1:そのゲーム、ナイアー・ラ・オンラインにつき
物語が始まって一年以上が経過しました。
いまだに思い入れの強い作品ですので、完成に向け改訂作業を始めます。
ストーリーが大幅に変更されると思いますが、基本的なものは変えずに行こうと思っています。
どうか、よろしくお願いします。
地球によく似た惑星、ラー。人が住める要素がそろった偶然の産物。だがそこは、科学により発達した地球とはまた違う進化を遂げていた。
魔法・魔術のはびこる世界。
そう、この世界には『魔力』と言う概念が存在しているのだ。
科学とは違う形で生活を豊かにしてきたそれだが、同時に弊害も存在する。
それこそが『魔物』や『魔獣』といった危険生物の存在。
その原因が、『魔力』の根幹である『魔素』。
ーー例えばの話をしよう。
もしも、地球に存在する生命体が一瞬でラーに移動したとする。
生き物は、呼吸や食事で『魔素』を体に取り込む。人間であれば、寿命のうちに人体に影響はない。だが、犬や猫、その他大勢の小動物ならどうだろうか。
玉ねぎやチョコレート、人にとっては無害な食べ物が彼らにとっての毒であるというのは、よくある話だろう。
そう、この『魔素』も同じことなのだ。
犬や猫などの小動物がそれを取り込めば、ものの数分で死亡してしまう。それほどの劇物。
だから、この世界の生物は『魔素』に適合した存在となる。その結果、『魔獣』などの危険生物が誕生してしまったのだ。
劇物に対応した生物は、あらゆる面で地球上の命名体を凌駕する。
攻撃的な性格、鋭い牙や角。中には、体内にためた魔素を吐き出すものまでいる。
だから、この世界ではそういった『危険生物』を排除することを生業としている人々がいる。
それこそがーーーー冒険者。
『ダンジョン』や『迷宮』と呼ばれる、『魔素』の濃い場所に赴き、町や村、国などを襲う『危険生物』の排除を行う。だから、彼らはこの世界の『英雄』であり、少年たちの憧れなのだ。
だが、そんな彼らが束になっても敵わない化け物も存在する。
初心者向けの魔物ーーゴブリンなどーーのレベルを5とすれば、ドラゴンの最上位種である、古竜はレベル80。だが、その化け物はレベル200を超えると言う正真正銘の化け物。
発生場所も発生理由も分からず、一瞬にして現れ、破壊の限りを尽くす。
その名も、『レイド』。
それに対抗するには、人を超越した存在、すなわち『勇者』をこの世界に呼び込むしかない。
ラーに存在するすべての国がその意思のもとに『召喚術』をとりおこなった。
ーーさて、これからの話をしよう。
この世界におけるあなたの役割は、そんな『レイド』と呼ばれるボスモンスターを、ほかの勇者と協力して倒すこと。
すべての『レイド』を倒し、この世界に平和をもたらせ
--ナイアー・ラ・オンライン
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佐倉一誠がこのゲームを購入したのは3年前の事だ。
3年前ーーつまり、2043年に発売されたこのVRMMORPG『ナイアー・ラ・オンライン』通称『ナイラ』はVR機器の最先端である、『第5世代』のもので、3年連間売り上げナンバーワンと言う偉業を成し遂げている。
ゲームオタクの友人に勧められるまま予約し、発売当日に始めた一誠は次第にナイラにのめり込み、1年後には公式サイトの『今月のトップランカー達』にも名前が載るほどの猛者になっていた。
だが、レベルやアイテム、スキルや拠点のあらゆるものがカンストした後は、半年おきに発売されるパッチを待つという日々が続いた。
それ自体は苦ではなかったのだが、ちょうど現実の多忙さと相まって、しばらくナイラを離れていたのだ。
そんな一誠のもとに『ver.2.2⁺』パッチが届いたのがつい先日の事だった。
購入した覚えはないが、『特典』というシールの張ってあるパッケージを見て、納得する。
久しぶりにやってみるか、と軽い気持ちでパッチを導入し、第5世代特有の小型端末を頭につける。
およそ一年ぶりだが、ログイン方法は自然と口にできた。
「--『ナイアー・ラ・オンライン』起動」
そして意識は反転しーー気が付けば、見渡す限り何もない荒野に一人佇んでいた。
前回のログアウト位置を覚えていないため、まずは今の位置を確認しようとして気が付く。
ーー違う。
今までにない、違和感を感じる。
たしかに、ナイラは作り込みが良かった。
だが、それでも限界はあった。
肌にこびりつく砂の感じや、なんとなくじりじりとした気温などは今まで感じることはできなかったはずだ。
新しく導入されたパッチの可能性は?
ーーないな。
一瞬考えたが、すぐに否定する。
今までのパッチはレベルの上限アップや新規アイテム追加、新ステージや新キャラ新ボスなどの『ゲーム要素』しかなかった。
今回からの導入と言う可能性も、目の前のメニュー画面がそれを否定している。
ーーそこに『ログアウト』ボタンは存在していなかった。
これから、よろしくお願いします。
少々残酷な描写も出る予定ですが、基本的には『安心して』流し読みできる内容でやっていきたいと思っています。
名前付きで出てくる人はあんまり死にません
ぬるーい物語をゆるーくやっていきます。