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その旅人、壊れ性能につき  作者: 猪口茂
第一章 フィルツ王国
10/22

10:その土地、御伽話の世界につき

ご都合主義だろうと、テンプレだろうと、『安心して読める』なら良いのです。

むしろウェルカムッ!!

「-------」


フィナはその光景に絶句していた。


彼女の目の前ではーーーー



「-----本当に、生き返った」

「-----ぅ、----こ、ここは?」


足止めのために一人で十人以上の兵士たちを相手取り、その最期を迎えたはずの人物。

ーーーーアリス専属の騎士フェルナンドが息を吹き返していた。


ラーズグリーズルと名乗る青年が持ち出した薬『リライザー』。それにより生き返ったと言われた私は、しかし、その情報を信じる事はできませんでした。

なぜならーーー『死者を蘇生する』方法は、未だ発見できていないどころか、不可能であると言われているものだったからです。


しかしーーー


『じゃあ、目の前で蘇生すれば信じてくれるか?』


なんて言って、傷だらけーー首と体が分かれているユリウスをベットの上に置き、その手に持っている砂時計のようなものをパキッっと割る。たったそれだけで、彼の首と体がつながり、傷が消えーーーーユリウスの心臓が動き始めたのです。


それはもうーーー神の所業でした。


そして話は冒頭に戻ります。



  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ーーーぅ--こ、ここは?---っ!?姫様!?」

「はーいユリウス、落ち着いてーーーーったく、これすごい既視感があるんだけど?」

「返す言葉もございません」

「ーーー!?フィナ!?こ、これはどういうーーーいや、私はーーー」


常に冷静沈着なユリウスですら、取り乱してしまうほどの現象。

ーーーー自分もさっきまではあんな感じだったのだろう。恥ずかしい。

とりあえず、ユリウスは姫様に任せるとして、私はーー




「----ラーズグリーズルさん、あなたはいったい何者なんですか?」


ーーーはっきり言って、怪しいどころの話ではない。

姫様の話では、多くの兵士に囲まれ、殺されかけたところを救ってくれたとか。--それも一瞬で。

それに加え、『魔術』も使える。死者ですら蘇らせる。


それはさながら神の使いーーいや、神そのもの(・・・・)だ。

同じく疑問に思ったのだろう、姫様からの説明を聞きながら、ユリウスも彼をじっと見つめている。

だが、そんな二人のぶしつけともいえる視線を気にした様子もなく、その青年は淡々と述べる。


「ん?何者ってーーーただの旅人だ」

「------そんな馬鹿な」


ーーユリウスの意見ではあるが、恐らくその言葉が今の二人の感想である。

ただの旅人に、そんなことができるはずはない。

だが、姫様を助けていただいた上に、自分たちの命まで救ってーーーー


「ーーーって、姫様!?ここは!?ここはどこなのですか!?」


理解不能な出来事を目の前にして、完全に忘れていたが、今自分たちは追われている身だ。できる限り王都から離れなければ。そう思っての発言だったのだがーー


「ん?ここは・・・えっと・・・」

「----?姫・・・様?」

「-----えっと、ここは・・・どこ?」


姫様からーーいや、正確に言えば彼ら(・・)から返ってきた言葉は自身の耳を疑うものだった。


「だから言ってるだろ、ここは俺の家だ。ーーー『名もなき荒野』のど真ん中の」

「あぁ、そうだっーーーーっ!?」

「----へ?」

「なんーーだと?」



『名もなき荒野』。それはおとぎ話や伝承に登場する地名だ。


曰く、その地は人に試練を与える。


曰く、その地は人に力を与える。


曰く、その地は人に知を与える。


曰くーーーその地は人を神たらしめる。



恐らく、古の人々が修行で訪れるような場所だったのだろう。ーーーそう解釈していた。

まさか、本当に存在していたとは思えない。

だが、彼の今までの行動は既に常識を覆している。

『俺はーーー神だ』と言われても、不思議に思うことはないほどに、だ。

にしてもーー


「えっ、じゃあ『名もなき荒野』ってフィルツ王国のすぐそばにあったのね」


そう、もしここが『名もなき荒野』であるなら、それはつまりおとぎ話や伝承でしか聞いた事のない土地は、フィルツ王国の領地内、もしくはその近くという事にーー


「いや、違う。---ここはラーであって、ラーではない場所だ」


意味が分からない。そう叫びたい心境だが、姫様もユリウスも黙って彼の言葉の続きを待っている。

ーーーここはおとなしく、聞いておくべきだろうか。


「この場所は、言ってしまえば世界の裏側だ。特定の人物(・・・・・)か、その連れ以外は入ることができない世界。---それが『名もなき荒野』だ」


つまりは並行世界パラレル・ワールドという事か。

しかしーー


「ーーーつまり、あなたはただの旅人(・・・・・)ではないという事ですね」

「------むぅ」


あからさまに、しまったと言いたげな顔をした彼は『詳しくは話さないから、好きに想像しといてくれ』と言った。

どうやら隠し事や腹芸は苦手なようだ。


「ーーーそれで、この後はどうするおつもりで?まさか、一生この世界に引きこもるつもりですか?」


確かに、この世界なら追手に襲われる心配はないだろう。

ーーだが、それは生きていると言えるのだろうか。


「ん?あぁ、いやそんなことはないさ。俺はまだまだあの世界を楽しみたいんだから」


そう言って彼が告げた作戦ーーーどうも姫様と考えたらしいーーそれは、やはり自分たちの予想のはるか上をいくものだった。

あ、ユリウスさんも生き返ってる

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