16:その長女、攫われの身につき
6990PV突破!!ありがとうございます!!惜しい!!
それと、今回少し暗いです。そして短いです。
ご注意ください。
一誠たちが王城に到着すると同時、にその姿を消した男ーーロドリス。
彼はそのままマーベルのいる屋敷へと向かっていた。
そこは『赤き森』の中に建てられた秘密の場所。
今回の計画のためだけに作られ、使われるその屋敷はマーベルに十分な衣食住を提供する以外の役目はない。ーーーいや、彼女が逃げ出さないように捕らえておくという役割があった。
この『赤き森』は魔獣や魔物、大型の肉食動物などが多く生息する、まさに『危険地帯』。《ナイアー・ラ・オンライン》においても出現する魔物のレベルが100~140とかなり高く、『難所』として知られている場所であった。
なぜ『赤』なのかと言えば、その森での生存競争が血で血を洗うからーーーーではなく、その森に生えている植物が全て赤い色をしているからである。
そのため、森では生物の闘争本能が刺激され、ただでさえ危険な魔獣共が常にいきり立っているのだ。
魔獣や魔物の中には『手を出さない限りは襲ってこない』ものもいる。しかし、そう言った生き物ほど怒ると手が付けられないのはどこの世界でも共通だ。
ーーーだからこそ、この森はかなりの危険度を誇っている。
そして、そんな危険地帯に挑むものは中級冒険者か、指名手配中のならず者くらいなのである。
先ほど言ったように、この森の魔物のレベルは《ナイラ》で100~140。そして、この世界、つまりラーではその半分である50~70。だが、その分NPCのレベルも低く設定されており、アリスが12、マーベルに至っては8だ。
そんな森の中に立つこの屋敷は、周りに結界を張っているため、魔物たちの襲撃を受けることはない。だが、もし万が一、マーベルが逃走しようとしてその結界を超えればーーーその先は容易に想像できた。
だから、マーベルは知っている。
「----いやぁ、困ったことになってしまいましたねぇ」
目の前にいるこの男が人外並みの力を持っていることを。
でなければ、こんな危険地帯に手ぶらでやってくることが出来るなんてありえない。
それにーーーと、マーベルは自身の目を凝らす。
すると確かに、ロドリスの周りには黒いもやがあった。
マーベルはこのもやの色や濃さから相手の力量や性質を読み取ることが出来る。
当然、黒は『悪人』に多い色だ。だが、それを知ったところで圧倒的な力の前に彼女は無力だった。
初めて出会った頃はその存在をマーベル以外には知られていなかったため、自身が警戒するしかなかった。そして、自分の次にその存在を知ったのがフェルナンドだった。彼は言葉巧みにフェルナンドをだましーーーフェルナンドもまた彼を利用しようとしたのだろう。二人はすぐに手を組み、自分を幽閉してしまった。
ーーーいつものように眠り、目が覚めた時、マーベルは既にこの部屋にいたのだ。
だが、ここでの生活も今日で終わりらしい。
アリスを救った謎の人物は、かなりの手練れらしく、フィルツ王国での仕事を切り上げる必要があったそうだ。
アリスが無事だったという知らせを聞き、安堵と共に別の感情が浮かぶ。
ーーーーなんで、あなただけ助かっているの?
それは、いつも感じていた劣等感。
聖女と呼ばれるアリスはその名に恥じぬ可憐さで、マーベルよりも王族らしい顔立ちだった。それに比べ、自分は呪われの身だ。笑い話にもならない。
そんな彼女が大罪人として追われることになった。---ちょうどマーベルがこの部屋の生活に慣れ始めたころだ。
最初は胸が締め付けられた。大切な妹に変わりはないのだ。
だがそのうち、こうも考えるようになった。
私より優秀なあの子。
私より綺麗なあの子。
私より幸福なあの子。
ーーーこんなの理不尽ではないか。
そんな私は救われていないのに、彼女は救われたらしい。
ずるい。そんなのずるい。
そして、そう考える自分に腹が立った。こんなに自分は醜い人間だったのかと驚いた。悔しかった。
自殺も考えたーーーでもできなかった。
恐怖に足がすくんだ。希望に目がくらんだ。
何も持たず、何もできずーーーーただ、そこにある命。
それが、私だ。
「さて、マーベル様。失礼しますね」
彼は私の手を取った。
ーーーーと、少しずつ私たちの体が沈んでいく。
今まで何度も見た、彼ら独自の移動方法。
これで私は、この部屋ともーーーーこの国ともお別れだ。
きっとは、彼らの目的のために使われるのだろう。
それでも、今のようなただあるだけの存在でなくなる分、マシな気もする。
ーーーー膝まで沈んだ。
だから、もう忘れよう。
私が誰なのか。
あの子が誰なのか。
ーーーー腰まで沈む。
だから、もう諦めよう。
私は何も知らない。
私は何も考えない。
ーーーー胸まで沈み、生暖かく、不快な感覚が体を包み込む。
少しずつ、意識がかすんでいく。
まるで本当にーーーー『私』が溶けていくようだ。
それはとても心地よくて。
それはとてもーーーーー恐ろしかった。
ーーーーーそして私は、闇に消えた。
何やってんだ!一誠君!!早く助けてあげて!!!




