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さて、婚約者になってしまったものは仕方ありません。
だったら、私が学園に入学するまで、いえ、ヒロインが登場するまで努力をするしかありません。
愛される努力を。
婚約の発表はされましたが、私も王太子様もまだ子供。婚約式は私が16歳、王太子様が18歳の成人を迎えてから行われ、その一年後に結婚となります。
私は結婚時点でまだ成人ではありませんが、男性が成人であれば女性の年齢はあまり問われません。
今回は、私が17歳になってからの結婚ということで前世との差をあまり感じませんが、花婿が22歳、花嫁が13歳とかも有るにはあります。
前世の記憶がある私には多少違和感がありますが、この世界ではたまにあることです。主に貴族の政略結婚ですが。
王族の結婚ではあまりに無茶な年齢での結婚をあまり聞かないのは、国民に違和感を与えない為でしょうか。
私は婚約が発表されてから毎週、王宮に通っています。王太子様に会う為に。
学園に入学された王太子様も、毎週王宮に帰って来て、私と会うことを面倒そうにしながらもエスコートしてくださいます。
王太子様は冷たく、素っ気ない態度をとられますが、本当はとても繊細で優しい方です。
昨年の私の誕生日には私の好きなバラのブローチを下さいましたし、バラの季節の今は、いつもバラ園でお茶を用意して下さいます。
「殿下、今日は私がお菓子を焼いて来ましたの。
ちょっと見た目が悪いですが、味は保証しますわ。私が味見しましたもの。」
机にちょっと不恰好なマフィンを並べます。
「殿下が、甘くないチョコがお好きと伺ったので、ほろ苦味にしてみましたのよ。」
王太子様は私の作ったマフィンを見て、一瞬固まりましたが、手にとって食べてくださいました。
「うん、形は酷いか、味はましだ。」と2つ目に手を伸ばし ます。
お茶を頂きながら、いつも私達は様々なお話をします。
幼いときのことや好きな本、王太子様は言葉は少ないですが、たまに学園でのお話もしてくださいます。
きっと、二人の距離は近付いているはずです。
現に私は既に、一見冷たいのに、この繊細で優しい王太子様に惹かれています。学園に入学して王太子様がもしヒロインに惹かれてしまった時、私は冷静で居られるでしょうか。
愛される為の努力で、私は自分が愛してしまった事に気が付きました。私は、悪役令嬢へ道に突き進んで行くかのような自分の気持ちに怖くなりました。