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王宮に一泊し、朝食の後、私は侍女達に勧められて王宮内にあるバラ園の見学に訪れた。
バラ園の入り口で侍女が下がって行く事に疑問がわいたが、素晴らしいと評判のバラ園への興味が勝って足を中に進める。
侍女の話ではこのバラ園は一本道になっていて迷うことはないとのこと。
少し歩いただけでも、様々な品種が咲き乱れ本当に素晴らしい。
美しく咲き誇るバラにうっとりしながらアーチを越えると、そこには人影があった。王太子様だ。
私はさっと礼の姿勢をとり挨拶をする。
「朝一でバラ園から薔薇を摘んで来いとは、何かと思ったら、こういう事か。」
ため息をつきながら王太子様が言いました。
「侯爵令嬢、体調はいかがですか?」
「はい、一晩休ませていただき、すっかりよくなりました。王妃様のお気遣いに感謝致します。
あの、昨日はお茶会の席で失礼致しました。」
「あれぐらいで緊張して倒れるなんて、王太子妃は無理なんじゃないか?」
表情は柔らかいのに、少しバカにしたような声。
「そうなのです。私は確かに家柄は良いのかもしれませんが、王太子妃は私には荷が重すぎるかもしれません。」
こんなことを言ったとお父様にばれたらきっと叱られるでしょう。
「!」
王太子様は驚いた表情をされました。
そういえば、王太子様は15歳。なのに既に女性不信とは、何があったのでしょうか。王太子様を見つめながらそんなことを考えました。
「お前は王太子妃になりたくはないのか?」
王太子妃?
「そうですね。公務もですが、一番は、民を導く殿下を私が支えて行くことができるのか、自信がありませんわ。」
「支える?」
「はい、勿論王太子妃にも外交や慰問等、様々な公務があると思いますが、やはり王太子殿下の重責には敵わないでしょう。
そんな殿下を精神的に支えて行くのが王太子妃の務めだと思うのです。」
「お前はには支えられないと?」
王太子様は私の手を取り、四阿へと導きます。
そこに座るように手で示された後、自身も腰掛けられました。
「わかりません。殿下が愛された方でないと、殿下を支えるのは難しいのではないかと思うのです。」
「愛?愛を信じてる?」
「勿論ですわ。?」
「俺たち王族や貴族の結婚なんて、全て政略じゃないか」
「それでも、婚約期間でも、結婚してからでも愛を育てることは出来ますわ?」
「だったらお前は、俺に愛される自信がないと言った訳か。・・・確かに俺にも自信はないな。」
王太子様は言いながら、じっと私を見つめます。
そうでしょうとも。あなたの愛する人は2年後に現れる。だから私を愛することはないのです。と、言ってやりたい。
私達は暫くそのまま見つめあった後、王太子様のエスコートで薔薇園から客間に戻った。
それから暫くして、私と王太子様の婚約が発表された。