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「マリアとは入学式の前に裏庭で会ったんだ。
あり得ない方向音痴とそんなこと全く気にしていない底抜けの明るさに、正直、体の力が抜けた。
俺の被っていた王太子という鎧が脱げたんだ。」
王太子様は、ゆっくりと一言一言を考えながら話していきます。
「いつしか、友人のように、悩みを相談したりもした。…もちろん国政のことは話していない。」
「……その、好きな奴に、素直に好意を表すことが出来ないことを話したり、した。」
???
「俺には小さな頃から地位や権力に目が眩んだ、俺を利用することしか考えてないような奴ばかりが近付いてきて」
「純粋に愛を信じていて、俺を支えたいという奴に初めて会った。」
「そいつと婚約して、俺を愛して欲しかったんだ。」
「でも素直になれなくて、上手く話せなくて、いつしか王太子の仮面を被ってしか話せなくなった」
「こんな俺を愛してもらえるとは考えてなくて」
「お前の告白に舞い上がってる」
王太子様は立ち上がってゆっくり私の方に来ると、私の手をとって立たせました。
そしてゆっくりと、私を、抱き締めて下さいます。
今のお話は、私を、好いていて下さっている。ということで良かったですよね。
頭が混乱して、でも確かにそんなお話でした。
「で、殿下。あの」
「ジェフリーと」
「ジ、ジェフリー様」
「ジェフリーと読んでくれ」
「ジェフリー、ジェフリー」
「お前の前では、二人の時だけはただの俺で居させて欲しい」
「はい」
私の目からは最早止めることは出来ないほどの涙が流れていました。
でも、私もこれからは、この方の前でだけは我慢しなくていいんだと感じていました。
腕が少し緩んで、体の隙間が出来たので、王太子様を見上げます。
王太子様はじっと私を見つめて下さり、私の欲しかった言葉をくださいました。
「俺と、結婚してくれ」
「はい、ジェフリー、愛しています。」
「俺も、愛してる」