15:その孤児院、クリスマスパーティーにつき
5000PV突破!!ありがとうございます!!!
クリスマスなので、プレゼントを!!
いつもの三倍以上の分量です!!疲れました!!!
番外編ではありますが、本編にとっても重要な話になりますのであえて『幕間』ではなく『15』です。
時間があるときに楽しんでいただけたら光栄です。
カリカリカリカリーーペラッ、カリカリカリ・・・
「・・・はぁーーっ」
時は西暦2045年、12月24日。つまり、一誠がちょうど《ナイアー・ラ・オンライン》から離れ、『多忙な日々』つまり受験勉強に勤しんでいた頃の話。
当時高校三年生だった一誠は未だ孤児院『川の家』から抜け出せないでいた。
もちろん、この場所は嫌いではないし、院長にも世話になった恩がある。
しかし、友達を呼ぶこともできず、いつも共同生活でプライベートな空間も全くない生活はかなりストレスの溜まるものだった。
ーーーだからこそ、そんな『窮屈で自由のない世界』とは正反対にある『バーチャルの世界』に居場所を求めたのかもしれなかった。
だが、現実世界に生きている以上避けては通れないイベントがある。
一誠自身は高校卒業後、社会に出て働こうと思っていたのだが、院長や高校の担任の勧めにより、地元の公立大学へ進学することにしていた。
奨学金や、国からの補助、公共団体からの補助などがあり、あまりお金の心配がないという事も理由の一つとなった。
しかし、そのせいでナイラを中断ぜねばならないのは辛かった。
「----ナイラしてぇ」
「お前、本当に好きだよな、あれ」
「うっせぇ、お前だって好きだろ」
そんな一誠と共に学習しているのは、綾場遼生。一誠の同級生であり、中学からの付き合いで、一誠を《ナイラ》に誘った張本人だ。
アバター名は『RYO』でメイン武器は刀。レベルは248と一誠とのレベリングをさぼるせいであまり高くはない。それでも、プレイヤーのトップクラスではあるが。
そんな二人はがら空きのファミレスで仲良く勉学に励んでいた。
と言うのもーーー
「ほら、二人とも。お店に来たんなら何か頼みなさいよ」
「----へいへい」
二人のテーブルに一人の女性ウエイトレスが近づいてくる。
彼女は篠原愛梨。遼生の幼馴染で、一誠とは中学の修学旅行からの付き合いだ。
高校も同じだった三人は、長期休暇の度に遼生の家に上がり込み、宿題を片づけるーーというか、一誠と愛梨の宿題を遼生が写すーーそんな付き合いが続いていた。
「俺今金欠なんだよ、いっせー奢って?」
「は?ふざけんな。ドリンクとケーキならワンコインで行けるだろうが」
「この、薄情者がぁーー!!」
「何とでも言え、悪いが俺も金欠だ」
いつものように泣きつく遼生をそう言ってあしらうと、途端に二人から強烈な視線を感じた。
「ーーーなんだよ。マジで奢らねぇぞ?」
「いや、なんていうか・・・なぁ?」
「うん。一誠君が金欠って珍しいなって」
そんな二人の様子に呆れながら、一誠は教材に目を落とす。
「----俺が金持ってる方がおかしいだろ」
そう言うと二人は『あっ』と声をあげた。だが、それでも遼生は納得がいかなかったらしい。
「でも、お前が金欠って今まで聞いた事ないぞ?」
「-----」
「それに今、ナイラやってないんだろ?」
「そうだね。一誠君ナイラにしかお金使ってないもんね」
このままでは集中できないと判断した一誠は降参した。
「明日、クリスマスだろ?---だからだよ」
「「え」」
正直に話したのに、余計に混乱したような表情を見せる二人。
今度はこっちが納得いかない。
すると、愛梨が緊張した面持ちで尋ねてくる。
「も、もしかして一誠君ーーー彼女?」
「-----は?」
愛梨を見ると、真剣な顔をしている。
なぜそんなことをーーーと言いかけて、一誠は気が付いた。
ーーーー死神が、そこにいた。
「・・・・・・・・佐倉一誠。俺はお前を仲間だと思っていたが、どうやら違ったみたいだな」
「お、おいーーー遼生?」
「ふ、ふふふ・・・この俺に何も言わず彼女を作るとは言い度胸じゃないか」
「ーーーいや、ちげーから」
そう言って、消しゴムを投げつける。
この男はいつも話を聞かない。
「-----ちがうの?」
今度はこっちを宥めねばならないようだ。面倒くさい。
「違うって。---あいつらに買ってやったんだよ」
「あいつらってーーーーあぁ、そう言うことね」
「へぇ、お前がねぇ」
「----もういいだろ。篠原、ケーキとドリンクバーのセット二つよろしく」
「え、あ、うん。----愛梨でいいって言ってるのに」
「なんか言ったか?」
「----何でもない」
ふぅん、と生返事な一誠の様子に苦笑しながら遼生が続ける。
「愛梨は良いよなぁー、推薦でもう決まってるもんな」
「りょうくんは東京の大学だっけ?」
「そうそう、でも結構厳しくってさーーー」
そんな二人の会話をBGMにしながら一誠は英語の長文読解に取り組む。
内容はバーチャル世界における可能性と危険性をまとめたものだった。
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結局その日は朝から夕方近くまでファミレスにお世話になった一誠と遼生。
外は、久しぶりに雪が降り積もっていた。
「うおーーーー!!さみぃーーー!!!」
「去年は積もらなかったのにな」
いつもは、愛梨も午前中のバイトが終わり次第参加してくるのだが、今日は『用事があるから』と帰ってしまっていた。
彼氏かよーとふざける遼生を思いっきり睨みつけていたので、たぶん違うのだろう。
それにしてもーーー
「もうすぐ、卒業だよな」
「おいおい、その前に入試だろ?」
「ーーーそうだな」
一誠が住んでいる場所は孤児院だ。
当然、出会いと別れを経験した回数は一般人のそれとは比較にならない。
ーーーだからと言って、別れに慣れているのかと言えば、それは否だ。
いくつになっても、何度経験しても、あの感覚には慣れない。
胸にぽっかり穴が開いたかのような喪失感。さほど仲が良かった訳でもない子でも居なくなれば寂しい。
用意する食器が一つ減る。つい、一つ多めに出してしまう。
ーーーそのたびに今はもういない彼らを思い出しーーー自分にもいたはずの両親を思いーーー胸が締め付けられる。
いつか、いや、もうすぐこいつともーーあまり多くない一誠の大切な友人ともーー離れ離れになる日が来るのだ。
それは、避けられない現実。
ーー巻き戻せない時間。
ーー取り戻せない日々。
かけがえのない、大切な思い出。
だから、だからこそ悲しい。寂しい。
そんな一誠に遼生は笑いかけた。
「---俺たちは、友達だろ」
「----?」
「男の友情は一生もんだ。それはきっとどれだけ距離が離れても、どれだけ時間がたっても色あせることのない、強い絆だ」
「ーーーー」
「離れたなら、また会いにいけば良い」
「ーーー!!」
思わず顔をあげた一誠。
目の前では遼生がいつものように、にやりとした笑顔を浮かべていた。
「生きている限り、二度と会えないなんてことは、ないんだからさ」
「----そう、だな。ありがとう」
「あぁ、良いって事よ。だから、いい加減元気出せ、もうすぐ帰り着くぞ」
「おう」
一誠の家、帰るべき場所、もうすぐ巣立つ『川の家』がすぐそこに見えていた。
「-----?なんでお前もついてくるんだ?」
本来であればかなり前の十字路で分かれているはずだった。
だが、この男はさも当然のようについてくる。
「いやー、だって、いっせーが寂しそうだったから」
「----おい」
これはしばらく弄られるな、と一誠が内心で溜息をついた時、ドアが開き、一人の女性が出てくる。
「あ、一誠君おかえりー」
「-----」
「お、なんかそのセリフ似合うな」
一誠は頭が痛くなってきた。
「なんで篠原がいるんだよ」
「えー、だって今日はクリスマスパーティーでしょ?」
「・・・遼生、お前ーーー」
「まぁまぁ、とりあえず中に入ろうぜ?ーー寂しくて死んじゃう前に」
「てめぇーーー」
ぐっ、と拳を握りしめた一誠だったが、愛梨の後ろから大量のチビ共が現れ、中断させられる。
「あ、いっせー兄ちゃんおかえりー!!」
「いっせーくんおかえりー!!」
「なんかねー、いっせー兄の友達のおねーちゃんがご飯作ってくれたーー」
「いっせー兄、かのじょかー?」
「兄ちゃん誰?」
なぜか子供に懐かれると言っていた一誠の事を信じていなかった遼生は子供たちの様子に少し驚いていたが、すぐに持ち直す。
「ほらほら、みんな待ってるぞ?お兄ちゃん?」
「お前、あとで覚えとけよ」
「チビちゃん達に絡まれながら言われても怖くねーよ」
「一誠君、すごい人気だね」
孤児院までは一人を除き、わいわいとした空気が流れていた。
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「-----で、なんでお前たちもいるんだ?」
「そ、それはねーーー」
「ふふっ、一誠君と一緒にクリスマスパーティーがしたかったそうよ」
「・・・まりあさん、もしかして、あなたも共犯ですか」
正座している二人に問い詰める一誠に声をかけたのはこの『川の家』の創立者であり、院長の通称『まりあ』さん。
なぜ通称なのかは省くが、この女性はかなりのいたずら好きだ。
この人の表情と物言いからして、共犯なのは間違いなかった。
「あら、悪いことはしてないわよ?ただ、一誠君がいつもお世話になってる二人にも今回のパーティーには参加してもらおうと思って」
「あのね、一誠君、私のおじいちゃん、院長と知り合いなの」
「----まぁ、経緯はこの際置いとくよ。まぁ、せっかく来たんだし、ゆっくりしてってくれ」
「おうよ!!元からそのつもりだぜ!!」
「私、院長さんと一緒に料理作ったんだ!!結構うまくできたと思うけど、食べてみてね」
早速パーティーを楽しもうとする二人に呆れつつも、こんなクリスマスもありかな、とも思う。
「じゃあ、みんな準備は良い?---メリークリスマース!!」
「「「「メリークリスマース!!!」」」」
チビ共の笑い声を聞きながら、一誠は一人窓際の席に座っていた。
今まで何度このパーティーに参加しただろうか。
ーーーこれが、最後なのだ。
「おーい、いっせー。お前また考え事してんのか?」
「あぁ、このパーティーも最後だなと思って」
いつの間にか隣にいた遼生に笑いかける。
愛梨は院長と真剣に話し合っていた。内容が気になるわけではないので放っておこう。
「ーーーお前なぁ。・・・ま、そう思うなら余計楽しまなきゃな」
「ーーーおう。そのつもりだ」
再び乾杯し、ブドウジュースを一気に流し込む。
そう言えば、まだ愛梨の料理を食べていなかった。
テーブルの上は、今まで見たことがないほど豪勢なことになっていた。
そのほとんどが院長と愛梨の手料理と言うのだから驚きだ。
とりあえず、と一番近くにあった鶏のから揚げに手を伸ばす。
「----お、うまいな」
「んふふ、嬉しいな」
「ぅおっ!?」
これまたいつの間にか隣にいた愛梨が喜んでいた。
やはり、現実世界の自分には『索敵スキル』が備わっていないらしい。
ーーーそれともやはり、彼らだからこそ、なのか。
そう考えれば、悪い気はしない。
「一誠君、これも私が作ったんだよ!!食べてみて」
「おうーーーーーへぇ、これもうまいな」
「んふふーー嬉しい」
そう言って笑う愛梨の顔を見つめ、一誠は今まで忘れていた何かに気が付く。
『楽しめ!!どんな状況でも楽しめるやつが一番強いんだぜ!!』
まだ小さかった一誠にそう言ったのは誰だったか。
あれは確かーーーいや、それは気にしても仕方がないことだ。
「あれ、一誠君ーーーなにか良いことあったの?」
「いっせー。お前女の子の手料理食えたくらいでにやけてんじゃねぇよ」
二人に言われ、一誠は自分が笑っていることに気が付いた。
そういえば、こんな風に自然に笑みがこぼれたのはいつ以来だろう。
久しぶりすぎて、笑い方も忘れてしまったようだ。
「ーーーいや、大切なことを思い出したんだ」
「?」
「そっか」
何のことか分かっていない愛梨と、何かを察したような遼生。
このとき一誠は決めた。
これからは、人生を楽しもう。
たとえこの先何があってもーーー彼らと離れ離れになったとしても。
そんな一誠に遼生は、そう言えば、思い出したように告げる。
「帰りに話した話の続きだけど----親子の絆はもっと強いからな」
「-----!!!」
「切りたくても、切れないのが親子の絆だ。きっとどこかで見守ってくれてるさ」
「そう、だな。ーーーそうだと良いな」
ここで両親の顔が思い浮かぶほど、一誠は彼らを知らない。
顔も、名前さえ知らない両親。ーーーいや、それらを知ろうとさえしなかった自分。
こんな息子でも、彼らは見守ってくれているのだろうか。
「いっせー兄!こっち来て!!」
「いっせーにやにやしてるー」
「いっせい兄、なんかねー、プレゼントこーかんするってよー」
「わ、わかった。分かったから引っ張んなって!」
「きゃー!いっせー!」
物思いにふける一誠を子ど達が連行する。
その後ろ姿が少しだけ楽しそうなのを、二人は嬉しそうに眺めていた。
「おうおう、人気者だな。ったく、あんな鉄仮面のどこが良いんだか」
「一誠君はやさしいからね。今回のプレゼントの景品、全部一誠君が選んで買ったんだって」
「全部!?そりゃ金欠にもなるわ」
「ぶっきらぼうで、他人に興味を持たないように見えるけど、本当は寂しがり屋で優しくて。---きっと困ったときは必ず助けに来てくれるんだ。だって、私の勇者様なんだもん」
「おいおい、そりゃちょっと美化しすぎだな。----まぁ、惚れた相手を美化しちゃうのはしょうがないか」
「もう、茶化さないでよ!----でも、きっと助けてくれる。あの時みたいに」
そう言う愛梨は少し寂しそうで、遼生は思わず言葉に詰まる。
あの時、一誠は確かに勇者だった。
誰もが踏み出せなかったその一歩を、アイツは誰よりも早く踏み出した。
そして、愛梨は救われた。だから、アイツには『王子様』よりも『勇者様』の方がよく似合う。
愛梨の言う通り、アイツはきっとーーーーー
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「今日は、ありがとな。---いろいろと。」
パーティーが終わり、片づけもあらかた終わったころには外は真っ暗になっていた。
子供たちのほとんどが既に寝ており、見送りもほとんどいない状態になったため、遼生と愛梨には後日手紙を書こうという話になった。
「いいって、こっちも楽しかったし。それに一誠の意外な一面も見れたしな」
「あれはお前が信じてなかっただけだろ」
「ふふっ、二人ともありがとね。---愛梨ちゃんも、お料理手伝ってくれて助かったわ」
「いえ、私もまりあさんとお話しできて楽しかったです」
そう言ってまりあさんは引き返していった。
恐らく、自分たちたちだけにしてくれたのだろう。
「-----私、今日これてよかった」
「俺もだ。来年はーーーそうだな、一誠の家でパーティーしようぜ」
「----そうだな」
今の一誠たちにとって『来年』と言う言葉が持つ意味は大きい。
それが分かっているからこそ、遼生はあえてそう言ったのだろう。
その気持ちが一誠には嬉しかった。
「ーーーそれじゃあ、またな」
「あぁ、また」
「あ、ちょっと待って!」
そう言って愛梨がカバンから包みを取り出す。
「はい、一誠君。クリスマスプレゼント」
「え、俺に?」
「うん。ほら、開けてみて」
「お、おう」
クリスマスカラーの紙袋。
中には手作りのマフラーが入っていた。
「メリークリスマス。一誠君----ほら、巻いてあげる」
「あつあつだな、おい」
「----」
巻き終えた愛梨は一誠をまっすぐに見つめる。
「私たちは、いつでも側にーーーううん、側にいられなくてもずっと一誠君のこと想ってるから。だからーーーー」
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「-----ラズ?」
「------ん?あぁ、すまん。ちょっと、昔を思い出してた」
「そう、ところで今日はクリスマスパーティーよ。----今回のパーティーは出席できそうね」
「ーーーあぁ」
時は流れ、一誠がラーズグリーズルとしてフィルツ王国を救ってから半年。
一誠は再びこの国にいた。
どこか嬉しそうにしているアリスを眺めているうちに、ふと昔の思い出がよみがえったのだ。
ーーーー遼生も愛梨も元気にしているだろうか。
元の世界に戻る方法は探していない訳ではない。
世界を回りながら、ラーと地球を行き来する方法を探している。
確かにこの世界は楽しい。でもーーー
それでも、あの二人には一緒にいてほしかった。一誠の気持ちを分かってくれる二人に一緒にいてほしかった。それが嘘偽りのない一誠の気持ちだ。
『----だから、忘れないで。一誠君は一人じゃないよ』
「----っ」
「ラズ?どうかしたの?」
「ーーーいや、何でもない」
少し、無理があっただろうか。
アリスはそんな一誠を見つめーーーー
「ラズ、-----あなたは一人じゃない。私がいるわ」
「ーー!?」
あの時の愛梨と同じ言葉と共に、一誠を優しく抱きしめた。
「------ありがとう。アリス」
そうだった。今の一誠は一人ではない。
---がいる。---がいる。
「----あなたの妻ですもの。当然だわ」
そして、この世界で最初の理解者であるアリスがいる。
(ーーーありがとう、遼生、愛梨。俺は、あの日二人に救われた。だから、俺はあの日の『誓い』を胸に、この世界をもっと楽しむことにするよ。だから、そっちに帰るのはもう少しだけ遅くなりそうだ。)
だけど、俺は二人の事は忘れない。いつでも想っているよ。
いつか、また、あの時みたいに三人でーーー。
「ーーそう言えばだけどね、ラズ」
「ん?」
「あなたの剣、それとよく似た剣を持った少女を見た気がするのよね」
「ーーーは?これをか?」
そう言って一誠が取り出すのは、あの日、アリスを救った剣、そして、あの日この国を救った剣。
このクリスタルソードは一誠がナイラから離れる直前に遼生と二人で挑んだ最新クエストの報酬だ。
そしてこの剣はこの世界には存在しないーーはずだ。
もし、アリスの話が本当であるのなら、その少女もナイラのプレイヤーだった可能性は高い。それもかなり高レベルの。
「----ふぅん」
「あ、もしかしなくても探すつもりね?」
「・・・・・・」
ここ最近はアリスに考えを見抜かれることが多くなった気がする。
それも悪い気はしないのだが。
だから、観念したように手をあげて笑う。
「ーーあぁ、悪いけど・・・」
「いいわよ、あなたはそう言う人だって知ってるから」
そう言ってアリスは一誠の手を取る。
その目はまっすぐ、一誠の黒い瞳を捕らえーー
「ーーだけど、今日はここにいて。今日は特別な日なんだから」
いつか見せた眩しいほど明るい笑顔でそう言った。
「----メリークリスマス。ラズ」
その言葉が、そのしぐさが一誠の心には温かかった。
いつかの冬の、いつかの風景が蘇る。
「ーーーメリークリスマス。アリス」
『生きている限り、二度と会えないなんてことは、ないんだからさ』
一誠の耳にいつかの声が聞こえた気がした。
未来の一誠君とアリス、いい感じになってます。
さて、今現在の一誠とアリスがどのような道をたどるのか。
楽しみにしていてください。




