い一般市民や下級兵士にとっては不可侵領域のようなもので、それはつまり実力の備わっている者からすればこの森は都合のよい拠点置き場(・・・・・)だろう。

アリスの言っていたロドリゲスだったか、ロードロスだったかが裏にいて、そいつがかなりの手練れであった場合ーー


「----結界か」

「けっ、なんですの?」


顔と腕とーー全身で?マークを表現しているアリスを黙らせ、一誠はそれ(・・)を鞘から抜く。



真っ黒なもやのかかった鞘から抜いたのは一メートルほどの日本刀。

だが、その先端は透明で、見ることが出来ない。


一誠はアリスに俺の後ろに居ろ、とだけ告げ、その刀を構える。

腰を落とし、背筋を伸ばす。

それは完全な『居合』の構え。

ナイラでのPvPで一誠が必ずと言っていいほど使う最初の技。



ーーーそして、世界が停止する。




(えっ!?)


アリスはその光景に目を見張った。

真っ赤に紅葉しているかのような木々が、今まで感じていた風が、この森にある全ての存在が停止したーーーかの様に思えた。

それはきっと、この青年の集中力が自分にも影響しているのだろう。

だから、これはきっと永遠の様な一瞬(・・・・・・・)なのだ。


だから、アリスは直感した。

この静寂に包まれた世界の終わりを。



「----はっ!!!」



一瞬でそれは終わった。

横一線に振りぬかれた刀は一誠の目の前にある全てを切り裂く。

木も、魔物もーーー結界さえも。

ガラスが割れるような激しい音が響き渡り、アリスの腰の高さほどになった木々が目の前に広がる。


ーーいや、それだけではない。

二人の場所から少し離れた場所に、今まではなかったはずの屋敷が建っていた。

一面真っ赤な世界において、その屋敷は異様な存在感を放っていた。



「--これは・・・っ!?」

「危ないっ!!」


アリスは強い衝撃を受け、一瞬息が詰まる。

何事かと思い、自分を抱きかかえた一誠を見ようとして、その眼がそれを捕らえる。


「ーーーなんか、いっぱい出てきたぞ」

「えっ!?え、え!?」


地面に、つい先ほどまでアリスが立っていた場所に突き刺さっている槍。それを無言で引き抜く黒い人型の影のようなナニカ。

大きなものから赤ん坊のような大きさのものまで、その数は数えきれない。

だが、そのどれもが明らかな殺気を放っていた。


そして、アリスの視界には


『シャドウLv.80』


と言う表示がはっきりと見えていた。


「レベル80・・・!?」

「パンドラの箱じゃねぇんだから・・・」


恐怖する少女と疲れた顔の青年。

それは間違いなく、目の前の敵に対する評価に天と地ほどの差があることの証であった。

そしてーー


「あ、いた」


一誠のマップには、マーベルの存在を示す青いマーカーが表示されていた。

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